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コラム ―宇宙開発の現場から―

コラム―宇宙開発の現場から―
【紀さんの宇宙あれこれ】 Vol.9 アンタレスロケットとシグナス宇宙船
前回の号外で系外惑星ケプラー22bを紹介しましたが、NASAはその直後に系外惑星ケプラー20eとケプラー20fを発表しました。どちらも岩石型惑星でその大きさが地球直径の0.87倍、1.03倍と地球とほぼ同じ大きさです。
でもこの二つは恒星(いわゆる太陽)に近く、ケプラー20eは公転周期が6日で回るほど近いので表面温度は約800℃もあるそうです。ちょっと地球型生命の存在は難しいかもしれませんね。しかし1月12日ネイチャーに発表された論文では、銀河系にある恒星は1個以上惑星を持っているらしく、その系外惑星はサイズが小さいのでまだ発見されにくいのですが、木星などより小さい地球サイズの方が多いのではないかということです。これらの小さい系外惑星を観測できる観測技術のブレークスルーを期待したいですね。


ケプラー20e、ケプラー20fと金星、地球との大きさの比較。
ネイチャーに発表された銀河系の小型系外惑星の分布イメージ図。


今回は スペースシャトル引退後、米国の民間企業でスペースX社のファルコン9とドラゴン補給船と同じく、ISSへ物質を輸送するために開発されているアンタレスロケットとカプセル型宇宙船シグナスのお話をします。
タイトルの「アンタレス」は昨年12月12日、トーラスⅡからかわりました。初テストフライトが近づいたので改名されたのかもしれません。
先ずは、アンタレスとシグナスを開発している企業オービタル・サイエンシズ(Orbital Sciences Corporation、OSC、またはOrbital)を紹介します。
OSCは人工衛星の製造、ロケットの製造、打ち上げを行うアメリカ合衆国の企業で、バージニア州のダレスに本社があります。以前はORBIMAGE(現GeoEye)とGPSレシーバーのMagellan lineを所有していましたが、タレス・グループ(Thales Group)に売却しています。
1982年に設立され、低軌道、静止軌道そして惑星探査の人工衛星開発や打上ロケット、X-34再使用型宇宙往還機などの宇宙実験機、中止になりましたNASAコンステレーション計画のオリオンカプセルの打上緊急脱出システム、ミサイルと標的ミサイルなどと幅広く宇宙分野の開発製造を行っています。
打上ロケットは、中型衛星打上げ用までを製造しており、固体燃料のミノタロスシリーズ、4段式の個体燃料のトーラス、ペガサス、アンタレスがあります。
特にペガサスは1990年初めて実用化された空中発射打上システムとして有名です。
実は、昨年12月13日に、このペガサスの超大型版の「ストラトローンチ・システムズ」が発表されました。詳しくは次回ご紹介します。


ロッキードL-1011を改造したスターゲイザーの腹に装着されて発射へ向かうペガサスロケット。
 
2011年12月13日、米マイクロソフト共同創業者ポール・アレン氏が発表したペガサスの超大型版の「ストラトローンチ」の機体(翼長116m)


米国バージニア州ワロップスアイランド射場から打上げられたアンタレスロケットの想像図。
NASAステニス宇宙センター、E-1地上燃焼スタンドへ取り付け作業中のAJ-26エンジン
2008年に、OSCはNASAとの商業軌道輸送サービス(COTS)契約に基づきシグナス補給船を開発しています。これはスペースX社のドラゴン補給船と同じ形態の開発パターンです。OSCは自社の開発実績をベースに外部の導入可能な技術を積極的に組合せ、アンタレスロケットとシグナス補給船を開発しています。
アンタレスはさそり座の1等星の名前で、OSC社のロケットの名前は、ペガサス、トーラス、ミノタロスとギリシャ神話の天体の名前シリーズなっているようです。アンタレスロケットは第1段液体燃料、第2段は固体燃料の2段式ロケットです。
第1段エンジンは、Vol.5でお話した、旧ソ連が有人月飛行を目的として開発していた、N1ロケット用の第1段エンジンNK-33を米国エアロジェット社が購入し電装系等の改修を行ったAJ26-62エンジンを2基使用し、第1段タンクはウクライナのゼニットロケット第1段タンクの全長を短縮したものが用いられています。

第2段はATK(アライアント・テクシステム)ランチ・システムズ・グループがキャスター120の長さを短くして新規開発したキャスター30を採用しています。また、拡張型第2段として2011年4月に、キャスター30の性能向上型であるキャスター30XLを採用する方針になっています。
余談になりますが、ATKはやはりVol.5で紹介した「リバティ」ロケットの固体ロケット製造メーカで、以前はサイオコール(またはチオコール)社、モートン・サイオコール社、そしてATK社と社名は変わりましたが、日本とも関係が深い世界最大の固体ロケットメーカーです。
同社は、NASDA(JAXAの前身)が約35年前N-Ⅰロケット開発時代、固体補助ロケット(SOB:キャスターⅡ)をライセンス生産した会社で、固体推進薬の直填製造方式や品質管理で我が国の固体ロケット開発にも貢献がありました。またH-ⅡAロケットの固体補助ロケット(SSB:キャスターⅣA-XL)もATKから輸入しており、最近まで関係がありました。
アンタレスは全長40.5m、直径3.9mで、打上げ総質量は290トン、打上げ能力は地球低軌道(LEO)に4,200kg、静止トランスファー軌道(GTO)へ2,400kgで、ISS軌道は約5トンです。

シグナスはサービスモジュール(SM)と与圧貨物モジュール(PCM)で構成されている宇宙補給船です。各部に国内外の既存の技術を活用したシステム構成をして開発リスクをおさえ、低コストかつ高信頼性を狙っています。具体的には次の通りです。


国際宇宙ステーション(ISS)へ近づくシグネス無人宇宙船
 
国際宇宙ステーション(ISS)のノード2(ハーモニー)へISSカナダアームで結合されたシグナス。本図は地球側から見た説明図でハーモニーを介して「きぼう」の反対側にESAのコロンバス、直角に米国のデスティニー、その先にノード1(ユ二ティ)、それにノード3が結合していて地球側にキューポラが見える。


サービスモジュール(SM)は OSCの静止衛星用の衛星バスシステムSTAR Busの推進系や電源系、アビオニクスはSTAR Busを改修して用いた小惑星探査機ドーンのを流用しています。ISSとのランデブー・ドッキングに使用する近傍通信システム(PROX:三菱電機製)は日本の「こうのとり」(HTV)に使われたシステムが採用されています。
また、与圧貨物モジュールはNASAがISSへのスペースシャトルに搭載して物資輸送用にに使った多目的補給モジュールを製造した欧州のタレス・アレ-ニア・スペースのイタリア工場が開発・製造しています。


写真左がCOTS契約のサービスモジュール(SM)、右がCRS契約の8つのサービスモジュール(SM)の最初のもので、いずれもOSCのダレスの工場で組立て中、2012年後半打ち上げ予定。
 
イタリアのタレス・アレーニアの工場で整備中のCOTS契約の与圧貨物モジュール(PCM)。


シグナスの諸元は、直径3.07mで、長さは3.07m(4.86m)あり、自重1,500kg(1,800kg)が搭載質量は2,000kg(2,700kg)で、廃棄質量は1,200kgです。カッコ内の数値は増強型になった時の値です。

NASAとの商業軌道輸送サービス(COTS)契約で開発されてきたシグナスは初号機の模擬宇宙船の後、1機を打上げ、3号機から商業補給サービス(CRS)契約の合計8機の打上が2015年まで予定されています。4号機から能力増強型になり合計約20トンをISSへ物資を運ぶ計画になっています。
非与圧型モジュールや回収型モジュールの構想はあるようですが開発はされてなく、現時点ではシグナスは、回収型のドラゴン補給船と違い「こうのとり」(HTV)と同じ無人非回収タイプで開発されています。
このように見てきますと、OSCのアンタレスとシグナスは国内外を問わず、シムテムに適する実績のあるサブシステムを組合せて、信頼性向上と低コストを図って開発されていることがわかると思います。初打上げは昨年10月から何回か延期され、この2月の予定も4月へ延期されました。ともかく失敗しないように周到な準備をして打ち上げてほしいものです。
次回は空中発射システムを中心にお話をしようと思います。(続)
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