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スペシャルインタビュー vol.1


高校時代に興味を抱いた結晶成長。 以来、さまざまな角度から研究に携わってきた。 今、宇宙実験という新たな扉を開く。

今回の実験は、ファセット(注)の結晶成長に関するものだとうかがいましたが、結晶成長に興味をもったのはいつ頃ですか?

「高校時代、ブルーバックスの宝石に関する事典が好きで、よく眺めていました。 材料科学の中では特に結晶工学に興味があったんですね。 大学に入る頃には超伝導材料に関する研究をするつもりでしたから、ある意味、まっすぐ材料科学の道に進んだわけなんです。 卒論は結局、低次元物質結晶を使った新しい記憶素子の開発をテーマにしまして、その後はずっと結晶成長に関する研究をしてきました」

注:ファセットとは塩やメノウなどの結晶に見られる平らな面のこと。

どういうきっかけでファセットの研究を始められたんですか?

「もともとは、栗林一彦先生のご指導のもと、一般的な金属の結晶成長とは違うファセット結晶成長を明らかにしようという基礎的研究から始まりました。 ファセット、つまり小さい面で囲まれた結晶が無数に伸びていく形がどのようなメカニズムで決まっていくのか、かが問題なのです。 今回の実験が、太陽電池パネルや、リニアモーターカーに使われる酸化物超伝導体など、高品質で安価な製品を作るための処方箋になるのでは、と期待しています」

太陽電池やリニアモーターカーの技術はもう確立されているのかと思っていましたが、まだ改善の余地があるんですね。

「結晶の育成は産業的にもかなり成熟してきていますが、それでも結晶成長の詳しいメカニズムにはまだまだわからないことが多いのです。 それに、どの分野でもそうですが、この方法ではこれが限界だが、やり方や物質をちょっと変えたらもっと発展させられるっていうような局面は、これからもきっと出てくるでしょう。 太陽電池パネルの利用促進は重要な課題で、国の支援のもとにそういったプロジェクトも進められていますが、まだそれほど普及率が高いとは思えません。 高品質で安価な製品をいかに安定的に供給するかという課題に対して、こういった結晶成長のメカニズムが働くからこういう条件ならばうまくいきますよ、といった助言を与えることができればいいなと思っています」

先生の実験テーマが採択されたのが1993年。 16年越しでいよいよ実験が始まりますが、今のご心境は?

「いや〜、ついに戦闘開始のゴングが鳴ってしまったか、という感じですかね(笑)。 まあ、10年以上にわたって宇宙実験に向けて準備を進めてきましたから、あとはもう、人事を尽くして天命を待つという気持ちで臨みます」



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