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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳)

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2003年4月30日午前3時00分(日本時間)

記者会見要旨

ハロルド・ゲーマン委員長

デブリ回収作業は、予定通り4月30日をもってほとんどの作業を終了する。現在99%の区域で地上の探索作業が終了した。私たちは回収状況に非常に満足している。最終的に、シャトル総重量の40%近くが回収されると思われる。これからもJSC(ジョンソン宇宙センター)にデブリ回収事務局を配置し、新しいデブリ情報に対応する。重要な西方区域では回収作業を行う可能性がある。

タイルが新たに、テキサス州グランベリー周辺でみつかった。まだ詳細については分析中である。ダラスより西方で回収されたデブリは3つになった。

ニュース性は乏しいが今週私たちは、ふたつの点において多くの収穫を得た。

ひとつは事故原因仮説の作成である。先週、調査委員会及びNAIT(NASA Accident Investigation Team)関係者や専門家たちで長時間、ミーティングを行った。まだ解析中であり、サブグループをアサインし、調査を続けているので、詳しいことは言えないが、7日から10日後には、何らかの形で発表ができるようにしたいと思っている。内容は、どのように左翼に熱が侵入したのかと、左翼の損傷過程についてだ。

もうひとつは、危険性評価(risk assessment)及びシステムの安全性について理解を深めたことである。航空力学的及び熱力学的分野についての結論については世界的権威が行っているので問題は無いと考える。技術面同様、管理面、安全面、リスク管理面などでの勧告を行うに当たり、様々な専門家の意見や知識を考慮する必要があると思う。この1週間、公聴会などで、管理体制、安全システム、危険性評価の専門家たちの話を聞き、私たちが勉強する機会を設けた。我々はNASAを評価しているわけではない。

この1週間で議会メンバーの訪問が4回あった。今週にも、私は連邦議会に報告をしに行く予定である。14日に上院ジョン・マケイン議長が予定している公聴会にも出席する。

再突入時調査と同様に、打上げ時に関する調査を詳細にわたって行う予定である。開始したばかりだ。断熱材衝突の他にも操舵面で、異常とまではいわないものの従来なかった数値や現象がいくつかあったので、それらについて調査したいと考えている。

参考までに、現在までに78,000のデブリが回収されており、引き続き1日数百のデブリが回収されている。

ステファン・ターコット委員(グループ1)

ステファン・ターコット氏とデュアン・ディール氏が明日ケネディ宇宙センター(KSC)に向かい、面談や調査を行う。サブグループのボブ・アルスター氏とマイク・フランシス司令官が打上げ時のタイムライン作成をおこなっている。もうひとつサブグループのナカヤマ大佐とビール大佐はKSCでのインタビューと構造基盤の調査を行う。腐食分析(corrosion analysis)を専門にしているロジャー・ステイリー博士が新たに加わり、彼はデブリ現場で活動する。

メンテナンスに関して次の故障の木解析(FTA)は、5月中旬に固体ロケットブースタ(SRB)の分析を終了する予定だ。(外部タンクとSRB分離ボルトの)ボルトキャッチャー(bolt catcher)が未解決分野として、ひとつ残されている。

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2日め(Day2)のデブリについて話す。事故後の分析からデブリのデータを計測した。
この計測されたデブリデータが有効であるか否かを調べるため、ふたつの実験が実施される。ひとつはレーダ反射断面積(radar cross-section:RCS)で、既に26部品が調査済みで、これに加えて5部品についても行う。もうひとつはライト・パターソン空軍基地で行われる面積と質量の比率だ。

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これは、候補の可能性のあるTシール(T-Seal)の分析だ。現在調査中の追加された5つの部品はすべて回収されたデブリ(Tシールや上部キャリアパネルなど)だ。

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これは、ライトパターソン空軍基地の研究所で得たTシールのデータを比較したものだ。データをさらに詳しく分析し、事故原因を絞りたいと考えている。スライドの図はサインカーブのグラフのようになっていて、グラフの波を詳細に分析してデブリの部所を推測する。

バックアップチャート
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国防省コロンビア調査支援チームの指揮を担当していた米国戦略コマンド(United State Strategic Command)から、STS-107に関する全データ解析を終了したとの報告を受けた。解析されたデータはケープカナベラル空軍基地に送られた。国防省コロンビア調査支援チームの業務は終了したが、CAIB(コロンビア号事故調査委員会)から要請があれば対応できる体勢をとっている。

今日ラルフ・ローがRCCパネルのNDE(非破壊検査;Non-Destructive Evaluation)プランの概要に関して説明を行う予定だ。我々は前縁部(Leading Edge)及びRCCパネルに関するNDEの詳細な分析を要請した。

CAIBの複数の委員と、準委員によって構成されたマネージメント調査チームは、クレーター(CRATER)の調査を完了し、カルフォルニアからJSC(一部KSC)に移動する。

サリー・ライド委員(グループ2)

私はグループ2を代表している。
スティーブン・ワレス氏、ケネス・ヘス氏の両者は、今週は街にいて、私たちは打上管制官の訓練に関する分析を行い、その結果、(シャトル事故の)要因ではないと判断した。その訓練について注目すべきことはなかった。

私たちは現在、他のふたつの活動を深く分析している。
ひとつは書類作成過程、そして断熱材衝突に係る処置判定についてだ。これらについてまず重大なバイポッド断熱材脱落事象がみられたSTS-32からはじめ、次にSTS-50、そしてSTS-50からSTS-107まで主要な事象を調査していく。

私たちが興味を持っているのは、分析を経て、事後の様々な見直しによるブリーフィングを経て物事がどのように対処されたのかである。

どのように取り上げられたのか、飛行中は正常と公表されたのか否か、飛行準備審査会(Flight Readiness Review: FRR)でブリーフィングがなされたのか等、いずれもまだ分析をまとめている段階だ。想像できると思うが、相当の情報量であり、公式な会議のブリーフィングチャートを見ると、それぞれのフライトに対して列記事項が該当しないことを示している。それぞれのフライトに対するブリーフィングチャートや会議を分析し、関連する最近のプログラムの経緯を通して、問題点がどのように対処されたのかという話をまとめている。

意思決定の過程を分析することはとても時間のかかる作業で、もう少しで結論がでるところだが、まだ完全な結論にはいたっていない。

この分野では広範囲に及ぶ面談が行われた。私たちは組織の機能に関する評価を始めた。次の1、2週間で少し振り返って、組織と組織がどのような対応をしたのかを分析していく。

現在私たちは何が起こったのかについては理解できた。しかしそれよりも重要だと思われるのが、組織はどのように機能したのかという点だ。なぜなら、それによってより建設的なコメントができるようになるからだ。この背景を明らかにし、分析、過程の評価をしていく上で私たちを助けてくれる専門家を呼んでいる。ゲーマン委員長が言ったように、私たちは航空力学や熱力学についての理解を深めたが、安全、危険評価においても専門家を招いて理解を深めることも必要だと思っている。

ロジャー・テトラウト委員(グループ3)

技術を担当しているグループ3を代表して報告をする。シェイラ・ウィドナール氏はMITにいる。スコット・ハバード氏は断熱材の実験を木曜から開始するためサウスウェスト研究所(Southwest Research)に向かう予定だ。ダグラス・オシャロフ氏はここでデブリの化学分析を行っている。ジェームス・ハロック氏もここにいて故障の木解析の終了とセンサーの分析を担当している。

左翼の亀裂箇所を特定する可能性がある証拠に関して報告する。ふたつの点についてあらかじめ注目してもらいたい。外部タンクから剥離した断熱材の写真分析から、RCCパネル6、7と8が衝突箇所とみられているという点がひとつめだ。ふたつ目は、2日目のデブリのレーダ照射試験に関してで、OEXレコーダが早い段階で高温イベントを記録したというデータから推測できるのは、亀裂が大気圏再突入時に既に存在していたということだ。もしその通りであるとしたらこの部分が左翼からフライト中に剥離したと思われ、2日目にレーダから剥離したものの可能性が出てくるからだ。

RCCパネルNo.8,9上の浸食
RCCパネルNo.8,9上の浸食

RCCパネル8と9にみられるナイフのような端の鋭いデブリだ。この鋭さは、再突入時の高温加熱による浸食(エロージョン;erosion)が原因だ。他のデブリにはこのような浸食はみられない。RCCパネル8の裏側には溶解した金属が付着している。さらにRCCパネル9付近のキャリアパネルは極めて溶解している。これは他のキャリアパネルと比べても明らかだ。

RCCパネル8と9の間のTシールが、当初有力な仮説と考えていた。

RCCパネル構造
RCCパネル構造

なぜこれが有力な仮説としてみられていたのか。Tシールを失うことによって、隙間ができるためだ。この隙間から高熱ガスが流れ込んだと推測できる。この隙間はリブがない場合には1.15インチ幅の隙間がある。また、リブが(機体側に)ついている場合には0.775インチの隙間である。

Tシール障害モード
Tシール障害モード

Tシールが有力であると私たちが考える理由のひとつは、KSCに集められたデブリでTシールの損傷が多く見られたからである。Tシールの損傷には3種類あった。
(1) 断面破損(cross sectional fracture):リブとface plateを断面的に切断したところで、分離している
(2) face plate破損:sliding plateがリブと交差するところで裂けている
(3) 端部破損(flange fracture):この面に衝撃を与えるとリブがはずれてしまう

RCCパネルNo.8,9間のTシール
RCCパネルNo.8,9間のTシール

NASAが発表したTシールについて、当初8番(RCCパネルNo.8とNo.9の間)の位置だと考えられていたが、今までの調査でふたつの破片に見られる浸食は、それ以降の調査の結果、同様の浸食パターンが10番の位置である可能性もあることが発覚した。現段階ではどちらも同じぐらいの可能性と思われる。

左舷RCCパネルNo.8
左舷RCCパネルNo.8
これは8番タイルの写真であり、回収された3つの破片により構成される。3つの破片は全て上半分のものである。肉眼では分からないが、X線検査の結果、重金属の沈着物が規則的な模様状態で付いている。上下垂直に小さな金属の根粒が付着しており、RCCパネルの後方から筆につけたペンキを投げつけると似た模様ができる。これはTシールや後方のタイル脇から横方向に流れがあった可能性を否定している。
左翼内部の配線
左翼内部の配線

これは、スペースシャトル翼内部の梁部分の写真である。写真はスペースシャトル翼の内部から撮られたものだ。写真に書かれている色のついた線はスペースシャトル胴体に繋がっているOEXセンサーの配線で、全部で15本あるうちの6本が写真に記されている。

(写真で場所を指しながら)RCCパネル8とRCCパネル9は、ここに取り付けられている。

(写真で場所を指しながら)RCCパネル9は、ここからここまで取り付けられている。RCCパネル8はここからここまで取り付けられている。

配線の位置を見やすくするために、他の部品の上に線を書いた。赤い線は温度センサーでパネル9と10部分の翼桁と隙間の間に配線されている。ここで注目して欲しい点がある。データを解析した結果、図の左に示す秒数に従い、配線が中央から外に向かって順に切れていったことが判明した。配線の切れていった順は赤、黄色、青、濃い青だ。これにより亀裂がこの範囲の外側(outboard)から発生していないことを示している。

最後に切れた配線は緑で書かれているもので25秒後に起こっている。

この緑の配線は、(写真の)右側で他の色の配線と束ねられているため、その束ねた部分より右側で亀裂や断線が起こっていないことを示唆している。(写真を指しながら)

亀裂がTシール 8か10番目の位置でおきたのかまだ確定はできないが、実際に亀裂が発生した位置と(±)30インチの誤差まで絞れた。

 

最終更新日:2003年 4月30日

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