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宇宙実験サクッと解説:Medaka Osteoclast編
〜メダカが再び宇宙を泳ぐ〜


最終更新日:2012年08月21日

宇宙実験調査団のピカルがメダカ実験を大調査!
実験提案者の工藤先生とも仲良しの物知りハカセに聞きました。

物知りハカセ

ピカル

ピカル:

メダカの実験の話を聞くのを楽しみにしてたんですよ。ぼく、この夏からメダカを飼ってるんですけど、メダカって普通はどのくらい生きるんですか?

ハカセ:

ほう、ピカルはメダカを飼っておるのかね。メダカの寿命じゃが、野外だと1〜2年は生きると言われておる。ピカルのうちでもそのくらいじゃろうな。実験室だと、早く成長させるんで、1年くらいじゃな。実験室はいつも夏の気温に制御しておって、昼14時間−夜10時間の明暗のリズムで飼うことで、成長をそろえて早く成長するようにしておるようじゃ。

ピカル:

ふうん、1〜2年かあ。寂しいなあ。ペットショップでは、メダカは泳ぎが得意じゃないから、あんまり水流を激しくしないほうがいいよ、って言われました。

ハカセ:

その通り。水流が激しいとずっと泳がないといけないからメダカも疲れるんじゃろう。だから宇宙用の水槽ではゆっくりと水を流しておる。どのくらいかというと小川のせせらぎくらいの速度じゃ。それも餌を食べるときだけは止めてやるんじゃよ。

ピカル:

えーっ! ずいぶん過保護ですねえ! 宇宙では餌は何をやっているんですか?

ハカセ:

まあ普通の餌じゃ。メダカの成長に合わせて細かいつぶにした餌を、食べきれる量だけ、毎日決まった時間に水槽の下の部分からでてくるようにセットしてある。装置には地上から観察もできるカメラがついておるから、餌の食べ方や泳ぎ方をよく観察して、体調を調べるわけじゃな。

ピカル:

へえ〜。メダカも始終地上から見られて、落ち着かないでしょうねえ。そういえば、ペットショップのお姉さんが、「水は透明できれいに見えても実は汚れていることがあるから気をつけてね」と言っていたけど、宇宙で水の交換はするんですか?

ハカセ:

もちろん、水質のチェックや水の交換も予定されておる。メダカのフンもさることながら、水質が悪化すると我々でいえば空気が汚れるのと同じでメダカには致命的じゃ。宇宙の水槽には人工肺と呼ばれる酸素と二酸化炭素を交換する装置も付いておるし、バクテリアフィルターと呼ばれる水質維持を行う機械も装備されておる。日本の宇宙機関が総力を挙げて開発してきた、すごい装置なんじゃよ。そういえば、水棲生物実験装置が初めてスペースシャトルに搭載されてから2012年はちょうど20周年の記念すべき年なのじゃ。その間、徐々に改良を重ねて4回もスペースシャトルに搭載されたのじゃぞ。この写真は、今までにシャトルの水棲生物実験装置で飼育された生物じゃ。



左:コイ 中央:キンギョ 右:メダカ


左:イモリ 右:ガマアンコウ


ピカル:

「こうのとり」3号機で、国際宇宙ステーション用の水棲生物実験装置が打ち上がったので、また実験ができるようになったわけですね。でも上の写真をみて思ったんですけど、前にもメダカが宇宙に行ってますよね?その時と今回の実験の違いはなんですか?

ハカセ:

うむ、前の実験は、メダカが宇宙でも交尾・産卵できるか、ということに特化した実験じゃった。結果は、宇宙でも繁殖できるということが分かり、今も全国あちこちの博物館でそのときのメダカの子孫が泳いでおる。

ピカル:

あ、見たことあります。

ハカセ:

今回はな、メダカの骨に注目しておる。骨については、ピカルもFish Scalesで勉強したと思うが、宇宙飛行士が宇宙に行くと骨が弱くなってしまうことは覚えておるかの?地上での生活では骨は吸収と形成のバランスが保たれておるが、重力がないところだとバランスが崩れて骨が減ると考えられておるんじゃ。このバランスが崩れる原因として、骨を壊す細胞(Osteoclast)の働きが強まることが予想されておるんじゃが、これを詳しく調べるためにメダカの出番とあいなったわけじゃな。日本は宇宙でのメダカの飼育に関しては世界一だからのう。

ピカル:

ハカセ、メダカは水の中を泳いでいるけど、やっぱり重力のあるなしって、影響があるんですか? 水の中ってあんまり関係ない感じがするけど・・・。

ハカセ:

うむ、そんな感じもするじゃろうが、地球上では水中だって重力はある。魚にはうきぶくろがあるから、宇宙だとうきぶくろの形が変わったり、うきぶくろの近くの骨やら筋肉の具合も変わるじゃろうとも予想されておる。こうした変化が骨のバランスに影響している可能性も工藤先生たちは考えておるんじゃ。

ピカル:

なるほど・・・。

ハカセ:

実際、水中にいるメダカでも重力を余分にかけてやると骨を壊す細胞が活発になったという結果があるんじゃ。つまり、メダカの骨に重力のあるなしは関係あるわけじゃな。それから、骨を作る細胞と壊す細胞が光るメダカも連れて行くことになっておる。生きた状態で、骨を作る細胞と壊す細胞がどんなふうに働いているかを顕微鏡を使って調べることもできるんじゃよ。

ピカル:

へえ〜、すごいですね! これで、骨のことが詳しくわかると、宇宙飛行士の健康に役立ちますね。

ハカセ:

宇宙飛行士だけじゃないぞ。地上にいても、運動できない状態にいると骨が弱っていくこともある。骨粗鬆症という病気もあるしのう。この研究は地上でみんなの健康にも役立つわけじゃ。

ピカル:

ハカセ、よくわかりました。今度の研究で、丈夫な骨をもつ魚が宇宙で元気に育つことができるようになれば、もしかして遠い将来は「宇宙で魚を養殖して食べる」なんてこともできるかなあ?

ハカセ:

う〜む、そんなこともできるかも知れんぞ。はやくそういう時代がくるといいのう。

ピカル:

ほんとに楽しみですね! ハカセ、今日はどうもありがとうございました!


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