最終更新日:2011年4月27日
古川宇宙飛行士解体新書
国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在開始を間近に控えた古川宇宙飛行士が、自分自身のこと、有人宇宙開発や「きぼう」日本実験棟に託す想いなどについて語ります。
テーマは「古川宇宙飛行士を徹底解剖!」 好きな食べ物やスポーツ、人生について、宇宙への想いや宇宙飛行士を目指した理由、いよいよ始まるISS長期滞在ミッションに向けた抱負など、全32項目についてQ&A形式で紹介します。
- 趣味・嗜好
- 人生観
- 宇宙関連
- 訓練・ミッションについて
趣味・嗜好
仲間とソフトボールすること。もともと野球部。仲間とはヒューストンにいる日本人の仲間。20代から50代まで。強さはそこそこ。たまに仲間うちで楽しむ。試合も行う。
日本食。寿司とか。ラーメンとか。スパイシーなもの好き。メキシカンとかもOK。
ない。
心理テストみたいですね。(笑) 青、青空のイメージがあって、広がりを感じる。新緑の緑も好き。
新緑の季節。若い芽が出てきて活動的。生命の強さを感じる。”東京近辺“の5月。(他の地域だと月が違うかもしれないから)
日本語です。あ、違うか。どっちかといえば、英語。ロシア語難しい。ロシア語はコックピットでのコミュニケーションはとれる。でもロシア文学は語れないな。
横浜弁と、茨城弁と…大学で2年ほどドイツ語も習ったが、きれいに忘れた。2週間前にドイツに出張したときも、化粧室に行く時にどっちが男性かわからなかった。(DかHか)
やるならソフトボール。みるのはいろんなスポーツを見る。スキーのジャンプとか、オリンピック、陸上競技、サッカーも好き。アストロズ(ヒューストン)は何回か見に行った。アイスホッケーも見に行ったことある。
動物は何でも好き。犬も猫も。今は飼っていないが、20年くらい前、実家で犬を飼っていた。小型と中型の間くらいの雑種。こげ茶と黒が混ざったような犬。今は実家では猫を飼っている。
体育と算数。体育は走るのや跳び箱が好きだった。跳び箱は9段(かなり高い)まで飛べた。足を中に入れて飛んだり、着地時に逆を向いて飛んだりということもできた。
Q10:
どうしてウルトラセブン? ウルトラセブンの魅力について語ってください。
ちょうど小学生のころに夏休み再放送していたので良く見た。ドラマ性がある。単に怪獣が悪くてウルトラセブンがいい方で悪をやっつける勧善懲悪ではなくて、ストーリーの中に示唆に富んだ、地球を大切にしていない地球人の方がおかしいんじゃないかというメッセージ性が入っている。そういうところが子供なりに納得できるところがあった。怪獣の方の言い分が正しかったりする。
ストーリー性に気づいたのは…小学校高学年のころかな。
ゆっくりします。眠れる時には朝寝坊して。家族とゆっくり過ごす。
両親。今の自分に大きな影響を与えてくれている。父は外資系の会社の人事をやっていた。人づきあいとか影響があった。母は主婦だった。好奇心が強い人だった。そういうところで影響を受けていると思う。
真央ちゃんとか言っちゃだめですか!?(笑) 嘘です。ガガーリンさんに会ってみたい。亡くなってますけどね。ボストーク宇宙船で人類で初めて宇宙に飛んだ。どんな風に考えていたのかということを知りたい。ガガーリンさんのロッカーは星の街のコズモノート用のジムのロッカーにある。その向い側にぼくのロッカーがある。
人生観
Q14:
人とのコミュニケーションで気を配ることは?
相手を尊重すること。
Q15:
文化の違う人とのコミュニケーションで気を配ることは?
特に文化・言語が違う人とは、もともと違うんだということを認めた上で、お互い尊重するのが大切なんじゃないかと思います。
あきらめない。
継続は力なり。
宇宙関連
Q18:
今までで一番印象に残っている宇宙に関する出来事は?
アポロ11号人類初の月着陸。幼稚園の時にテレビで生でみた。子供心にすごい事だと思った。日本時間で7月21日だった、家族でその日に海に行く予定だったが、両親が直前で1日延期すると言った。子供だから、なんで? なんで?と聞いたら、人類に重要な出来事があるからテレビで見るんだと言って1日出発を延期したのを覚えている。
小さいころからの宇宙へのあこがれがよみがえったからですかね。
アポロ11号の月着陸をみたりだとか、ウルトラセブンをみて宇宙が好きになって、天文学とか宇宙工学とか漠然とそちらの方面の勉強をしたいと思っていたが、高校2年の夏休みに、母の弟に内科の病理をやっている医者がいて、その人の話を聞く機会があって、患者さんがよくなって退院していくときが一番嬉しいという話をしてくれた。医者はやりがいがあっていい仕事だと思い、進路を変えて医学部へ行って、医者になった。
医者もやりがいがあってよかったが、医者になって9年目、当直中に日本人宇宙飛行士を募集するというニュースを見た。国際宇宙ステーションに3-6か月滞在して科学の実験をするというニュースが飛び込んできた。その瞬間に脳天に稲妻が落ちたような衝撃をうけて、これをやりたいと思った! 昔のあこがれがよみがえったんだと思います。それで応募して、幸運にも選ばれたということです。
役に立つ宇宙開発ですかね。宇宙に興味がないかたでも理解していただける役に立つ宇宙開発が目指すべき方向ではないかと。
Q21:
宇宙に持っていきたいものは? その理由は?
関係者の方々の想い。代表として仕事で行かせていただくので。変な例えかもしれませんが、おみこしに乗らせていただくような形なので、おみこしを支えてくださる方がいないと成立しないですよね。そういった皆さんの想いとか希望とかを持って行きたいです。いいっすか?(笑)
Q22:
宇宙に持って行きたくないものは? その理由は?
争い。首脳の方とか、宇宙でサミットなんかやってもらったらいいかもしれませんけど、こういうところに出すべきかどうかわかりませんけど。
イトカワ。嘘です。(笑) 月かな。月から地球を見てみたい。
フロンティアであること。未知のことがたくさんあること。ISSがある近場の宇宙に限らず、宇宙の起源・今後どうなるか・生命の起源・未知の生命体など未知なことがつきないところ。
訓練・ミッションについて
Q25:
自分のミッションで一番楽しみにしていることは?
エンジニア、運用者としてソユーズの船長補佐として、船長と一緒にソユーズ宇宙船を運用していくことが楽しみ。実際に船長と協力してコマンドを打ったり、モニターしながら状況に応じていろいろ操作しますので、実際にやるのが楽しみ。
あとは、宇宙ステーションに行ってから、ISSを運用して、科学実験をして、科学の進歩に自らかかわれるのが楽しみ。医者の観点から、最初に体がどう適応するか、自分が知覚的にどう感じるかというのは楽しみ。確率的に気持ち悪くなるんでしょうけど、どう気持ち悪くなるのかと体の変化が楽しみ。
Q26:
宇宙飛行士になるのを諦めようと思ったことは?
訓練を始めてからは、ないです。待つのも仕事だとおっしゃっている方もいたけれど、その通りですね。
Q27:
これからどんな実験をISSでしてみたい?
科学実験です。科学者が提案したもののほか、ふしぎ実験等、広報要素の大きいものとか、宇宙医学にチャレンジだとか、いろんな領域のものを、いろんな方のアイディアをいただいて、協力してやっていきたい。同級生にもアイディア出してよとメールしたところなんですけどね。
Q28:
宇宙飛行士の訓練で一番苦しかったことは?
体力的に厳しかったのは、ロシアの冬のサバイバル訓練。2000年2月、3人で協力して48時間戸外(モスクワ郊外)で過ごした。-20度、風が強くて体感温度は-30度と言われていた。
ソユーズカプセル通常は決められた地点、カザフスタンに落ちてくるんですけど、トラブルがあった時にとんでもない所(海の中・冬のシベリアなど)に落ちてしまうかもしれない。発信機がついていて位置はすぐわかるが、救助隊がすぐ来られないかもしれないので、救助隊がくるまでの2~3日間、宇宙飛行士が力を合わせて生きてなきゃいけない、そのための訓練です。
カプセルの中にはサバイバルキットとして斧やナイフがあって、近くの森にはいって木を切ってきて、耐風マッチをつかって火をおこします。昼間はヘリが救助に来たときにわかるように、人工以外ではないようなオレンジ色を雪の上につけたり、夜は火の番をしたりする。なかなか寒い。
地面が凍っているところに、断熱シートは敷くものの、寝転がった時に肩の所に地面の凍っている寒さが深々と響いてきて、寒さのために眠れないという経験を初めてした。手は凍傷になるかと思った。精神的にも肉体的にも鍛えられた。アサインされて打上げが近い時にやる訓練じゃないですね。リスクがありますね。(笑)
Q29:
宇宙飛行士の訓練で一番楽しかったことは?
いろんな国に行って、いろんな人に出会えること。インストラクターや技術者。
地球から宇宙ステーションまでの行き帰りのソユーズ宇宙船の船長補佐。ISS滞在中はフライトエンジニアとして科学実験の実施、保守点検作業を行うことになります。
Q31:
一緒に行く他の宇宙飛行士の紹介を簡単にしてください。
マイケル・フォッサム宇宙飛行士、アメリカ人、ISSのコマンダーになる。すごくしっかりしていて、頼りになる。船外活動のベテラン。スペースシャトルで2回飛行している。陽気でジョークを言い合ったりして話しやすい。
セルゲイ・ヴォルコフ宇宙飛行士、ロシア人。若くて優秀なロシアのパイロット。彼も話しやすい。オープンで、気さく。しゃべるべきところはすごくしゃべる。リーダーシップもある。冗談とかも言う。第17次長期滞在クルーのコマンダー(ソユーズ宇宙船・ISS両方)。お父さんも宇宙飛行士。
科学者の方に「きぼう」に興味を持っていただいて、様々な領域から実験を提案いただき、共同作業を行う。それをもとに、学術的にも意味のある論文を書くし、実生活で役立つ。役立つ宇宙開発、宇宙ステーション、きぼうってことですかね。
役立つというのは、すぐにお金にならなくてもいい。ノーベル賞とかでもすぐに役に立つということが判明したわけではなくて、何十年もたってから見直されて、実はすごいことだったということもしばしばある。そういう面では、基礎的な科学というのを、しっかり、ゆっくりとしたペースでも着実に進めていく意味があるのかなと思う。
来るべき宇宙時代に向けてへのデータを蓄積していくという意味では「きぼう」は着実に進めていくべきなのかなと思います。