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「きぼう」日本実験棟のロボットアーム親アーム電磁適合性試験

 1999年10月5日から19日にかけて、筑波宇宙センターで「きぼう」日本実験棟のロボットアームの親アームの電磁適合性試験(Electro-Magnetic Compatibility Test:EMC試験)が行われました。この試験の様子を紹介します。

電磁適合性試験とは
電磁適合性試験計測設備
 「きぼう」日本実験棟の各搭載機器は、それ自身が装置として満足に動作すれば良いだけではなく、雑音電波を出して他の機器や国際宇宙ステーション(ISS)本体の機器に影響を与えないことや、逆に他の機器からの雑音電波の影響を受けないことを確認する必要があります。
 今回は親アームについて上で述べたことを確認するための電磁適合性試験を行いました。きぼうの親アームが雑音電波を発生して他の電気・電子機器に影響を与えないかどうか親アームが発生する雑音電波の周波数と強度を測定する放射雑音試験と、他の電気・電子機器が発生する雑音電波の影響を受けずに正常に機能するかどうかを確認する放射感受性試験を行いました。

 この電磁適合性試験は、身の回りで使われているパソコンやプリンタや、電子レンジといった電化製品などについても実施されています。また、各国には電磁適合性に関する規定があり、それをクリアしないと製品として流通することができません。

 なお、一般的には、雑音電波を発生させない方法として、アースを取ったり、導線を2本1組でよったより対線(ツイストペアケーブル)や、芯線に電線を編んだシールドという物を巻いたシールド線を使うなど、雑音電波が出ないように工夫がとられています。


「きぼう」日本実験棟のロボットアームとは
親アームと子アーム
 「きぼう」日本実験棟のロボットアームは、最大7トンまでの大きな物を交換したり移動したりする「親アーム」と、親アームの先端に取り付けて最大300kgまでの物を移動するといった細かな作業に使用する「子アーム」、それに親アームと子アームの操作を行う「ロボットアームコンソール(制御卓)」の3つから構成されています。ロボットアームは「きぼう」日本実験棟船外実験プラットフォーム上の実験装置の交換作業などの各種実験支援、または「きぼう」のシステムを構成する機器の交換など保守・保全作業支援に使用されます。




電磁適合性試験の内容
 放射雑音試験
  
雑音電波測定
 これは、親アームが発生する雑音電波を測定する試験です。
 まず、親アームを、外部からの電波の進入を防ぎ、また電波が室内で反射しないようになっているシールドルームに設置し、親アームを動かすために必要な動力と信号を送って関節のモータを動かしました。親アームから放射される様々な周波数(14KHz~15.5GHz)範囲の雑音電波を、部屋に設置したアンテナを周波数ごとに交換して受信し記録しました。そして、その雑音電波の強さがISSで要求されている下記の規定値以下であることを確認しました。

放射雑音試験規定値
周波数
親アームから放射される雑音電波の強さ
14KHz~10MHz56dBμV/m以内
10MHz~259MHz周波数ごとに異なり、56~86dBμV/m以内
259MHz~10GHz周波数ごとに異なり、46~72dBμV/m以内
13.5GHz~15.5GHz76dBμV/m以内

 なお、雑音電波を測定するためには親アームを動作させて測定するのがベストなのですが、親アームは微小重力環境で動かすことを前提に作られているため、親アームに負荷をかけないために、関節のモータを空回りさせただけにとどめ実際には動かさないで試験を実施しました。
  
放射感受性試験
 
雑音電波放射
 これは、親アームが外部からの雑音電波の影響を受けないことを確認する試験です。
 シールドルームの中に親アームを設置し、上記の放射雑音試験の時とは逆に14KHz~15.2GHzという広範囲の周波数の雑音電波を下記の規定に従って発生させて親アームに浴びせました。その環境下で、親アームの関節のモータを動かすために必要な信号を送って、親アームから返って来る信号を記録します。この信号が正常であることを確認することで、親アームが他の装置からの雑音電波で影響を受けないことを確認しました。

放射感受性試験規定値
周波数
親アームに放射する雑音電波の強さ
14KHz~200MHz
5V/m
200MHz~8GHz
60V/m
8GHz~10GHz
20V/m
2.2GHz
161V/m
8.5GHz
79V/m
14.8GHz~15.2GHz
250V/m


シールドルーム
シールドルーム
 シールドルームとは外部からの電波を遮断する部屋のことです。また、電波が室内で反射しないように、室内の壁面全体に電波吸収体が取り付けられています。
 現在私達の周囲には放送・通信などの無線電波が飛び交っていますので、シールドルームはこれらの影響を受けずに電波の計測を行うための施設です。


今後の親アームに関する試験
 今後は、どのくらいの振動を与えると共振が発生するかを確認するモーダルサーベイ試験と、親アームを水平の定盤上で実際に動かして各機能が作動することを確認する機能性能試験を行います。この2つで親アーム単体での試験は全て終了します。その後は、ロボットアームコンソール(制御卓)などと結合しての試験など、総合的な試験が行われます。


最終更新日:1999年 11月29日

 
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