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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳)

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2003年5月7日午前3時00分(日本時間)

記者会見要旨

ハロルド・ゲーマン委員長

今日のメンバーは全員が空軍出身だ。今日は説明の順番を変え、3つのグループの調査状況報告の後、私から説明を行う。

デュアン・ディール委員(グループ1)

現在、ジョン・バリーはマネージメント関係を調査している。ステファン・ターコットは先週、ケネディ宇宙センター(KSC)に行っていたが今週合流する。

グループ1の中の3つのサブグループについて。メンテナンス担当(Maintenance and Sustainment Group)は現在、請負会社に焦点をあてて調べている。また、過去の忠告(勧告)レポートについても調査中だ。一方、マネージメント担当(Management and Human Factors Group)は先週、ハンティングトン・ビーチで技術者などと面会し、さらに衝突によるオービタへの損傷を予測するいわゆるクレーター・プログラムの技術者にも会った。今週は、組織上の課題の専門家をふたり迎える。カリフォルニア大学バークレー校のカーレーン・ロバーツ博士に高信頼性組織(High Reliability Organizations: HRO) と高度危機管理技術(Managing High Risk Technology)について話してもらう。また、アメリカン大学のハワード・マカーティ博士にも出席してもらう。彼は宇宙政策に関する本を4冊執筆している。来週はミシガン大学のカール・ワイク教授を迎えてHROの話をしてもらう。

一方、材料構造担当(Material and Structures Group)はマーシャル宇宙センターとミシュー組立工場(Michoud Assembly Center)で外部タンクのテストを行っている。あとでスライドを見せる。

グループ3は断熱材の調査をしている。また、品質保証についても調査している。週に何千ものフライトがある航空業界で有効なやり方でも、113フライトの有人宇宙飛行プログラムには適さないかもしれない。

 

スライドをお見せする。最初は有名なバイポッド・ランプだ。次。

来週はET-94タンクについて報告できると思う。次。

これはハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターで行われているテストに使われる設備で、バイポッド・ランプ付きのパネルを作り、クライオポンプをマーシャルにある12フィート真空チャンバーを使用することで調査しようとしている。

外部タンク(ET)に現在まで確認されているバイポッドランプの異常について、過去6回のシャトルフライト(STS-07、STS-32、STS-50、STS-52、STS-112、STS-107)で確認されている。STS-50とSTS-52は2フライト離れており、この間は4ヶ月あった。STS-112とSTS-107に関しては1フライト離れており、この間は3ヶ月であった。グループ2ではこれら断熱材の剥離について飛行準備審査会(FRR)でどのように扱われたか確認しているところである。まとめると、113回のシャトル打上げのうち、バイポッドの状態が写真によって確認されたケースは74回,夜の打上げ等の関係で、写真による確認ができなかったケースは39回だった。
また、バイポッドランプから断熱材が脱落していたのを確認できたケースは6回、統計上推測できるケースは3回、従って12~13回の打上げに1回の割合で、バイポッドランプの断熱材の脱落があるのではないか、との推測をするに至った。
 



ケネス・ヘス委員(グループ2)

スティーブン・ワレスは断熱材衝突に係る判断プロセスについて調査を指揮している。主に、デュアン・ディールが前のスライドで浮き彫りにしてくれた6回のフライトについて、飛行準備審査会(FRR)プロセスや、PRCB(プログラム要求管理ボード)のプロセスを検討し、特に断熱材についてどのように取り扱ったかを調査している。ご存じのようにサリー・ライド博士はクレーター(CRATER)分析や、電子メール等、STS-107のミッションに関連した様々な側面を考察しており、彼女がこのミッションのマネージメントレベルの決断などをスティーブン・ワレスの行っているプログラムのトップの運用あるいは戦略的な部分の活動と結びつけている。

自分は同じ方向ではあるが、安全面を見ている。プログラムレベルの、全体的なプログラムの方針や、危機管理と様々な段階へのリスクの統合、NASAが安全情報を記録したデータベースからの傾向分析をどのように活用し、危機管理問題の予測と対策に役立てているかの考察を担当している。

最終的にはNASAがどのようにその決断の管理をしているのかという点で、これらの事がどんな意味を持つのか、調査の終わりの段階で全ての調査の線が分析レベルで交わるべきである。


シェイラ・ウィドナール委員(グループ3)

私の担当するグループ3は、デブリの解析と共に、シャトルのフライト中におけるデブリ動向の技術的、専門的な解析のフォローアップをしている。グループメンバーの活動を紹介すると、後ろの席にいるロジャー・テトラウトは、先週、KSCで破片について集中的に化学解析を行っていた。また、彼からの報告で、最後の破片を積んだトラックが今朝KSCに到着したということもわかった。今までに回収されたシャトルの破片の量はかなりのものだ。

ジェームス・ハロックは、様々なシナリオを構築し、細部を分析している。また、センサについての解析も行っており、不具合を起こしたものや、良いデータを提供しているものを検討している。また、様々な故障の木解析(FTA)のクローズアウト(完了)の責任者でもある。

スコット・ハバードは断熱材の試験を担当しており、彼は今戻っているが、ずっと今週はサウスウエスト研究所に出張していた。彼の報告によれば、断熱材の衝突実験は先週木曜日に始まったということだ。最初の実験はどちらかというと試験環境を整えるもので、小さな断熱材の破片を主脚ドアのモデルに衝突させ、その後、衝突の角度を変えたり、断熱材のサイズを大きくしたりして、断熱材の衝撃によるタイルのダメージのデータを集めていく。主脚ドアの試験を行っており、RCCの試験環境は5月の末までには準備出来る予定となっているが、かなり複雑な実験設備であるため、試験自体は6月位に開始出来るだろうと見込んでいる。

自分は、フライトの様々な段階の空熱力解析(aero-thermal analysis)に参加している。


ハロルド・ゲーマン委員長

これから、委員会はシナリオあるいは(事故に至った)仮説を作成する作業に力を入れていきたい。今までは理解や知識が不十分だったが、認識も深まりこれからは仮説への取り組みに集中したい。もちろん、誤りや見過ごした事がある可能性があるので注意していく。しかし、仮説は、実験に集中することを可能にし、分析を絞り込むことができる。
多くのものがまだ作業中の仮説には含まれず、今まで展開してきたデータを広範囲で捕らえたものである。

委員会はこの調査を終了させる予定だが、同時に委員会が全ての発言に対して採決をしたと思われるのは困る、また、終了してもいないのに終了したと言わせたくない。そのため、我々はどの部分も必要に応じ、通知なしに変更する権利をもっている。よって、ワーキング・シナリオと呼んでいる。
またこれは調査団全員で行ったことを認識してほしい。CAIBのシナリオとあるが、NASAを含め全員で行った。特にNASAのチームの努力には感謝したい。様々な見解があると収拾がつかなくなるため、この調査団全員の理解が必要である。ほとんどの人の見解は一致していると理解している。この調査の最高責任者2人はジェームス・ハロックとロジャー・テトラウトである。NASAではランディー・ストーン、フランク・ベンソン、ジム・ケネディーがリーダである。

ここに示すのは、我々が分析した6項目の全ての分野をもとに出したシナリオである。上昇、軌道周回中、エントリー(大気圏突入)でなにが起こったか全員で合意した結果である。

どうやって結論に至ったか、時系列的に説明したい。打上げ81秒後に左のバイポッドランプから複数の断熱材が剥離していることを確認している。ひとつはオービタのパネル5番から9番の間にあたった。続くパネル説明の中で違うパネル番号について話をするが、確認された事実について話していく。この段階で破損があったかどうかはわからない。

午前中公聴会でみた映像の一部である剥がれた断熱材の写真である。

2台のカメラから断熱材の軌跡を描くことができた。断熱材がどこから剥がれて、どこに衝突したかはほぼ判明した。

軌跡分析から断熱材衝突の箇所がほぼ判明した。数インチの誤差はあるが、衝突箇所について前に話したパネル5番から9番の間に対し、解析の結果からは衝突予想領域にパネル6番と9番の一部がかかっているが、主な衝突はパネル7番と8番周辺で起こったと考えられる。

軌道周回中になんらかの衝突があって、シャトルがダメージを受けたことを証明する証拠(テレメトリ、写真、慣性航法システムなどの機器)は見つからなかった。フライト2日目で観測されたデブリは最初に観測されてから2日半追跡された。このデブリの主な大きさと重量が判明している。それを様々な分析結果と照らし合わせた結果、多くの候補となった部品の中で、RCCパネルの一部か、あるいはRCCのTシールである可能性がある。しかしそれと特定する証拠はない。この実験や分析はまだ進められている。RCCの一部もしくはTシールの一部が軌道周回中に脱落した可能性はある。

完全な状態のTシールの写真だ。もしKSCにすべてのTシールが回収された場合、Tシールは候補から外される。

次に、大気圏突入のワーキングシナリオについて説明する。
シャトルが軌道から離脱し、再突入する迄の状況については何も問題はみられていない。
しかし、2月1日の朝、コロンビア号が大気圏内に入る際に、すでにシャトルはRCCパネル又は左翼前縁部の事前に述べたRCCパネルに、原因不明の損傷を抱えていたと考えている。

最も損傷を受けたと考えられる部位は、RCCパネルの第8エリアまたは第9エリア、もしくはそれらをつなぐTシールの部分であると推測される。多くの計測結果、特に温度分析の結果から、この部分の温度がシャトルの再突入時早期に急激に上昇したことが確認されている他、歪みゲージが異常な計測値を示していたことが分かっている。

回収された破片の解析を行った結果、回収されたRCCパネル8及び9番の部分から、熱の流入はRCCパネル8及び9番エリアもしくはTシール部から始まったことが分かった。特に、RCCパネルに溶けた金属が付着し、パネル周辺が熱浸食によりナイフのような鋭利な形に変形していることから、ここに高熱ガスの流入があったことが分かった。

このスライド及び模型でわかりやすく説明できるようにしているが、熱の流入はRCCパネル8番もしくは9番の部位から起こっている。

次に、このグラフはRCCパネル8番もしくは9番で確認された金属かす(スラグ)について図示したものだ。図にあるように金属かす(スラグ)はRCCパネル8番もしくは9番で大量に確認されているが、RCCパネル7と10番ではそれほど確認されていない。この部分の構造体の複数種の金属が付着していることから、比較的長時間高熱にさらされていたことを意味している。前縁部の金属は溶解し、吹き付けられたと考えられる。

RCCパネル8と9番はTシールにより1.8インチ離れている。(スライドの色がついている部分について)これらの部位はナイフのように鋭く変形していることを確認しているが色のついていない部分のデブリは見つかっていない。以上から、(色の塗られていない部分の)RCCパネルもしくはTシールの下面部から熱が流入していることが考えられる。鋭利になった部分について写真を入手しているが鮮明ではない。

これが前縁部のナイフのように変形した破片の写真である。この破片は、アルミだけでなく様々な種類のインコネル、ステンレス等の金属が付着していることが分かっている。これは、RCCパネルが長時間高熱にさらされ、パネル付近の金属が溶解し、付着したと考えられる。なお、それぞれの金属は、異なる融点があることから、これはある程度時間をかけて起こったと推測することが出来る。

8:44:09 ESTに再突入インターフェースに突入した。
8:49:00 ESTに最初の温度センサーの上昇が計測された。この約5分間に高温ガスがRCCの亀裂に流れ込んだ可能性が高い。
8:52:00 ESTに翼中のセンサーは高温ガスが前縁部の翼桁を貫通して内部に流れ込んだことがわかった。これは温度分析で熱が前縁部を貫通するのにどのくらいの時間がかかり、どの程度の亀裂があったかを分析するのに大切なデータとなる。

熱が流入したのがパネル8番(他の周辺パネルの可能性もある)と想定して、図で描いているように前縁部の下方に亀裂が生じて、3分間高熱ガスが入り込み翼桁を貫通したという仮説がある。

高温ガスが桁に流れ込んだら、アルミニウム製の桁全体に損傷が加わった。これらの構造体の断片としてのデブリはあまり回収されていない。そしてたくさん存在する配線の束にもダメージが加わった。センサの計測からそれが熱で故障したのか、切断されたのかは不明だ。
8:52:00 ESTに前縁部のバルクヘッドに高温ガスが貫通した。
8:52:16 ESTに最初のセンサの故障があった。
8:56:24 ESTまでに他の164のセンサが故障した。ほぼ同時に故障したが一部はその後もしばらく生きていた。

我々の仮説では8:52:00 ESTで高温ガスが桁を貫通した。

一度高温ガスが内部に流れ込んだら周辺にある配線の束を断線させた。そして車輪格納庫のセンサーの計測からも高温ガスが流れ込んだこともわかった。高温ガスが通気口を通ったかどうかは不明だ。


8:52:16 ESTに高温ガスがここに流れ込んだ。そして写真でも確認できる配線の束が燃え始めた。

この頃には、翼内部の熱が上昇して翼の形が変形し、タイルがはずれたり接着剤が溶けたりするなどの様々な現象が起き始めたと思われるが、証明することはできない。翼に亀裂が生じてから1分半後にデブリの剥離が始まった。最初のデブリ剥離がビデオにより観察されたのは8:52:16から8:53:46であった。
この頃には翼内部の損傷はすすみ、何百ものセンサのワイヤが切断、通信途絶がはじまる。次。



8:52:06、空力抵抗の急増が最初に観察されるが、問題はない。
8:54:20、かなり著しい空気力学的変化。破片剥離もあるが、関連性は不明。
8:56:16、車輪格納庫周辺の温度上昇。車輪格納庫そのものに熱が入り込んだことを示す。
8:58:09、さらに著しい空気力学的変化。破片剥離を伴う。
8:58:56、左車輪格納庫(landing gear wheel well)のタイヤ圧力や温度センサが全て故障。主にワイヤ切断が原因。
8:59:29、空気力学的変化により、シャトルの機種が下がり機体が左にロール。これを制御するために姿勢制御系(Reaction control system: RCS)ジェット4機を噴射。
8:59:32、信号喪失。レコーダーはその後、30~40秒は記録していたが特筆すべき情報はなかった。
以上が、機体分解に至るまでのシナリオだ。

進行中の解析過程の中で、より積極的にすすめたい部分を次のリストにあげた。たとえば断熱材衝突テスト、空力熱解析など。これらの解析はは現在私たちが持っている様々な疑問に答えてくれるはずだ。たとえばカプトン製のワイヤが焼き切れるまでの時間は(どのくらいか)、アルミスキンが焼き切れるまでの時間などなど。

今朝(公聴会)も話したように、表面(スキン)温度の異常がいくつか見られた。たとえば胴体の表面温度が通常より低温になった後に通常より熱くなった。おそらくは翼の変形によってオービタ周辺のFlux(流れ)が変化したためだと思われるが、確定ではない。

破片テストも進めている。現在持っている破片をもとにした3Dモデルの作成、化学解析、破片の金属テストが進められている。また断熱材の解体やクライオポンプ問題の理解も深めるつもりだ。今の情報は資料でお配りし、またホームページでも見ることができる。

以 上

最終更新日:2003年 5月8日

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