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アクエリアス滞在5日目(続編)。
昨日の緊急事態対処の続きです。かなり面白い訓練だったので、少し長くなりますが書きたいと思います。
午前中の急病人発生ケースについては無事解決し、ジェイムスが元気を取り戻しました。彼の迫真の演技は賞賛に値するでしょう。ケースクローズ後のアンケートに回答し、昼食をとり、再び手持ち無沙汰な状態に。
ネイトとジェイムスが何やらさっきからコソコソとウエットポーチと居住区を行ったり来たり。さらにはダイニングテーブル横の窓から外を見ると、ダイバーが2人、下を横切って行くのが見えました。船外活動の予定もないのにダイバーが辺りにいるとは、何やらただならぬ気配です。さすがに裏で何らかのシナリオが動いているのがバレバレです。
そして居住区の煙検知器の音が開演のベルになって、緊急事態第二幕の幕が上がりました。
ジェイムスが「電子レンジから大量の煙発生!」と叫んでます。どうやら彼が訓練の進行役を務めるようです。そら来たとばかりに、スティーブが電源コードを引っこ抜きます。
「煙は止まったけど、居住区には煙が充満している!」(以下、カッコ書きは進行役ジェイムスの声)
居住区に設置された棚の最上段に酸素マスクが備えられているのは、アクエリアス到着初日の安全ブリーフィングで教えられているので、みんなすぐに各自のマスクを装着します。
・・・ところが・・・。
いくら吸っても空気が来ません。
「空気が通ってない、さあどうする!?」
若干、意表をつかれたものの、これ以上居住区に留まっているのは危険なので、みんなでウエットポーチに移動します。ここにも酸素マスクがあるので、それを試してみるとここのは正常に空気が通っています。
「OK、これでとりあえずは酸素は確保した。これで君たちはひとまず安全だ。さあ居住区の中はまだ煙が充満しているぞ。こいつを換気してやらないと、中には戻れない。居住区の制御パネルには、空気を入れ替えるためのバルブがある。そいつを開けて、煙を追い出すんだ!」
・・・へえ、そうなの?どうやら習っていないことについては、適宜ヒントをくれるようです。それにしてもジェイムス、教官役が様になっています。彼はベテランのアクエリアス技術者なので、きっと新人技術者の訓練も担当しているに違いない。
「君たちが今、装着している酸素マスクのうちの1つは、他のマスクより長いホースが付いている。そのマスクなら、ここから居住区まで届くから、そいつがバルブを開けるんだ!」
そんなことは初耳な私たちは、慌てて自分のマスクのホースを手繰っていきます。1番ホースが長いのは・・・
私だ!ていうか、ぶっちぎり長い!!どうして今まで気が付かなかったんだろう。昔からクジ運悪かったのに、まさかこんなところで当たりクジを引くとは。
みんなの視線に後押しされて、居住区へ戻ります。でもバルブったって沢山ありすぎてどれがどれやら・・・
「そこのブローバルブってやつだ。それを回すんだ、違う!逆方向!」
もうこっちも必死です。けれども回しても回しても、うんともすんとも言いません。
「ブローバルブを開いたのに、空気が流れない。配管のどこかで空気が止まっているからだ。」
なるほど、そう考えると居住区の酸素マスクが働かなかったのも頷けます。
「君たちはそれを突き止めなければならない!幸い、そこの棚の中に配管の系統図がある!」
見るといつのまに仕込んでいたのか、不自然なくらいに棚からはみ出した一枚の紙が。それを手にして、ウエットポーチのみんなの所に戻ります。系統図を開いて、皆絶句・・・
それもそのはず、アクエリアス内の全てのバルブの配管が記された、まるで迷路(?)の地図のようです。
ウエットポーチには空気が通っていて、居住区には通ってないということは、その間のどこかで空気が止まっていることになります。皆で必死に系統図を追って、ひとまずウエットポーチ内のバルブを調べてみましたが、どれも開いていて問題なさそうです。そうすると・・・居住区の方か。
もう一度、私が居住区に戻って、ブローバルブの周辺を調べてみます。と、そこから下流にあるバルブが閉まっているではありませんか。
なんだ、こいつか!
なかなか手の込んだシナリオです。でも、それもこれで終わり・・・あれ?開いたけど何も??
「そいつは予備のバルブだ。そこも関係ないってことは、そこより上流で空気が止まってるってことだ」
・・・また系統図に逆戻りです。でも一通り目で確認できるバルブは全部確認しています。これ以上はどこを調べればいいんでしょう。私たちがそこで完全に止まっていると・・・。
「系統図のここに線が引かれているだろう。これがアクエリアスの外壁だ。つまりこの線より外側にあるバルブは、アクエリアスの外についているバルブだ。君たちはそのバルブはチェックしていない。」
そうか、そういうことか!道理で中では見つからないはずだ。でもどうやって、アクエリアスの外にあるバルブを開けに行くんでしょう。まさか、ここからウエットスーツに着替えて私たちが開けに行くのでしょうか。その私たちの心理を読んでいるかのように
「今、水上には"たまたま"我々の船が一隻待機している。彼らに頼むんだ!」
早速無線で交信してみると、本当に一隻いる!彼らにダイバーをサポートによこしてもらえるよう頼んで待つこと数分・・・
本当にウエットポーチ内にダイバーが2名、上がってくるではありませんか。そういえば、このシナリオが始まる前、窓から見えたダイバーは彼らだったのでしょうか。
とにかく状況を説明して外のバルブを開けるよう頼んで、さらに待つこと数分。
シュゴゴーーーーッ
大きな音を立てて、ブローバルブから大量の空気が居住区に流れ込むのが聞こえてきました。
終わった、今度こそ本当に。それにしても、何と手の込んだシナリオでしょう。まさかここまでやってくるとは。パイロット時代にも、これだけ大掛かりな訓練は受けたことがありません。恐るべしNASA・・・・・。
地上からモニターで観ていた担当者はさぞかし楽しんだに違いありません。
■NASAによるNEEMO15の写真はこちら
■アクエリアスのライブ映像はこちら(英語)
■大西宇宙飛行士が5日目の模様を記したNASAのブログはこちら(英語)
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