JAXA宇宙飛行士活動レポート 2015年12月
最終更新日:2016年1月25日
JAXA宇宙飛行士の2015年12月の活動状況についてご紹介します。
油井宇宙飛行士、ISS長期滞在ミッションを終えて帰還
地上へ帰還した直後の油井宇宙飛行士(出典:JAXA/NASA/GCTC/Andrey Shelepin)
第44次/第45次長期滞在クルーとして、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在していた油井宇宙飛行士が、約142日間にわたるISS長期滞在ミッションを終えて、2015年12月11日に帰還しました。
ISS滞在中、油井宇宙飛行士は、「きぼう」日本実験棟での実験、新たな実験装置を設置するなど利用環境の整備、ISSのメンテナンス、船外活動の支援、そして宇宙からの魅力的な写真と共に日々の状況をツイッターで情報発信するなど、滞在期間中パワフルに活動しました。
8月には、宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機が打ち上げられ、日本人として初めてキャプチャ(把持)を担当し、ISSのロボットアーム(SSRMS)の正確な操作で「こうのとり」5号機ミッションを成功に導きました。
その後もロードマスター(到着物資の移送責任者)として、到着直後の「こうのとり」の内部点検や物資の荷降ろしや保管管理を指揮しました。
油井宇宙飛行士が関わったJAXAの実験は21ミッションに及び、NASAやESAの医学実験のデータ取得にも貢献しました。
新たな実験装置である小動物飼育装置(MHU)の設置や動作検証、新たな実験エリアとなる多目的実験ラック(MSPR-2)の設置とそこに設置する予定の静電浮遊炉(ELF)の到着部品の点検も行い、「きぼう」に新たな利用環境の構築も行いました。
船外実験プラットフォームの利用としては、日本やブラジルの大学が開発した超小型衛星の放出作業や簡易曝露実験装置(ExHAM)2号機の設置に携わりました。
12月11日、油井宇宙飛行士は、オレッグ・コノネンコ(ロシア)、チェル・リングリン(NASA)宇宙飛行士と共に、ソユーズTMA-17M宇宙船(43S)に乗り込み、日本時間午後6時49分にISSから出発し、同午後10時12分頃に、カザフスタン共和国の草原に着陸しました。
油井宇宙飛行士帰還後記者会見の様子(出典:JAXA)
12月21日には、帰還後初めての記者会見をJAXAヒューストン駐在員事務所から行い、テレビ会議のモニター越しに報道関係者の前に元気な姿を見せました。油井宇宙飛行士は、ツイッターで伝えきれない多くの想いがあること、地球の自然環境に負荷を与えない環境制御技術の重要性、多国籍の人間が集うISSでお互いを尊重しあう文化が育まれていること、その中で日本が存在感を示せたこと等、2月に帰国したらミッション報告会で伝えたいことがたくさんあると語りました。
- 油井宇宙飛行士長期滞在総括
- 油井宇宙飛行士、米国ヒューストンからテレビ会議で記者会見を実施
大西宇宙飛行士、45Sのバックアップクルーとしてプライムクルーに同行
バイコヌール宇宙基地内の博物館で、ソユーズTMA-19M宇宙船(45S)のミッションロゴの旗を手にもつ45Sクルーの3人とバックアップクルー (左から、キャスリーン・ルビンズ、大西卓哉、ティモシー・コプラ、ユーリ・マレンチェンコ、ティモシー・ピーク、アナトーリ・イヴァニシン宇宙飛行士)
(出典:JAXA/NASA/Victor Zelentsov)
第48次/第49次長期滞在クルーである大西宇宙飛行士は、2015年12月15日のソユーズTMA-19M宇宙船(45S)が打ち上げられる直前まで、第46次/第47次長期滞在クルー(45S搭乗クルー)のバックアップクルー(交代要員)の任務を務めました。
11月末に、第46次/第47次長期滞在クルー(プライムクルー)と大西宇宙飛行士らバックアップクルーは、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC)からカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地にそれぞれ別の飛行機で移動しました。
バイコヌール宇宙基地では、打上げに向けた最終準備をプライムクルーとともに行いました。ソユーズTMA-19M宇宙船への物資の搭載品を確認したり、本番と同じようにソコル宇宙服を着て搭乗し機器の操作性などを確認しました。
また、シミュレータを使用して、ソユーズ宇宙船を手動でISSにドッキングさせる訓練なども行いました。
射点にて、ソユーズTMA-19M宇宙船(45S)を搭載したソユーズロケットを背景に45Sのバックアップクルー(左から、キャスリーン・ルビンズ、アナトーリ・イヴァニシン、大西卓哉宇宙飛行士)
(出典:JAXA/NASA/Joel Kowsky)
大西宇宙飛行士らバックアップクルーの任務は、ソユーズTMA-19M宇宙船(45S)の打上げ直前に解かれました。プライムクルーを乗せたソユーズTMA-19M宇宙船(45S)は、12月15日午後8時03分に打ち上げられました。
今後、大西宇宙飛行士は、半年後に控えた自身の第48次/第49次長期滞在ミッションに向けて、引き続き訓練を行っていきます。
野口、星出両宇宙飛行士、飛行機操縦訓練を実施
野口宇宙飛行士と星出宇宙飛行士は、それぞれ大分県国東市にある大分空港で、本田航空株式会社が所有するホーカー・ビーチクラフト式 G58型(Baron)を利用した航空機操縦訓練を行いました。
この訓練は、航空機を操縦しながら交信・判断などを行い、心理的圧力がかかる状況の中で、宇宙飛行士に求められる資質のひとつであるマルチタスク能力の維持・向上を図るためのものです。
飛行前には、フライトシミュレータを使用した操縦方法の習熟訓練を行ったほか、気象・運航に関する講義を受けました。また、機体の飛行前点検手順についても確認し、訓練に使用する飛行機の機体を自ら点検した上で飛行訓練を実施しました。
飛行中は、航空機の姿勢・高度・位置・針路の測定を計器のみを頼りに行う飛行や、着陸を中止して飛行に戻る操作、異常発生時の操作などを行いました。
野口宇宙飛行士、第22回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-22)に出席
セッションの進行を務める野口宇宙飛行士(出典:JAXA)
野口宇宙飛行士は、12月1日から4日にかけてインドネシア研究技術・高等教育省(RISTEK-DIKTI)、インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)、文部科学省(MEXT)、JAXAの共催によりインドネシア共和国バリ島で開催された第22回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-22)に出席しました。
今回で22回目となったAPRSAFは、アジア太平洋地域における宇宙利用の促進、宇宙技術開発の発展と共通する課題の解決に向け、地域協力の強化をめざし、全体テーマ「Sharing Solutions through Synergy in Space(宇宙におけるシナジーを通じた解決策の共有)」のもと、28の国・地域および10の国際機関から478名の参加者が集いました。
野口宇宙飛行士は、特別セッション3「宇宙探査における地域協力」の座長として登壇し、インドネシア、マレーシア、NASAの代表らと共に「きぼう」利用の成果や宇宙探査分野でのアジア諸国との協力の重要性に関しての議論をリードしました。
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