JAXA宇宙飛行士活動レポート 2007年7月
最終更新日:2007年8月29日
JAXA宇宙飛行士の2007年7月の活動状況についてご紹介します。
ロシアでの長期滞在訓練
帰還モジュールのシミュレータ内で訓練を行う若田宇宙飛行士(©JAXA/GCTC)
第18次長期滞在クルーとして国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する予定の若田宇宙飛行士とバックアップクルーを務める野口宇宙飛行士は、ガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)と黒海沿岸にてISS長期滞在に向けた訓練を行いました。
GCTCでは、ISSを構成するロシアモジュールの電力システム、火災検知・消火システム、姿勢制御・航法システムや、ソユーズ宇宙船の構造・装備や生命維持システムについて、運用能力の習得を目的に講義やシミュレータを使用した訓練を行いました。
また、黒海沿岸では水上サバイバル訓練を行いました。
水上サバイバル訓練とは、ソユーズ宇宙船の帰還モジュールが打上げ・帰還時に海上に不時着した場合を想定し、救助が到着するまでの間、水上で生存するための技術を習得するための訓練です。
訓練後、海から上がった野口宇宙飛行士(©JAXA/GCTC)
帰還モジュールから脱出する若田宇宙飛行士(©JAXA/GCTC)
今回の訓練では、ソユーズ宇宙船の帰還モジュールから海面へ脱出する技術やサバイバル技術などを習得しました。帰還モジュールから脱出する訓練では、打上げ・帰還時に着用する与圧服を着て帰還モジュールに乗り込んだ後、海上に浮かべた帰還モジュールの中で、脱出用の防水・防寒用の衣服に着替え、サバイバルキットを携帯してハッチから海面に飛び込む実技を行いました。また、緊急事態を想定し、帰還モジュール内で衣服は着替えず与圧服のままでフローティング装備(緊急用浮き袋)のみを装着して脱出する訓練も行いました。脱出後は、海上で救助を待つ間のフォーメーション(隊形)の組み方についても訓練を行いました。
スペースシャトルの軌道投入後訓練
土井宇宙飛行士は、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)にて1J/A(STS-123)ミッションのクルーと共にスペースシャトルの軌道投入後訓練を行いました。
訓練を行う土井宇宙飛行士
スペースシャトルは打上げから約8分30秒後、軌道に投入されると、地球から宇宙へ行くための「輸送機」から、宇宙空間を旅する「宇宙船」になります。「宇宙船」で宇宙飛行士たちが必要な作業ができるよう、与圧服(オレンジスーツ)をクルーが協力して着替え、フライトデッキやミッドデッキの模様替えを行いながら生活環境を整えていきます。
訓練は、スペースシャトルのモックアップ(実物大模型)を使用して行われ、フライトデッキ、ミッドデッキにクルーがそれぞれ指定の座席につき、打上げから軌道投入後に行う一連の作業をタイムラインに沿って訓練しました。
野外リーダシップ(NOLS)訓練
星出宇宙飛行士は1J(STS-124)ミッションのクルーやNASAのフライトディレクタと共に、米国アラスカ州で野外リーダシップ(National Outdoor Leadership School: NOLS)訓練を実施しました。
NOLS訓練とは、宇宙滞在に似たストレス環境下で実施される訓練で、宇宙飛行で重要な自己管理やリーダシップ、フォロワーシップなどのチームワーク、状況に応じた判断方法などを理解・習得するための訓練です。
訓練中は、参加したメンバーの中で毎日リーダを交替し、全員で協力しながら野外生活を送りました。今回の訓練は、アラスカ州の海岸線で行われ、移動にはシーカヤックが使用されました。10日間にわたる訓練で、約80海里(約148km)を移動しました。参加したメンバーとの野外生活を送る合間、インストラクタからチームワークやリーダシップなどについての講義も行われました。
※ 星出宇宙飛行士が自ら綴るジャーナル"Tsukuba, Station, S/G1"にも訓練の様子が掲載されています。是非ご覧下さい。
NASA/JAXA合同シミュレーション(JMST)
訓練に参加する古川宇宙飛行士
「きぼう」日本実験棟の運用に向け、JAXAはNASAと実際の運用を模擬した合同シミュレーション(Joint Multi-Segment Training: JMST)を実施しています。
JMSTとは、NASAが国際宇宙ステーション(ISS)計画の国際パートナや遠隔地の管制施設と通信回線で接続して実施する運用シミュレーション訓練です。JAXAの運用管制員、NASAの飛行管制官は、協調運用に必要となる技術の向上を目的に訓練を行います。
訓練に参加する山崎宇宙飛行士
古川宇宙飛行士は、7月11日の訓練に軌道上のクルーとしてNASAジョンソン宇宙センター(JSC)から参加し、また山崎宇宙飛行士は7月27日の訓練に軌道上のクルーとの交信担当として筑波宇宙センター(TKSC)から訓練に参加しました。
訓練は、1J(STS-124)ミッション後の「きぼう」運用時に、異常や緊急事態が発生した際の対応について実施されました。古川、山崎両宇宙飛行士は、訓練を通して、異常や緊急事態発生時にどのような対処を運用管制員が行うのか、「きぼう」の運用についてさらに理解を深めました。
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