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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳)

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2003年6月25日午前2時00分(日本時間)

記者会見要旨

ハロルド・ゲーマン委員長

ワシントンD.C.への引越が完了し、現在、CAIBの作業は、殆どのメンバーがワシントンD.C.で行っている。ヒューストンで、いくつかの作業が残っている。たとえば故障の木解析(FTA)のクローズのためにNASAとの共同解析を行っている。
現在、報告書の作成が作業の焦点である。
調査内容の記録やデータベースについて議会がアクセスする件については、先週から議会スタッフが毎日訪問し、私たちのデータベースのインデックスなどを閲覧する作業がルーチン化している。
報告書作成に関して、個々のメンバーが提出した問題点を委員会として適正に識別し、まとめる形をとっている。あと一ヶ月間(7月最終週)、報告書作成のためCAIBの見解をまとめる努力をする。

ステファン・ターコット委員(グループ1)

グループ1は、材料と保守の担当だ。引き続きNASAからの情報のまとめを行っており、現在残っている10アイテムの質問事項についてはもうすぐ完了する予定で、報告書のまとめを引き続き行っている。

ケネディ宇宙センター(KSC)の各施設に派遣した人材の殆どを撤収させたが、ヒューストンにはまだ数名残っている。今後2週間程の活動の焦点は、要求した情報を回収し、報告書をまとめるということだ。

私からは以上。

スティーブン・ワレス委員(グループ2)

グループ2は、運営と訓練の担当で、ケネス・ヘス氏、サリー・ライド氏が担当している。

今、報告書の作成に一生懸命取りかかっており、様々な調査をまとめている中で、各グループの作業の中でいかに重複している部分が多いかを実感しながら、個々の調査結果を一貫したものにしようとしている。断熱材が良い例だが、誰もが何らかの形で断熱材の調査に関わっている状態だ。

例えば、ターコット氏(グループ1)はハードウエア面で設計などを調査し、テトラウト氏(グループ3)は断熱材の試験を担当している。私たちは人的側面、つまりフライト前審査での過去のフライトの異常事象に対する意思決定について調査している。

グループ2については以上だ。

ハロルド・ゲーマン委員長: フライトの再開について話して欲しい。

了解。フライトの再開については、いくつかの問題があり、再開のための勧告がなされる。すでにいくつか勧告済みであり、今後も出る予定。我々の勧告の多くが、NASAの尽力と非常に近い方向性にあることは当然の事だろう。NASAと競争して新しい提案をしようとしている訳ではないが、NASAとは違った提案もいくつかある。
特に、近日中に出そうと思っている提案には、現在NASAが動いている、軌道上あるいはISSでの耐熱システムの検査と修理関連のものだ。種々の異なったミッションにおいて、シャトルが運用される様々な環境下での要件などの細かい点について考慮している。

我々は、事故の原因と考えられる不具合の可能性を出来るだけ最小限に抑えることだけでなく、オービタが損傷に耐えられるようにするか、修理ができるようにするという両面から全体的なミッションの安全性を向上させていこうとしている。

ロジャー・テトラウト委員(グループ3)

私はグループ3を代表している。この技術系グループは5名で構成されている。
ダグラス・オシャロフ氏は、最終報告書の仕上げにとりかかっており、特に外部燃料タンクおよび外部タンクの断熱材、そして断熱材(脱落に関する)実験に焦点を当てている。

シェイラ・ウィドナール氏は、空気力学実験および熱力学実験について最終レビューとりまとめをしている。今度の木曜日にNASAのJSCで行われることになっているのは、円形の穴と熱力学(高温ガス侵入)の関係についてのレビューだ。私も彼女と一緒にその会議に出席する予定だ。

また、7月2日にもNASAとの会議が予定されており、これがJSCでの最後の会議となる。そこでは空気力学および熱力学的な視点から、スロット(隙間と高温ガス侵入の関係)についてレビューする。これは、T-シールに隙間があった場合の状況を模擬している。

ジェームス・ハロック氏は、水曜日にJSCに戻り故障の木解析(FTA)の終了を進める。そのひとつがCAIBとNASAの事故シナリオの共同解析である。

スコット・ハバード氏は、会見後ここにとどまり、皆さんに断熱材の衝撃に関する実験などについて説明する。最終報告の前に終了しなければならないものである。

私は、KSCにあるデブリの解析を進めている。現在進行中なのは、JSCで行われているアークジェット実験である。これは、RCCパネル8と9の部分にできたナイフ刃状(Knife Edges)の変形を再現しようとするものだ。

デブリについてのKSCにおける全ての仕事を終了した。みなさんご存じの通り、KSCにはふたりのレジデントがいた。このふたりは任務を解かれた。その後、ひとりいた現場調査官も役務を解かれ、報告書の編集支援のためJSCに戻った。

基本的に、KSCでのデブリに関する全ての業務を完了した。そして、現時点ではKSCにレジデントはおらず、誰かが戻る予定もない。

ここで、回収されたデブリから判明したことをまとめる。
まず、1番目のチャートを使って問題点や発見したものをまとめていく。

・ まず、チャートの最初の3つの項目について。デブリに関して分かったことは、多くのデブリが未回収であったことだ。特に、8番から10番パネルのスパナー・ビームが未回収であった。スパナー・ビームはニッケルが多く含まれているインコネル素材からできている。
・ 早い時期に失われたパネル8及び9は最も西側で発見され、このことからパネル8、9の位置に亀裂が生じ翼内を燃やしたことを示している。
・ また、8番から10番パネルの翼桁取付金具(spar fitting)がなかった。これは、翼桁にRCCパネルを取り付ける金具で、ステンレス製である。
・ 8番から10番パネルの下部RCCについては、燃え尽きたために、いかなる破片も発見することはできなかった。

このように多くのデブリが不足していること自体、それが、その場所に問題があったという決定要素にはならない。破片は地上に落下して、私たちの捜索で発見されなかっただけかもしれない。しかし、特にその場所の破片が多く不足している点について、個人的には、8番から10番パネルに問題があったのではないかと考えている。

そして、これらのデブリの多く、特にこれらの場所からのスパナー・ビームとスパー金具は、焼き尽くされた可能性が高い。機体の大気圏再突入時にこれらの見つかっていないデブリが焼き尽くされたということを示す証拠もある。

このチャートは左翼で見つかったタイルを示している。
パネル8と9の後方にある濃い赤色で示すタイルは最も西側で見つかったタイルである。このことからおそらくタイル8、9の周辺で亀裂が生じ、そこから高熱ガスが侵入し、翼の内側の温度を上昇させたのではないかと考えられる。

さらにタイルを翼の表面に接合している室温硬化接着剤(Room-temperature vulcanizing: RTV)の温度を上昇させ、400度Fまで上がり、タイルが剥離して西の方向に落下したと考えられる。つまり、亀裂はパネル8と9のあたりに生じたのではないかということである。

また、このエリアには、薄茶色のスラグがついたタイルも発見されている。化学的分析の結果、この付着物は鉄とニッケルを多く含むことが判明した。未回収のRCCを支えるスパナー・ビームにはニッケルが多く含まれており、またパネルと翼桁を接合する取付金具には、鉄が多く含まれていることから、パネル8と9付近に穴があき、スパナー・ビームと取付金具の溶けたものが翼の下部に付着したのではないかと考えられる。

パネル8と9の区域のみでナイフ刃状(knife-edge)の変形が確認された。これらはパネル8からパネル9に向かって噴出した高熱ガスが原因で生じたと思われる。

パネル8の内部に見られたスラグ(球状の付着物)は、均一パターンで付着していたため、パネル8内での飛散によると思われる。

最初のスラグ(最下層のもの)をX線検査したところ、ニッケルを多く含む物質であることが分かった。これは、最初に溶解したのがスパナー・ビームであることを示している。

キャリアーパネル下部の角に発見されたタイルの浸食は、パネル8で発生した高熱ガスがTシールとRCCの間の設計上作られているU字のギャップを貫通して起こしたものだと考えられる。

これは回収された全てのRCCパネルの場所と種類を記したものである。赤は左翼のパネル8から22、黄色は左翼のパネル1から7、青が右翼のパネル1から22、水色が垂直尾翼を示している。

見てのとおり、最初に左翼のパネル8から22が最も西に、次に左翼のパネル1から7、右翼、垂直尾翼の順番に落ちている。その中でも、パネル8の破片は上流(パネル8~22の落下区域)と下流(パネル1~7の落下区域)の両方に見られるため、亀裂発生箇所がパネル8であるという説が有力である。

以上が、デブリから得られる指標である。これをみると、パネル8あるいは8の両側のT-シールも含めたその周辺部で亀裂が生じた可能性が高いと結論づけることができる。

デブリだけをみても機体のどの部分に何が起こったのか推測することはできるが、私はこれだけでパネル8に起きたこと全てについて納得したわけではない。デブリ以外にもOEX(Orbiter Experiments Recorder)ワイアリング図解やそれがどのように、どんなタイミングで亀裂が生じたのか説明があったように、それら全ての情報がRCCパネル8でこのような亀裂が起きたことを示している。その他にも写真解析や物的証拠があり、断熱材がパネル6から9に衝突したことを示している。

全ての情報が、シャトル事故の最も疑わしい原因は断熱材であったことを示している。

 

ハロルド・ゲーマン委員長

まとめの意味で、ふたつ程フォローしたい。
まず、合同シナリオについて。6週間前の記者会見と公聴会で、再突入時の合同シナリオと呼ばれるものについて説明した。これは、CAIBとNASAがシャトルの再突入時の事実について合意したものだが、非常に大切なことだと捉えている。

というのは、1ヶ月あるいは6ヶ月後にふたつの異なるシナリオがあるような事態を避けたかったからである。ということで、再突入時の事実については合同見解に達している。

それから、特にMADS(Modular Auxiliary Data System:OEXレコーダへ記録するデータシステムのこと)からの新しいデータを受けて、上昇時についても同様に厳密に完全な統一見解に達するべきだと感じた。この作業シナリオはほぼ完成しており、NASAとCAIBがそれぞれに用語と事実をチェックしている所なので、ミッションの初期段階についての合同シナリオについては、かなり統一見解に近い段階にいる。これはおそらく報告書の付記のひとつとして添付されることになると思う。

つまり、報告書を読む人は、文章で報告書を読むだけでなく、CAIBとNASAが合意した事実ということを前提に事故の再現のために非常に細かい事実を照らし合わせることが出来るので、調査目的の人にも役立つと思う。

2つ目の点は、断熱材の衝撃試験について。2回目の試験をRCCの実物で行うために、現在、パネル8、9、10のファイバーグラスのモデルの衝撃試験を行って、試験前の校正をしている。実際のRCCパネル8、9、10に衝撃を与える事は、事故の再現に限りなく近いものとなる。

それについてはハバード氏に詳細を説明してもらうが、RCCパネルの実物に実際に衝撃を与えた時に事故時の衝撃に出来るだけ近く、望んだ結果が得られるように、衝撃試験をしている状態だ。

RCCパネルのスペアはひとつしかないので、実物のRCCパネルで何度も試験を行う事はできず、一度の試験を正確に行い、結果を出さなければならないので、正しく衝撃試験を行うための修正をしている訳だ。

 

最終更新日:2003年6月25日

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