ISSが周回している高度400km前後の上空では、非常にエネルギーの高い粒子が降り注いでいます。宇宙船の船壁や遮へい材によって、ある程度は遮ることができますが、宇宙滞在中の宇宙飛行士は、宇宙放射線による被ばくをすべて避けることはできません。
宇宙での人の滞在期間は、宇宙放射線による被ばく線量により制限されます。そのため、宇宙飛行士の被ばくは、線量制限値を超えないように正確に把握する必要があります。
このため、軌道上の放射線環境についてリアルタイムで把握する装置が必要です。
日本人宇宙飛行士の放射線被ばく管理は、これまでJAXAは受動型線量計を提供し、能動型計測器はISS内ではNASAに頼ってきました。 しかも、NASAの計測器は、線エネルギー付与(Linear Energy Transfer:LET)分布※1を直接的に計測できない等、被ばく線量の測定精度に課題があります。
このため、JAXAにて、リアルタイムで正確な線量計測技術の確立を目指し、宇宙放射線リアルタイムモニタ装置(PS-TEPC)を用いた技術実証を行います。
このPS-TEPCは、高エネルギー加速度研究機構(KEK)とJAXAが共同で開発したもので、この研究には京都大学、慶応大学、神戸大学、早稲田大学が参画しています。
宇宙放射線リアルタイムモニタ装置(PS-TEPC)は、荷電粒子及び二次中性子起源の入射粒子の飛跡とエネルギーを同時に測定し、そのLET分布を直接的に実測することが可能となります。
PS-TEPCを、「きぼう」の船内実験室のエアロック横の壁に設置し、PS-TEPCの計測データと、既に船内実験室に設置されている受動積算型宇宙放射線線量計(Passive Dosimeter for Lifescience Experiments in Space: PADLES)の計測データを比較します。
PS-TEPCは、2種の検出部(ディテクタユニット、DU)と1つの制御部(コントロールユニット、CU)から主に構成されています。
検出部には生体組織等価ガスが封入されており、放射線が通過すると生体組織等価ガス※2が放射線の飛跡形状に沿って電離します。電離によって剥離した電子は、平面のセンサ部に到達しX,Y軸の位置情報に、センサ到達時間の違いをZ軸情報とすることで3次元の飛跡情報として算出します。
計測データは、制御部から「きぼう」の実験系のLANに繋がれ、地上に伝送されます。
項目 | 仕様 |
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LET計測範囲 | 0.2~1000keV/μm (被ばく線量に寄与するLET領域全体。単位はkeV/μm(水中におけるLET)) |
寸法 | DU: 長さ166×幅215×高さ256mm CU: 長さ303×幅214×高さ326mm(アンテナ含まず) |
その他 | 全方位測定可能 リアルタイム測定可能 中性子検出可能 生体組織等価ガス(CH4: 64.4%、CO2: 32.4%、N2: 3.2%、1atm)封入 |
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