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宇宙実験調査団のピカルがウロコの実験を大調査!

実験提案者の鈴木先生とも
仲良しの物知りハカセに聞きました。

ピカル:

こんにちは、ハカセ。 今日はFish Scales(フィッシュ・スケールズ=サカナのウロコ)実験について勉強しにきました。 この実験では、宇宙で骨がもろくなる原因をさぐるために、骨芽細胞(こつがさいぼう)と破骨細胞(はこつさいぼう)について調べるって聞いたんですけど、これってどういう細胞なんですか?

ハカセ:

うむ、骨は硬(かた)い硬い構造じゃが、中にはたくさんの細胞があって、常に古い骨を新しい骨に置き換える仕事をしておる。 この細胞の中でも主役級の細胞が、骨を壊す役割の破骨細胞と、骨を作る役割の骨芽細胞じゃ。 大人になっても骨は常に新しく作り替えられることがわかっておっての、この仕組みのバランスが崩れたら、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など、骨の病気になることも知られておる。

それから、実はもうひとつ大事な仕事がある。 骨にはカルシウムがたくさん含まれていることは知っとるな? しかし実は、血液の中にもカルシウムが結構あって、これがまた大事な役割をしておる。 しかも、血液中のカルシウム濃度が多すぎても少なすぎても身体に変調をきたすので、濃度を一定の値(1リットルあたり0.1g)に保っておく必要があるんじゃ。 それでの、ヒトは、骨のカルシウムを使って、血液中のカルシウム濃度を調節しておる。 このように、骨芽細胞は骨を作る細胞、破骨細胞は骨を壊す細胞じゃが、同時に血液中のカルシウム濃度を調節するうえでも、とても重要な役割を果たしておるわけじゃよ。


正常な状態では、骨芽細胞を通して骨に吸収されるカルシウム量と、破骨細胞を通して骨から放出されるカルシウム量のバランスがとれている。 しかし、微小重力環境下では、骨芽細胞の活性が抑えられ、逆に破骨細胞が活性化するため、骨から放出されるカルシウム量が増加して、骨粗鬆症などの骨の異常が起きる。

ピカル:

なるほど。 骨を作る細胞と壊す細胞の両方から、骨量低下の仕組みを調べようってことなんですね。 ところでハカセ、すごく初歩的な質問なんですが、宇宙に行くとなぜ骨がもろくなるんですか?

ハカセ:

うむ、ピカルよ、それは初歩的じゃが、大切な質問じゃぞ。 骨芽細胞には、本来、重力の刺激や運動などによる負荷を受けると活性化し、同時に、破骨細胞の活性を抑制して骨を強くする働きがあるんじゃ。 従って、地上では地球の重力があるから、特段、異常は現れないんじゃが、宇宙空間ではふわふわと浮くことからもわかるように、重力の影響がほとんどないんじゃ。 それで、重力による刺激がないからの、骨芽細胞の活性が低下して骨が弱くなると考えられておる。

ピカル:

へえ〜、そういうことなんですか。 ところで、この実験では確か、キンギョのウロコを使うんですよね。 魚のウロコ(fish scales)とヒトの骨では、別物のような気がするんですけど・・・。

ハカセ:

確かに、見た目はまったく違うのう。 しかし、骨もウロコもよく似た成分でできているし、実は細胞の種類(骨芽細胞、破骨細胞)も同じなんじゃ。 ヒトの骨も魚のウロコも、元をたどれば「かっちゅう魚」という原始的な魚の、甲皮(ヨロイのようなもの)から発生したものなんじゃ。

ピカル:

ふ〜ん、ヒトも魚も祖先は同じってことか。 あれ? じゃあ、僕が泳げないのはどうしてだろう・・・。 ま、それはいいとして、実験にはどんなキンギョを使うんですか? 縁日(えんにち)の金魚すくいで見かけるのと同じですか?

ハカセ:

実験には、奈良県の大和郡山(やまとこおりやま)の生産者が、長年にわたる品種改良の末に完成させたアカワキン(別名ヤマト)というキンギョを使う。 このキンギョは丈夫なうえ、ほぼ同じ大きさ、色、形のものが年間を通して手に入るので、実験動物として非常に優れておる。 しかも、キンギョ1匹から100枚以上のウロコがとれるので、一度にいろんな実験ができるんじゃ。

ピカル:

100枚も!? そんなにウロコをとられたら、痛いですよね、きっと・・・。

ハカセ:

ウロコをとるときは、必ず麻酔してキンギョを眠らせるから、痛みを感じることはないはずじゃ。 魚専用の麻酔薬があるからの、心配はいらんぞ。

ピカル:

それを聞いて安心しました! ところで、キンギョのウロコは、どうやって宇宙に持っていくんですか。

ハカセ:

キンギョから抜きとったウロコを殺菌し、それを細胞培養液に浸した後、専用容器に詰めて宇宙に打ち上げるんじゃ。 さっきも言ったように、ウロコには骨芽細胞と破骨細胞があって、ウロコを作ったり壊したりしておる。 培養液に入れておけば、これらの細胞が生き続けられるんじゃ。 キンギョは冷たい水の中でも生存可能じゃから、ウロコも冷蔵した状態でNASAに輸送し、シャトルに積み込むことにしておる。 冷蔵しておけば、10日間は保存可能じゃからの。

ピカル:

ハカセ、だんだん疑問が湧いてきたんですけど、なぜキンギョそのものを打ち上げないのですか? ウロコだけより、キンギョをまるごと宇宙に連れていった方がよさそうだけど・・・。

ハカセ:

実は以前、キンギョを宇宙に打ち上げて実験した例はある。 この時は、キンギョ自体への微小重力の影響を調べた。 しかし現在、スペースシャトルや宇宙ステーションには、キンギョを飼育できる装置がないんじゃ。 それに、この実験は、ウロコを形成する細胞が宇宙空間でどう変化するかを調べることが目的なので、ウロコを打ち上げるだけで十分なのじゃ。

ピカル:

そうなんですか。 ところでハカセ、実験では「ウロコを強くする薬」を使うそうですけど、ヒトにも効くのですか?

ハカセ:

鈴木先生たちが開発した薬は、ウロコだけでなく、ヒトのモデル生物のラットにも効果が認められておる。 さらに、この薬には毒性がないうえに、副作用も少ないと考えられておるから、宇宙で生じる骨の病気の特効薬になるかもしれんのう。

ピカル:

その薬は地上でも使えるんでしょうか。 たとえば、骨折したヒトや寝たきりのヒトを治したりとか。

ハカセ:

さすがピカル、目の付け所が鋭いの。 実は今、骨を折ったラットを使って、この薬の効果を確認しているところじゃ。 ラットで効果が認められれば、ヒトにも適用できる可能性が高いじゃろうな。

ピカル:

すごい! Fish Scalesってキンギョのウロコの実験だけど、実は僕らの生活に深く関わっているものなんですね。 どんな実験成果がでてくるのか、とっても楽しみです。 ハカセ、今日はどうもありがとうございました。


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