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星出宇宙飛行士の作業状況(2012年9月10日)
9月7日、星出宇宙飛行士は、「きぼう」日本実験棟船内実験室にて、多目的実験ラック(Multi-purpose Small Payload Rack: MSPR)のワークボリュームに設置している水棲生物実験装置(Aquatic Habitat: AQH)の機能確認を地上から行えるようにするために、AQHとMSPRの各構成品を起動する作業を行いました。
医学実験に関わる作業としては、統合的心血管(Integrated Cardiovascular: ICV)実験の一環で、ジョセフ・アカバ宇宙飛行士を被験者とした超音波検査を行うために、検査機器の準備作業や機器の操作を星出宇宙飛行士が担当しました。検査を終えた後、星出宇宙飛行士は取得したデータを地上に送信し、使用した機器を片づけました。
「クエスト」(エアロック)では、船外活動で使用した船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)を保管するために掃除などの手入れを行っていたサニータ・ウィリアムズ宇宙飛行士に加わり、星出宇宙飛行士は、船外活動で使用した工具の片づけ作業などを支援しました。
9月12日に予定されている宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)の取り外しと放出に向けた準備として、ロボットアーム操作の軌道上訓練も実施しました。訓練後には、地上のロボティクス運用の担当者と打ち合わせを行いました。
また、米国のISS農業カメラ(ISS Agriculture Camera)のラップトップを起動し、地上からISS農業カメラの試験が実施できるように準備しました。このカメラは、植生地域の画像を取得するために開発されたもので、米国中西部の北部地域の農業活動と関連研究を支援するデータを収集することが目的です。
その他にも、改良型エクササイズ装置(Advanced Resistive Exercise Device: ARED)の定期的なメンテナンス作業を行ったほか、食事摂取についてのアンケート(Food Frequency Questionnaire: FFQ)に回答しました。
9月8日と9日は休暇を取り、軽めの作業をして過ごしました。
8日は、国際宇宙ステーション(ISS)滞在による疲労の影響を調べる精神運動覚醒検査(Reaction Self Test: RST)や、週に一度の3時間かけての船内の掃除を行ったほか、欧州宇宙機関(ESA)およびドイツの長期宇宙滞在中の概日リズムの変化についての研究「CRHYT(Circadian Rhythms)」の一環で、データ取得のために36時間身に着けていたベルトを外し、装置を掃除して片づけました。この日、週に一度の家族との交信(Private Family Conference: PFC)も行いました。
9日は、9月10日から開始する星出宇宙飛行士にとって三度目となるNASAの「食事摂取から予想・予防できる宇宙飛行中および回復期間の骨代謝の変化(Pro K)」実験の準備として、実験期間中に摂取する食事メニューと消耗品の準備を行いました。その他、ISSの音響対策の効果の評価と、現在の聴覚の状態を把握するために、ISS支援コンピュータ(Station Support Computer: SSC)上のアプリケーションを使用した聴覚検査を行いました。
【コラム:US EVA18とUS EVA19を振り返って(その1)】
なぜ作業が長引いたのか?
8月30日に行われたUS EVA18は、8時間17分という長時間の作業となってしまいました。NASAからはまだ正式な報告は行われていませんが、作業終了後に開かれた記者会見で口頭説明された情報によると、今回交換した電力切替装置#1(Main Bus Switching Unit #1: MBSU#1)という装置を地上でトラスに設置する作業において、トラスの斜めになった面に、重力がある状態でMBSUを傾けながら設置する際に、ボルトに力が加わって損傷させてしまっていた可能性が考えられています。
船外活動時に最初に試したのは、ピストル型パワー・ツール(Pistol Grip Tool: PGT)という電動工具のトルク設定を上げることでしたが、故障したMBSUをなんとか外すことはできましたが、新しい予備品を完全に設置することができませんでした。MBSUは長さの違う2本のボルトで固定しますが、長い方の1本が完全に締まらないと電気コネクタが接続されず、電力供給ができないのです。
トルク・マルチプライヤーというトルクを強くしたいときに使う工具にPGTを付けて試しても駄目で、ネジ山を損傷させて状況を悪化させる懸念があったため、この日の船外活動では、その場所に仮置きする形で作業を終えました。とはいえ、すぐに船外活動を終えることはできません。使用した工具の片付けなどの後始末だけでも1時間くらいは時間は必要です。今回船外活動を行ったふたりの酸素の持ちも良く、当初から8時間の船外活動ができる状況であったため、ここまで頑張ることができました。
対処策と新たなトラブル
このMBSU#1の設置失敗により、ISSの供給電力は75%(太陽電池パドル8枚のうち2枚か らの電力供給が不能に)にまで落ちましたが、9月1日に別の電力系統でもショートが発生し、計62.5%(太陽電池パドル8枚のうち3枚からの電力供給が不能に)なり、ISS内では必要不可欠な機器以外は節電のために停止する措置もとられていたため、その状況を長引かせることはできませんでした。また、今回ロボットアームの操作を担当したジョセフ・アカバ宇宙飛行士が9月17日には地上に帰還する予定になっていたため、それを逃すと次のISS長期滞在クルー到着まで作業ができない状況になることから、早めの修理作業を行うことが決断されました。
MBSUはそれほど重要な装置なので、軌道上には予備品が2台保管されており、次の「こうのとり」4号機でも、元々もう1台を運ぶ予定になっていました。
なお、MBSU#1の修理成功で、ISSの電力供給は87.5%にまで回復しました。もう1箇所の修理は、故障箇所を特定した後、改めて別の船外活動(かなり先になるでしょう)を行って修理することになると考えられています。
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