おしえて!金井宇宙飛行士
金井宇宙飛行士は、168日間の長期滞在ミッションの映像を見ていただきながら会場のみなさんにミッションの模様を説明しました。
ソユーズ宇宙船の打上げからISSに到着するまで、長期滞在中に実施した各種実験、ドラゴン補給船運用14号機のキャプチャ、船外活動など滞在中のさまざまなミッション、また、ソユーズ宇宙船の帰還と地上に戻ってきた時の感想などを語りました。
ISS長期滞在の説明の後、金井宇宙飛行士は、会場の参加者からの質問に答えました。参加者と金井宇宙飛行士の対話の一部を要約してご紹介します。
Q:長期滞在中に楽しかったことは?
A:毎週土曜日の夜、クルー全員で映画を観ていたこと。クルーの間では「Movie Night」と呼んでいました。
Q:宇宙での生活で困ったことは?
A:宇宙に行く前は例えば寝られるかな?とか思っていたけれど、地上と変わりなく普通すぎることに驚きました。
Q:美味しかった宇宙食は?
A:宇宙日本食のご飯、山菜おこわ、おにぎり鮭、赤飯など、美味しかったです。
Q:宇宙の匂いは?
A:船外活動を行ってISS船内に戻ってきたときに、金属が焼けたような匂いがしました。
Q:お風呂は恋しかった?
A:ISS内にはシャワーもお風呂もありません。船内は湿気がないので、あまり汗もかきません。タオルに石鹸がしみついていて、水をしみこませて体を拭きます。あまり不自由しませんでした。
「W大地フライトディレクタが教える管制官の裏話」
金井宇宙飛行士のISS長期滞在を地上から支えた佐孝大地、中村大地フライトディレクタより、管制官の仕事や金井宇宙飛行士ミッション時の裏話などのお話がありました。
管制官のお仕事
たくさんの訓練や試験(筆記、シミュレーション)、面接を経て、管制官になります。試験最後のシミュレーション訓練は、「きぼう」でのトラブル(空気漏れ、有毒ガス、火災など)を想定した長時間(6時間など)にわたることなどのお話がありました。また、管制官に向いている性格として、責任感のある人、前向きな人、諦めない人を挙げました。
「将来、管制官になりたいが判断に迷うときなど、何を基準としているのか?」の質問には、優先順位をあげていき、その内容から選択し絞っていくと説明(第一に宇宙飛行士は安全なのか? ISSや「きぼう」の安全状態など)するなど、会場のみなさんとの質問コーナーを行い、最後にはスペシャルゲストとして金井宇宙飛行士が登壇し会場を驚かせていました。
ISSと「きぼう」利用の将来を本気で考える大人のためのトークショー
「きぼう」利用の重点テーマである4つのプラットフォーム(加齢研究、創薬支援、船外ポート利用、超小型衛星放出)の活用を通じた「きぼう」利用の未来を真面目に考える、大人のためのトークショーが開催されました。
有人宇宙技術部門きぼう利用センター 坂下哲也技術領域主幹の進行により、有人宇宙技術部門きぼう利用センター 小川志保センター長の「きぼう」10周年を振り返っての挨拶から始まりました。「きぼう」で一番最初に行った実験は、「マランゴニ対流」実験でした。
8月22日は記念すべき「きぼう」実験最初の日としてメディアに公開することもあって、絶対に失敗はできないという状況の中でした。そのため、メディアが来る前に入念な予習を行い、いろいろな事態に備える検討を行ないましたが、リスク対策がとても重要であることを再認識しました。そして、微小重力がもたらす自然現象への影響を把握する科学実験に加え、社会生活への還元・国際貢献などの利用も広がりつつあり、宇宙での成果を科学、健康長寿に活かしていきたいとのお話がありました。
(1)「マランゴニ対流実験について」 公立諏訪東京理科大学 河村洋学長 1993年8月に実験テーマが採択されてから2008年8月の実験開始までの先陣としての苦労が語られました。 実験テーマ提案から実際に宇宙で実験を行うまでに15年間かかり、その間、約100人の学生が研究を引き継いできたことや、科学チーム、運用チーム、宇宙飛行士それぞれが高いモチベーションを持って相互理解し協力することで価値ある実験ができたことが伝えられました。
(2)「氷の結晶成長実験」 有人宇宙技術部門きぼう利用センター 吉崎泉技術領域主幹 マランゴニ対流実験に続く「きぼう」での2番目の実験となった「氷の結晶成長実験」について解説が行われました。微小重力下では形の整った氷結晶を生成できますので、さまざまな温度で繰り返しデータを取得することで、理論の検証をすることができました。新しく判明した事実を含め、複数の科学論文を発表したことを説明しました。 吉崎技術領域主幹は現在、「きぼう」で行われている「高品質タンパク質結晶生成実験」を担当していますが、この10年間で10件のタンパク質構造を初めて明らかにしたことや、民間企業との有償利用契約を締結したこと、60件以上の査読論文が発表されたことなどについて説明しました。
(3)「微小重力実験の歴史」 有人宇宙技術部門きぼう利用センター 中村裕広技術領域主幹 中村技術領域主幹自身が携わった小型ロケットによる短時間の微小重力実験から、エンジンの燃費改善につながると期待される液滴燃焼実験、新材料の設計のための物質の物性を把握する静電浮遊炉実験、宇宙実験実施までのNASAとの調整に苦労した裏話や、微小重力下での様々な物質挙動を把握することで将来的に機械学習による材料設計へ貢献することについて説明しました。また、実験を自律化・自動化し試料回収まで無人化を目指していくことについても言及しました。
(4)「将来の宇宙実験」 有人宇宙技術部門きぼう利用センターきぼう利用企画グループ 白川正輝グループ長 1980年代から現在の宇宙実験の状況や、最近の宇宙でのマウス飼育によって得られた成果などを説明しました。 最後に、本トークショーのまとめとして、過去の宇宙実験では宇宙で出来たものを持ち帰るという考えから、現在は宇宙から持ち帰るのは実験で得られた知識や経験であると目的が変わってきており、宇宙へ行った人の経験を地上の人たちと共有することが重要との意見が河村学長からありました。
本日のみ特別公開!宇宙探査の最新情報を見に行こう!
将来の国際宇宙探査に向けた全体構想、ロボットや宇宙服などの個別研究、さらに普段非公開の「きぼう」船内実験室と船外実験プラットフォームのエンジニアリングモデルやInt-Ballも公開され、JAXA職員による解説が行われました。
「きぼう」での実験や宇宙日本食など、有人宇宙技術関連のイベント
そのほか、祝「きぼう利用」10周年!~宇宙実験ってなにするの?~、きぼう10周年!ISS・きぼうの組立を3D映像で体感、「こうのとり」7号機の打上げで話題になった「小型回収カプセル」の回収技術紹介、宇宙日本食を実際に製造する企業5社が、宇宙日本食の魅力をお伝えする「食品メーカに聞く!"宇宙日本食"の現場」など、たくさんのイベントがWエリアで開催されました。「きぼう」での実験や、有人宇宙技術について担当のJAXA職員から詳しい説明が聞ける貴重な機会となりました。
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