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JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在

古川聡宇宙飛行士
最終更新日:2011年8月12日

古川聡宇宙飛行士の「宇宙医学にチャレンジ!」実施結果

「宇宙医学にチャレンジ」についてご応募いただいた110件のテーマから10テーマを選定し、今回9件について古川宇宙飛行士が、「きぼう」日本実験棟で実施しました。

宇宙医学にチャレンジ! 実施テーマ

指-指ドッキング

内容:
両手をゆっくり移動させ、顔の前で指先と指先を合わせる。地上では指同士を合わせられるが、微小重力で合うかどうか確認する。これを目を開けた状態とまぶたを閉じた状態で行う。

結果:
(1) 開眼では、左右の指先がぴったりと合う。
(2) 閉眼では、左右の指先の位置がずれる。数回繰り返すと、学習効果で指先が近づく。

解説:
手の協調運動は、腕の重さなどの情報をもとに、小脳が調節している。微小重力では、腕の重さ情報がないので、協調運動がうまくできない。
繰り返し学習や、視覚が加わると運動は改善する。

血圧測定

内容:
上肢(上腕)と下肢(足首)の血圧を測定し、地上と微小重力での血圧の差を比べる。

結果:
地上では、収縮期血圧(心臓が血液を押し出すときの圧力で、血圧測定の際の高い値)は上肢より下肢の方が10~40mmHg高い。
宇宙では、上肢と下肢の収縮期血圧は等しい。

解説:
地上では、重力による静水圧(水の重さによって生じる圧力で、水深が深いほうが圧力が高くなる)のため、収縮期血圧は下肢の方が上肢より高くなる。
微小重力の宇宙では、静水圧が生じないため、上肢と下肢の血圧差がなくなる。

体液シフトとサイズ変化

内容:
微小重力での体液シフトや筋萎縮などの影響を調べるため、軌道上と地上で、頭、首、腕、手首、胸囲、腹囲、太もも、ふくらはぎ、足首の周径を測り比較する。

結果:
頭、手首、足首、首(※1)、胸囲:変化無し
上肢、前腕、太もも(※2) :1cm細くなった
ふくらはぎ(※2) :4cm細くなった
ウエスト:6cm細くなった

解説:
微小重力では、体液が1.5リッターほど下肢から上半身に移動し、顔が丸くなる現象(ムーンフェイス)や鳥足現象(バーズレッグ)などがおきる。
腹部の内臓も、垂れ下がらず浮かぶ。

※1:打上げ1週間頃は太かったが、現在、その差異は小さくなっている。
※2:宇宙では、毎日、筋力維持のための筋力トレーニングを行っている。

上下感覚

内容:
微小重力に慣れた後、天井や床などの上下を認識することに、地上と差が生じるかどうかを確かめる。

結果:
蛍光灯の光る天井を、頭側にしても、足側にしても、 「きぼう」の部屋の上下の違和感は感じなかった。ぐるぐる回転した後も、足のある方を下と認識し、自分を中心に、相対的に上下を認識した。

解説:
地上では重力を基準に周囲の上下を認識しているが、宇宙では重力による基準ではなく、自分を基準に相対的に周囲の上下左右を認識する。

ニュートラルポジション

内容:
微小重力空間で、全身の力を抜いた時の、宇宙での自然な姿勢を撮影する。

結果:
肘・股関節・膝関節や背中が曲がった中立姿勢になる。

解説:
地上では、重力で倒れないように姿勢を正したり、重力に引かれて腕が垂直に垂れたりする。宇宙では、力を抜くと屈筋と伸筋の張力バランスの結果関節が曲がり、無意識に中立姿勢になる。
宇宙では、地上で立っているような気をつけの姿勢をとると、背中とお尻の筋肉が張る。重い頭を支えなくていいので肩がこらない。

眼振

内容:
閉眼と開眼の状態でそれぞれ体を回転させた後に、眼球運動を映像で記録する。
眼振とは、眼球が往復する反射(刺激に対する応答)を指す。

結果:
閉眼で回転した場合は、頭の中がグルグル回る感じがあるが、眼振はほとんどない。
開眼で回転した場合は、回転時に視覚を補正するような感じがあるが、回転を止めるとすぐに消失する。わずかに眼振を認めた。

解説:
宇宙では、重力による耳石や体の位置情報(体性感覚)の刺激が少ないので、眼振は出にくい。

宇宙酔い

内容:
長期滞在中の、宇宙酔いの変化を述べる。

結果:
滞在開始直後は、頭が重く、頭を動かすと「うっ」と気持ち悪くなる。
滞在開始1週間で、症状は消失した。

解説:
地上では視覚・耳石・体性感覚を無意識に統合してバランスをとるが、宇宙では耳石や体性感覚の情報がなくなるので混乱する。
宇宙での適応過程の1つで、次第に視覚情報でバランスをとることを学習し、宇宙酔いは1週間で消失する。

身長変化と腰痛

内容:
身長と座高をメジャーで測定し宇宙と地上で比較する。
宇宙で腰や下肢の痛みの原因を調べるために用いられる下肢伸展テストを行う。

結果:
身長が1cm伸びたのは、座高が1cm伸びた結果(通常は3-5cm伸びる)。
下肢伸展テストを行ったが、腰痛、下肢痛は発生しなかった。

解説:
宇宙では椎間板が膨らみ座高が伸びるため脊髄や馬尾が伸展され腰痛が発生するが、今回下肢伸展テストでは腰痛・下肢痛はなかった。

宇宙では、飛行開始1週目に腰痛を自覚することが多いが、宇宙酔いと同様に、1週以後次第に腰痛は軽快する。

足底の皮膚

内容:
足底を下方と側方から撮影し、指先で足底を押した際の変化をみる。

結果:
飛行1か月を過ぎたころから、足底の皮膚(特に体重がかかる部分)は柔らかくなり、現在も古い表皮が剥けている途中。足底を押すと皮膚が柔らかい。

解説:
微小重力空間では、運動時以外立って歩くことはないので、足底への刺激が少なくなり、皮膚も柔らかくなる。古い皮膚の角質は剥離する。

古川宇宙飛行士が軌道上で実施した実験の様子を
ご覧いただけます。[25分13秒](出典:JAXA)

 
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