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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)断熱材衝突試験記者会見(仮訳)

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2003年6月13日午前3時30分(日本時間)

記者会見要旨

スコット・ハバード委員

今日のブリーフィングは、断熱材のRCCパネル6に対しての衝突についての試験ものだ。最初のスライドを。

サン・アントニオのサウスウエスト研究所で、この試験を行ったことは皆さんご存知だろう。大きな屋外施設で、長さ30フィートの砲身を持つ窒素ガスから断熱材を発射して、翼前縁のモデルにぶつけるというものだ。実際のフライトハードウエアの主な部分を含み、フライト仕様に出来るだけ近く作られている。

発射体はBX-250と呼ばれるバイポッドランプの断熱材と同じもので作られていて、大きさ、速度、質量は計画値と実測値のものだ。多くの方からの分析結果のおかげで、事故中に起こった典型的な発射体として落ち着いたのは、1.67ポンドの断熱材の破片を秒速775フィートで飛ばすという事だ。

ということで、計画(予測)質量は1.67、実際の発射体の重さは1.68ポンド。実際の寸法はここで見られるようにこのケースでは5.83x11.56x21.38インチ。実際の寸法の長さは少し変わり、銃身の大きさで幅と高さが決まるので、質量を得るために寸法の長さは調整されている。1.67ポンドという質量の制約を目標に作業をした。

計画速度は775fpsに対して実測は768fpsであったので1%以内程度。翼前縁に対しての衝撃の角度は20.6度。銃身の角度は0度。これが発射体の状況だ。

試験はサウスウエスト研究所で6月6日に行われた。目標位置の4分の1インチ以内に打てたので、再現状態は極めて良好かつ正確。断熱材は(高速ビデオの映像が後で出てくるが)、現場にいた人は分かるように、大小に砕け、事故のビデオで見られたのとほぼ似たような状態になった。

指摘しておきたいのは、皆さんが見たビデオの中では、実際の衝突の破片はサン・アントニオで行われた実験より、もっと小さく見えたということだ。

この実験以前にグレン研究センターで行われた真空状態の試験では、断熱材はもっと小さく砕けているように見える。しかし、実際の負荷を測定した所、違いはみられなかった。そのため、破片の状態は多少異なるが、実際の事故で起こった事象の再現が出来たと自信を持っている。

最初の試験は皆さんご覧になったと思うが、発射体には衝突の軌跡の筋がわかるようにインクが付けられていた。RCCパネル6から始まって、Tシール6まで続き、ファイバーグラス製のパネル7まで続いている。そしてRCCパネル6とTシール6の間に挟まった断熱材の破片が見える。

これは2つの高速ビデオの1本目で、衝撃、断熱材の粉砕が見られる。よく見ると、パネルの歪みまでが見える。この衝撃の威力がより直接的に見られる翼前縁内側からのビデオも次にお見せするが、パネルのゆがみは材質の違いにより、RCCパネルの方がファイバーグラスよりも少ない。RCCの方が固いが、ファイバーグラスのように強くはない。ファイバーグラスはもっと強度が強いのだ。粉砕、衝撃と筋がみえる。次に、試験後の分析結果に移る。

最初は3インチの割れ目が計測されたが、後により正確に測定したところ全体の長さは5.5インチだった。割れ目はRCCとほとんど同じであった。割れ目は「ロックサイド」に位置している。

ここにモデルがあるが、RCCパネルとTシールにはスリップサイドとロックサイドがある。このスリップサイドと呼ばれるこのサイドでは、Tシールが微少の誤差を吸収できるよう前後にスライドできるようになっており、ロックサイドにはTシールがロックされる溝がある。損傷はパネル6と7のロックサイドに間にみられた。
この損傷はリブ全体を包み、そのうち4分の3インチの割れ目となって現れ、表面に見られるようになった。一番目立つ損傷は内側から見られた。

これは異なる測定ポイントからの割れ目の写真だ。注意して欲しいのは、シャトルプログラムの測定は全体的には英国単位系を採用しているが、ここで測定した人たちはセンチメートルの尺度を使用している。このため、スライドではインチでなく、センチメートルでの尺度が使用されているので、ウェブサイトからダウンロードする場合は注意するように。記者会見での寸法は英国式の単位で全て行われている。

ということで、これが試験の直後に報告された最初の損傷だった。その後の検査をしたところ、Tシールにおいて、表面ではなく、ウェブと呼ばれる前縁と次のパネルの間の部分で約2.5インチの割れ目があることがわかった。

翌日のサウスウエスト研究所のX線検査では割れ目がフィレット(fillets)と呼ばれる(この下の材料の)部分まで延びていることがわかった。この損傷は肉眼ではわかりにくく、それがこのパネルで検討を続ける問題のひとつである、つまり、単純な視覚検査では隠れて見えない損傷が存在するということである。

パネル6のフランジ(端部)のシアーフィッティング部にもう一つ亀裂が見つかったクラックは3/8インチの長さである。また、このダメージはオービタのさらに深部に影響を与えたと思われる。

キャリア・パネルから剥離した1インチ四方の素材が見つかった。これは、過去に修復された部分から剥離したものらしい。修復部が果たして丈夫なのかどうかが問われる。

各部品の位置のズレも見られる。Step & Gap という用語がある。Stepはパネル同士をくっつけた時のわずかな「段差」、Gapはパネル同士の間のわずかな「隙間」を指す。試験前と試験後では、規定の倍の数値のStep & Gap 値が測定された。これは、内部で断熱材が膨張してTシールが拡大したせいかもしれない。Tシールの裏側においても約3万(仕様値は4万かもう少し小さい)という数値が出た。全体的に飛行前仕様(flight specification)以上の数値が測定された。

次に翼の前縁部内部のビデオをお見せする。激しい振動が見て取れる。 (高速ビデオ)

ご覧のように断熱材が煙状に出ている。この現象はゆっくり起きているように見えるが、実際は100分の一秒の世界だ。RCCパネルが振動して曲がっている。もっと長いビデオだと、最後の方で陽光が差し込むのが見える。強い衝撃のために一瞬、パネルの間に隙間があいて陽光が差し込んだわけだ。このことから、亀裂が静的な事象ではなく動的(ダイナミック)な事象であることが分かる。

今お見せしたビデオから撮ったスチール写真3枚だ。ちょうど亀裂が現れる様子をとらえている。

次は、試験前の予測内容を比較したものだ。まず、全体的な衝撃負荷は予測値とほぼ一致した。3,500ポンドの予測値に対して実際の値は2,600ポンドだった。亀裂の見つかった「リブ」部位と外殻(シェル)表面にかかった圧力は予測通りだった。衝撃部から離れた部位のパネルの反応は予想より低かった。

センサ・データによれば、異常はかなり初期の時期、断熱材がパネルにあたった直後に起きた。それによって亀裂ができた後もなお、断熱材は翼の前縁部にくい込み続けた。これによって、もともとの解析予測値よりも複雑な負荷反応が起きたと思われる。また、システム全体の反応は一枚のカーボン片とは異なる。

もう一つ興味深いのは、設計上の限界を超えていたのにも関わらず、シェル自体は破壊されず、端部に亀裂が入っただけだったということだ。これは、素材や前縁部の構造に関する知識が不足していたせいかもしれない。

各センサの位置だ。この素材は4,500psi (pound per square inch)だが、負荷限界値を少し越えただけの4,940psiで破損したのが不思議だ、ふつうはリミットにマージンがあるものだが(壊れるのは不思議)。反対に、表面(face sheet)周辺では限界値の3倍以上の負荷がかかっても破損しなかったゲージもある。端部の方が表面よりも壊れやすいのかもしれない。あるいは、見えない亀裂があったのかもしれない。衝撃点近くでは、破損限界値の3倍のところでTシールに亀裂ができた。

サンディアのグループが事前に行った圧力(stress)レベルの予測値だ。赤い部位では実際に測定された圧力に近い圧力値になっている。

以上の試験結果との比較を行った後、次に非破壊評価(NDE)を行った。サーモグラフィ試験をビデオで撮影したものである。ご覧のように、赤外線放射をフラッシュしているため、熱を帯びた部分は赤色で見える。赤くなっては冷却する。ここで亀裂が現れる。

これはそのスナップショットだ。サーモグラフィーによりパネルの亀裂を肉眼で確認できる。サーモグラフィーのように破壊せずにできる調査を我々は推薦している。

これまでの試験の結果。失敗メカニズムを決定できるようになった。事故が起こった環境下では断熱材がRCCに亀裂を発生させることが確定した。Tシールとキャリア・パネルにもダメージがあるのがわかり、そして位置にずれが生じることもわかった。

これはただひとつのデータポイントである。亀裂が広がる可能性と高温ガスが貫通するかどうかはまだ解析されていない。パネルはKSCに輸送され、CAT(Computer-Aided Tomography)スキャンとX線スキャンを受ける。結論としては断熱材の仮説を推定するのには早すぎる。もっとデータが必要である。

次に行うこと。目的は事故当時に観察されたようなダメージ(穴)が断熱材によってできるかどうか。その実験の結果が他の証拠と適合するかどうか。
パネル8から10の試験を行う前にいくつか検証しなければならないことがある。

  • モデルの改良
  • 断熱材衝突位置
  • 衝撃時の角度
  • パネル単体ではなく、Tシールとファイバーグラスと隣接していることによって変化があるのかどうか。

我々はパネル5から7のファイバーグラスの試験に戻るつもりだ。試験は同じサイズと速度が使われる。そして他と異なった形をもち、最大のパネルでもあるパネル8を使い、どのように影響があるのかを調べる。

パネル6では実際の衝撃箇所と思われる箇所より約3インチ下で試験を行う。衝撃時の角度を時計回りに30度回転させて試験をする。この結果をパネル8から10の試験にも使用する。

6月16日:ファイバーグラス試験の再開
6月18日:2度目のファイバーグラス試験
6月 末 :パネル8から10の試験を行う

以上

最終更新日:2003年6月20日

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