|
||||||
コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳) |
||||||||||||
|
||||||||||||
|
||||||||||||
2003年6月13日午前2時00分(日本時間) 記者会見要旨
ご存知のように、委員会のヒューストンからワシントンDCへの移行期間も終わりに近づいている。各キャンプにもまだ(委員会メンバーは)残っており、メンバーは行ったりきたりしているものの、ワシントンDCを中心に活動を行っている。 現在は、報告書のドラフト作成を重点的に行っているが、だからといって調査が終わった訳ではない。調査が継続していることが明らかである証拠に、委員会の同僚から興味深い報告があるだろう。 委員会は、調査をだんだん減らし、報告書のドラフトをまとめようとしている。目標である8月の議会休会前までに報告書を提出できるよう努力しているが、前にも話したとおりこれは目標である。終わらせるつもりではあるが、急いで報告書を出すより正しい報告をする方が重要だと思っているし、議会もホワイトハウスも同じ意見だと理解している。 私からの最初の報告は以上だ。
後に興味深い報告が控えているので、簡単に済ませる。私とスティーブン・ワレス氏、ケネス・ヘス氏のグループが行っているワシントンDCでの主な活動は、意志決定と安全プロセスに関して今まで調査してきた内容をまとめる事である。 最近時間を割いているのは、ミッション管理チーム(MMT)活動の見直しだ。おそらく、MMTが将来のフライトへの準備を進めるにあたり、トレーニングの増強を提言することになるだろう。私からの報告は以上。
最初に、コンピューターがトラブルを起こしているので、スライドが出ないようだが…、とにかくお話をしよう。 グループ3の代表として話すのは初めてだ。私は低温実験物理学者であり、ゲーマン委員長から参加を要請されたものの、スタンフォード大学宇宙物理学部の学部長という役職にある以外は、NASAについても、宇宙に関する仕事もしたことがなかったので、最初にどうやって貢献したら良いのかと思った。しかし、すぐにこの様々な方向で測定すると異なった値が出る性質を持つものという意味で「面白い」断熱材の性質にとても興味を持つようになった。 たとえば、機械的な性質は圧縮する方向性により変わってくる。この断熱材について実験を行うことにしたので、その実験について説明したいと思う。BX-250の一片を貼り付けるというものだ。この断熱材がバイポッドランプに吹き付けられているもので、コロンビア号再突入の際の破壊原因と見なされている。 この断熱材を、小さなチューブをつけた金属板にはりつけ、液体かガスの圧力をかけられるようにした。実験の目的は圧力を強めるにつれ、最終的に表面に伝播したなんらかの不具合と、どのように結びつくのかを理解することにある。 これは重要な事だ。何故ならNASAの人員は長い間、外部燃料タンクからこの断熱材が剥離する主なメカニズムは、外部燃料タンクの金属面に近い断熱材の隙間にたまった液化したガス、または液化窒素が、空力加熱によって、加熱され、圧力が上昇し、外部燃料タンクから断熱材を飛ばすのではないかと考えていたからである。 私の自問自答は「断熱材を通して伝播されるこのようなプロセスを理解しているか?」というものだが、答えは「いいえ(NO)」だった。そしてこの一連の実験を実施した。その結果、液体膨張のメカニズムが、表面からの断熱材の剥離とどうやっても矛盾するということがわかった。 マーシャル宇宙飛行センター(MSFC)の人も類似の実験を行い、同様の結果を得ている。 全部の実験をお見せすることはできないが、興味深いことに、私の抱いた疑問にはもうひとつの側面がある。STS-107ではバイポッドランプの断熱材が落下したのが打上げ81秒後ということだ。これは空力加熱状態となってから30秒もたっていない。熱が断熱材を伝播し、そのわずかな時間に、圧縮されたと思われる液化窒素を沸騰させることは現実に可能なのだろうか? MSFCには、「Marshall Joy」と呼ばれる人がいて、この断熱材の熱分析を非常に慎重に続けており、熱の伝播に必要な時間はとても長いことを発見している。 私とMSFCの人員が別個に達した結論は、断熱材が剥がされるプロセスは疑いもなく、液化ガスによる剥離というようなものより、さらに要因が絡まった複雑なものだということだ。 そしてあえて言いたいのは、私がしたような実験は実際に自分の家のキッチンで100ドルほどで行ったもので、このような実験、特に断熱材がなぜそのような動きをしたのか、という物理的メカニズムを理解するための実験を、もっと行わなくてはならないと思う。
PCをマックからスイッチするため、1分半ほど必要らしいのでざっと説明する。あなたがたは新聞に私たちの報告書のアウトラインを発表したが、あなた方がしたことはまだ私たちが「疑問」としていることを「結論」にしてしまったのだ。まだ結論はでていない。 様々なレポートは正確で、それによって作成されたアウトラインは正確であり、様々なトピックを示したが、アウトラインは生き物のように日々刻々と変わっていて昨日も変わったばかりだ。ある新聞では簡潔で完成されたレポートについて感謝されていた。だがまだ始まったばかりだ。よってまだ「完成」とは言わないでもらいたい。 グループ4は私だけではなくサリー・ライドとスコット・ハバートなどがおおまかな予算と組織について調べており、様々なシャトルプログラムの背景にある事実を解明していく内に、みなさんにこのような記者会見で発表できるだろう。
まず、故障の木解析(FTA)がいくつか終わったのでそれを伝える。 まず外部タンクが終了した。しかしまだ不明な問題点があり、仕事が残っている状態だ。SRBもボルトキャッチャー以外は終了した。ボルトキャッチャーについては後で話す。 コロンビア号事故調査委員会としての故障の木解析は234ブロックあり、そのうち17項目がオープンとして追求しており、2つの項目が原因につながる恐れのある因子としている。夜を徹して仕事をしている人々、とくにスティーブ・クラーク氏に感謝したい。 それでは本題にはいる。ふたつの管理面とふたつの素材面の課題を説明する。 委員会はNASAが契約をどう考えているか知りたいと考えている。NASAは報酬方式(Financial incentives)契約にしているので、契約金はプログラムマネージメントの大きな焦点になっている。CAIBの立場はまだ決まっていない。新しい乗り物がうまくいくのか行かないのかという問題は、トム・ヤング氏が言っていたが、一度間違えると終わりとなる事業だが、契約金云々は技術者の妨げになることもある。 ふたつ目に取り上げる管理上の問題は、統括(インテグレーション)についてだ。まだ決断には至っていないが、我々はNASAにおける組織や部門をどのように分析するかについて検討している。それによってさまざまなシャトル構成要素やプロジェクトを統括する際の弊害の輪郭をとらえようとしている。 JSCにスペースシャトルシステム統合オフィスがあるが、これは宇宙輸送システム全体を網羅しているものではない。CAIBは現在、統括におけるその位置付けの決定を行い、我々は統括機能についてどのように提言するか、また統括機能をどのように再組織してシャトルの全要素に焦点を当てるかを検討している。単にオービタやSRB、RSM、SSMEといった個別についてではなく全体についてである。 また、戦略的計画プログラム開発をスペースシャトルプログラムに取り入れ、運用だけでなくシステム全体を統括することを考えている。多くのトピックが行政官やNASAにより定義された。我々による実行可能な提言とともにそれらを増強しスペールシャトルプログラムの統括を成し遂げたい。これには単なるペーパーワークだけではなくより良い技術的統括も必要となるだろう。さてこれらの2つのマネジメント問題と共に、2つの素材の問題についても説明したい。ひとつはSRBボルトキャッチャーである。 これがその破片と思われる。これは我々がSRBの故障の木解析を終えようとしたときに判明したものだ。断っておくが、我々はワーキングシナリオを変えるつもりはない。しかしこれについてはSTS-107のためではないにせよ今後のために焦点を当てたい。 NASAだけが注意を傾けるべきだということではなく我々も注意をしている。我々はいくつか静的試験を行ったが、なぜこれに着目するかというと、打上げ126秒のSRB分離時にレーダが物体を感知していたからだ。我々はこれがボルトキャッチャーに直接的に関係しているか断定出来ないがこれについて次で説明する。
SRBを固定する4つのボルトのことだ。各SRBの4つのボルトがSRBを射点に固定する。これらはT+3秒で点火され切り離される。 実は、この情報は一般から得たものだ。CAIBがこの問題について質問をすると、「これはオービタの問題だ」、「いや、SRBの問題だ」と何度か堂々めぐりをした。ここでも、これまでお話した管理面の問題が浮上した。 STS-112では、ホールド・ダウン・ポストの点火装置の発火を促すふたつの信号のうちひとつが失敗した。8つのボルトを爆発させるふたつのイニシエータ(点火装置)のうちひとつしか発火しなかったのだ。 システムのひとつが発火せず、冗長システム側でボルトが切り離されたことを私たちは懸念した。冗長性はあったが、ひとつしか働かなかったということだ。 NASAには冗長性について改善を試みて欲しいと思う。核を扱う現場では多数のクロスストラップが使われている。ひとつの信号がボルトの点火装置を発火させると、その信号はもう一方にも送られる。冗長的な要素が多数できるということだ。このことがSTS-107の悲劇に直接つながるかどうかは分からないが、この件は調査するに値する。 デブリの出所のもうひとつの可能性として、ボルトキャッチャーの例をあげた。もちろん証拠はない。ただ、コロンビア号のレーダー・トラッキングを見ると、SRBが切り離された126秒(つまりデブリの存在するはずのない時間)にデブリが観察された。このデブリの正体は分からないが、調査の結果、ボルトキャッチャーが考えられていたほど丈夫ではなかったことは判明した。これについては今後も報告を続けるつもりだ。
以 上 |
||||||||||||
最終更新日:2003年6月30日 | ||||||||||||
|
||||||||||||
|