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宙亀日記へようこそ! ここでは、日々の訓練の様子や私の意見などをツイッターよりも少し詳しく紹介したいと思っています。また、宇宙へ行ってからも、ミッションの様子を紹介したいと思いますので、是非ご覧下さい。宙亀日記をより良いものとする為に、皆様方からのご意見もお待ちしています!

努力は決して自分を裏切らず、明るい未来の可能性を拓く!

投稿日: 2014年11月 5日

皆さん、こんにちは!

約半年ほどお休みを頂いた宙亀日記の再開です!バックアップクルーとしての任務を控え、その後は2015年半ばに予定されている自身の打ち上げ及びその後約6ヶ月にわたるISSでのミッションと今後もイベントが目白押しです!ですから、これまでとは少し違った宙亀日記になるかもしれません。他方で、私自身の性格や考え方はどんなに忙しくても変わりませんので、私の意見に関しては、あまり違った印象は受けないかもしれませんね。

いずれにしても、これまでどおり自然体で、訓練で経験した事や思った事、また、日常生活で考えた事などについて書いてみたいと思いますので、御付き合い下さい!

今回私の宙亀日記をご覧頂いている皆様に是非送りたいメッセージは、努力を継続する事の重要性です。努力の結果が直ぐに出なかったからと言って、そこで諦めてはいけません!努力は見えないところで自分の将来の可能性を拓き、多くの選択肢をもたらしてくれます!今日は、そんな私の経験をお話しさせて頂きますね。

以前の宙亀日記「私がテストパイロットになるまで」で少しお話しましたが、私は航空自衛隊出身で、幹部学校の指揮幕僚課程と言うコースを修了しています。この指揮幕僚課程は、自衛隊の中核となる幹部自衛官に対して、リーダーシップ、フォロワーシップとは何かについて一年間徹底的に教育するコースです。ただ、全ての幹部自衛官が、このコースを受けられる訳ではありません。働き盛りの幹部自衛官を1年かけて教育するわけですから、全員にこのコースを履修させるのは不可能です。小論文、面接、討論と言った厳しい選抜試験を通過した者だけが履修を許されるのです。更に、受験年齢や受験回数に制限があるので、自分の将来を切り拓く為には、限られた機会を生かして合格し、教育を受ける機会を獲得しなければならないのです。

当時、私は防衛大学校での教官勤務の2年目で、最初の受験機会がやって来ました。パイロットの防大教官勤務は通常2年間でしたから、年度末には何処かに転勤する事が決まっていました。30歳になったばかりの時期、自分の進むべき道について、思い悩む事は多かったです。しかしながら、「優れた幹部自衛官になって立派な仕事をする為には、指揮幕僚課程で学ぶ必要がある!」と考え、このタイミングで試験に一発合格する事が自衛隊での自分の将来を拓くと思い定めました。

学生への教育の傍、指揮幕僚課程を既に卒業した先輩にお願いし、小論文の書き方などを教えてもらいながら受験準備を進めました。仕事が終わった後や休日に様々な小論文を書いて練習をしたのです。高校時代の国語の成績が10段階評価で3だった私にとって、これには大変な努力が必要でした。そして臨んだ一回目の受験。一次試験の小論文で不合格...一生懸命指導して下さった先輩に対し、申し訳なく思うと共に、自分の実力の無さを思い知りました...(不合格だった時は、ショックでしたよ...「貴方には、航空自衛隊の中核を為す為の教育を受ける資格がない。」と言われた様な気がしました。これはある意味正しく、ある意味正しくありません。正確には「現時点の実力では、教育を受ける資格がない」のであって、まだ機会は残っていましたからね。)

不合格となった以上、防大の教官を終った後にどの道に進むのか、考えなければなりません...この時私が幸運だったのは、論文を指導してくれた先輩は、指揮幕僚課程だけでなくテストパイロットコースも卒業していた事です。2年間地上での教育に従事して、操縦技術が落ちていた私が、航空自衛隊で屈指の操縦技量を持つ者が集まるテストパイロットコースに進む事ができるかどうかについて率直に不安を打ち明け、相談に乗って貰いました。飛行部隊から直接テストパイロットコースに行くのが通常なので、多くの困難がある事は明白です。しかしその先輩は「厳しい面はあるものの、努力次第で何とかなる!」と私の背中を押してくれました。もしかしたら、先輩は、私に見えないところでも、何らかの手助けをしてくれたのかもしれません。と言うのは、テストパイロットコースに入る際には、テストパイロットとしての素養があるかどうか、事前調査が実施されるのが常でした。飛行隊からその先輩のもとに、「私がどの様な人物か?飛行技術はどの程度か?」等の質問があったのではないかと思います。更に、その先輩はテストパイロットの教官として間も無く飛行隊に戻る事が決定していたのです。そもそも、宇宙飛行士を目指す為には、テストパイロットになるべきと以前から考えていましたし、JAXAが宇宙飛行士候補者を選抜する上で、私のテストパイロットとしての経験を考慮したとすれば、この先輩との出会いは非常に貴重で運命的だったと言えます。また、指揮幕僚課程に一度で合格していたら、その後テストパイロットコースに進む事はありませんでしたから、合格への努力の結果がこの時点で実らなかった事が逆に幸いしていた事にもなります。

とにかく、私は紆余曲折はあったにせよ、テストパイロットコースに入校し、その先輩はテストパイロットの教官として私を指導してくれました。同時に、指揮幕僚課程の2回目の受験へ向けて、論文の指導も継続して下さいました。私自身、テストパイロットになる為の勉強で、ほぼ一杯の状況でしたが、先輩の熱意もあり、小論文を書く勉強も同時に続ける事が出来ました。先輩の指導と私の努力の結果、私は無事にテストパイロットになると同時に、指揮幕僚課程の試験に合格し、リーダーシップ・フォロワーシップについて学ぶチャンスを手にしたのです!宇宙飛行士になる上で、リーダーシップ・フォロワーシップが重視されていた事を考えれば、苦手の国語を克服するための努力の継続は、必要不可欠だったと言えるでしょう。一度目の不合格で諦めていては、この機会を手にする事は出来ませんでした。

さて、①指揮幕僚課程への合格 ②テストパイロットコースの卒業という2つの成果を手にした私の前途は洋々だったかというと、そんな事はありませんでした。(人生はそんなに簡単ではありませんよね。)

実は、テストパイロットコースを卒業と同時に指揮幕僚課程に進む事に関しては前例があったものの、その場合にテストパイロットとして飛行隊に戻って実務をした例が無かったのです。(私の先輩は、テストパイロットになった後に数年実務を行った上で、指揮幕僚課程へ進んだので、再度テストパイロットとして飛行隊に戻る事が出来たのです。)

私としては、折角努力して念願のテストパイロットになったのですから、実際の試験飛行をしないという事は、何の為に努力してテストパイロットになったのか分からないと言う気がしていました。

指揮幕僚課程に入校する為に、飛行隊を去る私を見送って下さる方々。その多くが「油井のテストパイロットとしてのキャリアは、歩み出す前から終わったな...」と思う中、私は「絶対にここに戻ってくる!」との強い想いを胸に東京へ向かったのでした。その後の話はまた、機会があればお話します。

指揮幕僚課程での1年間は、テストパイロットコースでの1年間と同様に、人生で最も充実した1年と言っても過言ではありません。ここでも、自分の将来の可能性を拓く為、努力の連続でした。当然、成功も失敗もありました。でも、今思えば無駄になった努力は一つもありません。ただ、努力を生かすためには、それまでの努力を生かす為の努力も必要になるのです(キリがありませんね笑)。私の場合、一度目の不合格で、諦めていては、それまでの1年間で向上した小論文の実力を生かすことは出来ず、そして指揮幕僚課程で学ぶ事もなく、結果として宇宙飛行士になることも出来なかった筈です。結果が直ぐに出なくても諦めずに努力を継続する事で、自分自身の未来の可能性を切り拓く事が出来るのです!皆さんには、きっと自分が思う以上の能力が秘められていますよ!そして、結果に関わらず努力を継続する人には、必ずその努力をサポートしてくれる仲間が現れる筈です!失敗は諦めずに努力を継続する人にとってのみ、成功の種なのです!私もミッションへ向け努力を継続しますので、一緒に頑張りましょう!

取り留めのない話で申し訳ありませんでした。次回は、バックアップクルーとしての訓練や生活について書いてみたいと思いますので、お楽しみに!

写真

出典:JAXA/GCTC

訓練中の写真です(10/6撮影)!過去の努力の結果、今の私がいる!そして、宇宙飛行士になった今も、将来の為に努力を継続中です!私も若い頃、"先生との相性が悪い"等の単純な理由で、ある教科が嫌いになり、そこから「成績が悪い」→「才能が無い」等と考える過ちをしました...自分で自分の可能性を摘み取ってはダメですよ!

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油井 亀美也
(ゆい きみや)

JAXA宇宙飛行士
2009年2月、宇宙飛行士候補者として選抜。2011年7月、ISS搭乗宇宙飛行士として認定。現在、ISS第44次/第45次長期滞在に向けて訓練中。
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