第５章　写真を使って研究をしてみよう。

第５章　写真を使って研究をしてみよう。

ここでは、スペースシャトルから撮影した地球の写真を利用し、3つのステップで研究を進めていきます。

5.1　準備

　シャトルから撮した地球の写真を探しましょう！: 　まず、Web上に掲載されているシャトルから撮した写真の中で、生徒さんが興味をもった写真を探してダウンロードしましょう。
（写真から何が見えるだろうの項の【Try more!発展学習】を参考にして下さい。）

　ここでは、「EarthKAM DatasystemのEarthKAM's Top 10!」からダウンロードしたオーストラリアの北東の海岸の写真を使って、何が見えるのか調べていきます。

　用意する物

地図（より詳細なものが良い）
物差し
計算機
OHP用紙（透明のスライド）とマーカー
分度器
虫眼鏡

5.2　研究

　Step １　写真を眺めて興味をえましょう: 　まず、写真を眺めてみます。島、海岸、山、海、川などが見えます。その他にも何か特徴がありますか？色は何色ですか？次にもっともっと近寄って眺めてみます。道や、ビル、都市、橋、農業地帯など、人間が存在している印は見えますか？川の上流はどこになるのでしょう？
　写真でなにが見えたか、特徴のある形やパターン、不思議な形をしているもの、写真をみて思った疑問等をノートに書き出してみて下さい。

STS086_08023638.jpg

　Step ２　写真の情報を得ましょう: 　写真に付属した情報を調べましょう。 EarthKAM　datasystemのDetailed Catalog Informationをみると、この写真の場所、緯度経度、北の方角、撮影日、写真の大きさ等がわかります。生徒さんが選んだ写真について、ホームページから引き出せる情報をノートに書き出しましょう。

　また、写真にはどのくらい小さい物まで見分けられるでしょうか。写真が、どのくらいの範囲を撮影しているのか計算してみましょう。この地図の１ピクセルはだいたい70mx70m（サッカー場くらい）です。人や車や建物は識別できませんが、公園や、都市、空港なら見ることができます。

　次に、この場所を詳細な地図でみてみましょう。EarthKAM　datasystemによると、この写真の中心の緯度と経緯は南緯21.42度、東経149.32度です。地図で写真に撮された範囲を確認し、近くにある都市の名前、島の名前、山の高度、北の方向等、得られる情報を引き出しましょう。

　また、地図には海岸に沿ってグレートバリアリーフがあることがわかりますが、この写真からは確認できません。海岸からもっと離れたところにあるのでしょうか？リーフが深いところにあってシャトルからは見えないのでしょうか？

　写真の上に、透明なシートを載せて、今までに調べた特徴をマークして、その注釈、コメントや質問を記録しましょう。

　Step ３　もっと深く調べてみよう: 　Step 1、2を通じて、好奇心をそそる地域について、色々な見地から調べてみたいという探求心をもったのではないでしょうか。研究項目は無限に存在します。

　ここのステップでは、今まで例にしてきた写真について、参考に2、3の研究項目を紹介します。使用する写真や、研究の内容は、先生ご自身で決めて下さい。楽しみはそこから始まります。

　　(１) 写真にグレートバリアリーフは見えますか？: 　写真をみてグレートバリアリーフを探そうとしますが、写真にはそれを見つけることはできません。この答えを得るために、地図を使って研究してみます。

　グレートバリアリーフの一部と思われる2つの特徴がこの写真にみられます。2つの島とその近くの水の中に丸い形があります。両方とも、珊瑚礁だと思いますか？なぜ、そう思いますか？またはなぜそう思わないのですか？

　2つの島は、たんに海岸の一部で海抜より高い場所にあるか、壊れた珊瑚が集まってできたと思われます（この様な島を岩礁といいます）。岩礁は比較的平坦で、色はライトブルーだったり白かったりします。対照的に、前者はでこぼこしていて、草木が密集して生えていたりします。2つの島はどちらだと思いますか？

　水の中の丸い形は、珊瑚礁の表面か、島のまわりの海流が描き出した形と思われます。どちらだと思いますか？また、写真の中にこれを解決するための証拠が他にみられますか？

　　(２) グレートバリアリーフって何？: 　この答えは写真から探し出すことができませんので、地球科学、生物学、海洋学の本や、ホームページなどの、他の情報源で調べて見ましょう。

　グレートバリアリーフはとても大きな珊瑚礁です。珊瑚礁はサンゴ虫の石灰質骨格と石灰藻が何千年にもわたって堆積してできたものです。珊瑚礁は成長を続け、様々な魚や他の海の生物にとっての豊かな家にもなっています。

　さらに進んだ研究として、珊瑚礁の島はどの様にしてできたのか、また珊瑚が海面下でのみ成長するとしたら珊瑚の島はどのように形成されたのか等を調べてみましょう。

　　(３) なぜ、グレートバリアリーフがここで形成されたのでしょうか。: 　グレートバリアリーフは世界で最も大きな珊瑚礁で、オーストリア北東の海岸にそって長さ2,000kmにおよびます。ここは珊瑚の形成に理想の環境なのです。
　珊瑚の形成にとって良い環境は以下の通りです。

　　a:水温が温かい（17度以下に下がらない）
　　b:水深が浅いこと（30mかそれ以下）

　ここが珊瑚の形成の理想的な環境であるのは、この海岸地帯とオーストリアの地質学の歴史のどんな要因によってなのでしょうか。

　　(４) 他のEarthKAMの写真では珊瑚礁を見ることができるでしょうか。: 　もし、珊瑚礁のいい資料を探すのならば、地上でとった写真を見るとよいでしょう（または、低空飛行している飛行機からとった写真）。また、珊瑚礁はEarthKAMの写真の中にも見ることができるでしょうか。
　EarthKAM Datasystemでサーチして探してみましょう。グレートバリアリーフだけでなく、他の珊瑚礁のある地域もサーチしてみましょう。

このほかにもたくさんの研究項目例があります。

・	1997年9月に起こったインドネシアの火事（STS-86.ESC.00215343 to 00215750）　なぜここで火事がおこったのでしょう。なぜ、火事が広がったのでしょう。火事の原因は？
・	アルゼンチンのブレノスアイレス（STS-089.ESC.07154137）　なぜここにこの都市があるのでしょうか。川の片側にはなぜ都市がないのでしょうか。なぜ川は変わった色をしているのでしょう。
・	森林伐採（STS-081.ESC.0292730、STS-86.ESC.01083811、etc.）　人類にとって熱帯雨林はどんなインパクトをもつのでしょう。どのくらい破壊されているのでしょう。なぜ、森林伐採が行われているのでしょう。伐採された地域では何が行われているのでしょう。
・	南アフリカの少数民族居住地域（STS-86.ESC.08101513）　なぜ、少数民族居住地域がそこにあるのだろう。少数民族居住地域の状態は？
・	海岸線（STS-86.ESC.00215737、STS-89.ESC.01005738、etc.）　海岸線の形は、何が影響しているのでしょう。違う海洋の海岸線とどの様にちがうのでしょう。なぜ、雲は海岸にそってできるのでしょう。

最終更新日：1999年 7月 6日