2003年4月16日午前3時00分(日本時間)
記者会見要旨
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ハロルド・ゲーマン委員長 |
次の公聴会は来週の水曜日、23日に行う。
CAIBは、4月30日をもって大部分の破片回収作業の終了を許可した。現在のところ、主な探索区域の8割で回収作業が完了しており、4月30日までには残る区域の作業が終了する予定だ。その後も特定の破片を回収するため、作業が続けられる区域もある。今のところ70,000個の破片、重量にして78,000ポンド(シャトルの約36%)の破片が回収された。
NASAは、コンピュータ上に、回収された左翼の破片をスキャンし、立体モデル(CAD:Computer Assisted Design)化する作業を進めている。
先週と今週、それぞれ1回ずつ、NASAから故障の木解析(FTA)の終了報告をうけた。私たちもマイナーな意見をいくつか述べたが、その解析の終了に同意した。
今日欠席しているジョン・ログズダン氏率いる第4グループも活動を始めている。このグループは基本的に調査結果をその背景や事情(例えば有人宇宙飛行の歴史、過去の調査や検査、予算的制約、管理者や優先順位の変更、(調査方法に関する)一般の期待など)に関連づける作業を行う。
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ステファン・ターコット委員 |
本日は、いくつかの主要調査作業の状況について説明を行う。まず断熱材について、次に、RCCに関する報告だ。また、ライトパターソン空軍基地で進行中のレーダーテストについても話す。ミシューにいるディール氏は、外部タンク断熱材の解体作業に立ち会っている。有名なバイポッド・ランプの断面図をお見せする。何度もテレビでご覧になったことと思うが、これが断面図だ。重さは約2.5ポンドある。
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これはET-94で、STS-107のET-93の姉妹タンクだ。2つのタンクはほぼ同じ構造である。2週間前にET-120のバイポッド・ランプの断面図について話したが、いくかの小さな空洞(void)が見つかっていた。
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まるで心臓手術のように、細心の注意を払って解体作業が進行中だ。時間と高度な技術が要求される。
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プル・プラグ(Pull Plug)と言って、球形の該当部位を取り出した後に解析を行う作業だ。丁寧に層ごとに解体し、小さな欠陥を探していく。また、グラフィック・ディスプレイを使って異常を探す。事故に直接関係する異常ではなかったが、このひとつめのバイポッドで異常が6つ発見された。
これは、他のデブリの有無を調べる解析だ。これは表面の様子。
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次に、電子顕微鏡を使って、異常なデブリがあるかどうか探し、表面の正確な外観を調べている。
ET-120で見つかった小空洞だ。右は電子顕微鏡で見た断熱材の細胞構造だ。
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調査中のもう一つの問題は、ET-91以降のバージョンで見つかった断熱材のストリンガー・バレー(Stringer
Valley)亀裂だ。ET-90までは通常のタンクで、ET-91は最初の超軽量タンクである。それまでのタンクではストリンガー亀裂はほとんど発見されていなかった。この異常についてはまだ調査中で、影響についても全貌が分かっていない。次のスライドはET-91以降の結果をお見せする。
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初めての亀裂はET-91で発見された。数字はこれまでこの超軽量タンクで見つかった異常の数を表している。全貌は分かっていないが、これらの亀裂からいくつかのシナリオが予想される。
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RCC(Reinforced Carbon-carbon:強化カーボン・カーボン型主翼前縁部)は本来100回のフライトに耐えられるように設計されていた。しかしその耐久性は損傷度によって、30回から40回のフライト、最大でも50回のフライトに減少した。フライト回数が増加するごとに異常箇所も増加した。それは射場の塗装に使用されている亜鉛の酸化によってできたピンホールなどである。さらに、RCC表面のシリコンカーバイド層の収縮によりピンホールが拡張することによって小さなクラック(Craze
Crack)ができる。この写真はディスカバリー号で発見された亀裂だ。
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これは、同じディスカバリー号のパネル10Lで見つかった亀裂(クラック)だ。これは酸化によってできた亀裂だ。熱は本来外側のシリコンカーバイドのコーティング層で耐えるように設計されているが、この作用が正常に行われていない疑いがある。
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これはアトランティス号のピンホールの例である。
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この写真はピンホールとその下で起こっている内面酸化(Subsurface
Oxidation)の拡大写真である。この写真から何が判明するかは確かではない。来週にはNASAから新しい検査方法(非破壊検査)の提案があると思う。
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ライトパターソン空軍基地で複数の研究が進められている。これは最後に提出されたTシールである。UHF帯照射試験(UHF帯周波数:300MHz-3GHz)の結果から26個の破片のうち14個は高いレーダークロスセクションに満たなかったので除外された。残りの11個のうち10個も弾道係数や質量率に合致しなかった。最後に残ったひとつと、このTシールを今週調べる予定になっている。
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今週の早い時期にいくつかの判断を行った。一つは再利用可能な固体ロケットモーターの組み立て、管理、そして関係するプログラムに関してだ。今週NASAから、これは事故原因のひとつでは無いという可能性を提示され、委員会としていくつかのマイナーな提言(OEXデータの調査結果を反映すること等)とともにこれを了承した。
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ハロルド・ゲーマン委員長 |
第2グループは運営上の問題を調査するグループである。
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ケネス・ヘス委員 |
先週と今後しばらくの間、第2グループは継続的に今まで取り扱ってきたいくつかの下位項目に関連した意思決定過程と、意思決定そのものについて調査していく。特に、今まで話をしていたEメールや、DoD(Department
of Defence:アメリカ国防総省)への画像要請、断熱材衝突の事象の判断プロセスなどについて見ていく。サリー・ライド氏がEメール、画像の要請関連、スティーブン・ワレス氏が断熱材衝突の事象の判断プロセス関連、ミッションが軌道に乗った後のPRCB(Program
Requirements Control Board:プログラム要求管理会議)、MMT(Mission Management Team:ミッション・マネージメント・チーム)に関連した意思決定とその過程の調査を指揮している。
今週のグループの活動として、クルーの健康状態、ミッションのためのトレーニングと準備、ペイロードとそのシャトルへの搭載、軌道に乗った後のオペレーション、軌道上におけるクルーの活動の考察等を完了し、事故の原因から削除した。
意思決定と意思決定過程に合わせて、NASAの安全プログラムの調査を、近々本格的に開始する。この一環として、委員会のメンバー全員のために4月28日にセミナーを開催する。安全組織、オペレーション、文化的背景や理論の考察、危機分析と管理、周知の事実となっている事故調査のモデルの考察、安全マトリックスとそれについての健全な(バランスのとれた)決断方法等々を見ていく。パネリストとして産業界、学術界、政府など各界から協力を得ている。テキサスA&M大学のメアリー・K・オコナー、プロセス安全センターのディレクターであるサム・アダム博士、デュポン社の安全環境衛生部のデイブ・グルービー、インテル社のジェームス・ウィット、パネリストとしてMIT(マサチューセッツ工科大学)のナンシー・ラディソン博士、オハイオ州立大学のデビット・ウッズ、安全性評議会の会長であるアラン・マクミラン氏を迎えている。
日曜日の午後、長時間にわたって調査について協議を行い、月曜日には1日かけて今述べたような様々な問題について、委員の意識向上のために取りあげるので、全員にとって有益な会議となるだろう。
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スコット・ハバード委員 |
グループ3の他のメンバーは、それぞれの調査を追跡している。ジェームス・ハロック氏はセンサー・データを調査中だ。また、以前に示した故障の木解析(FTA)の調査を行っている。
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ダグラス・オシャロフ氏はデブリから採取したデブリサンプルの化学分析、また断熱材にかかる分析を行っている。
ロジャー・テトラウト氏は今日KSCに向かい、デブリで回収された最後の破片を調査している。
シェイラ・ウィドナール氏は、ここヒューストンで熱空力データ(aerothermal dynamic data)を調査している。
私はここで何をしたいかというと、我々の統合アプローチを時間的に簡単に説明したいと思う。
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我々がどのようにして3つの異なったデータを結合しようとしているか示したいと思う。温度データその他のセンサーデータ、映像記録からの視覚的データ、回収されたデブリの分析データから、熱がどこから翼に侵入したかを理解する努力をしている。我々のチャレンジは、この異なった調査をいかに統合、整理するかである。また、この図面から分かるように、ここ6週間で行うインパクトテストにどのようにアプローチしているかが分かるかと思う。これには後ほど触れる。
断熱材が左翼に当たった時、なにが起こったか理解するために、最適な衝撃テストを行わなければならない。このテストを構成するため、これらのデータをチェックしていくわけだが、現在これらのデータは同じ方向を示していない。よって、なるべく柔軟にテストを構成しなければいけない。これは1月後ほどでこれらの異なったデータがどのように統合してくるか反映させるためである。これからテストの結果が出て、最終的に最も可能性の高い原因を構成する。
この中から、最終的に最も疑わしい原因を導き出すのにつながる試験結果が出る。それがここで3つの異なるデータトラックへとなるわけだ。
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数週間前の断熱材衝突の足跡を示した計算を思い出していただけるだろうか。前縁部のRCCパネルと呼ばれる、衝突の可能性が最も強いゾーンがパネル6のものだ。この分析はNASAの5つのセンター、その他の機関や契約業者の分析結果に基づいて継続的に見直されており、新規の分析は次のスライドのものだが、予測衝撃ゾーンをパネル5,6,7からパネル7,8へと少し外側にずらしてある。
これは、全て視覚的分析によって行われており、視覚的分析による全てのデータポイントを検討して、軌跡に数点のポイントを追加したものだ。これは回転しながら落下し、翼にぶつかる物体を観察しながら、新たな軌道を描いたものだ。そうしている間に、衝撃ポイントは5,6,7のパネルのうち、6のパネルが中心だったものから、ごらんのように7,8と少し外側にずれたものだ。これで終わりではなく、この複雑なチームをリードしているジョンソン宇宙センターの画像解析チームの活動を注意深く検討すれば、この分析に関連して下された誤った判断について再検討しなければならないのは明らかだ。そのため、4月下旬にならないと、この分析の誤りに関連して、衝撃ポイントである可能性が一番高い部位についてこのいくつものチームからなる画像チームの意見は一致しないだろう。今後の展開を待っていてほしい。
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このスライドは、OEXから回収されたデータに基づいている。
現在721中622のチャンネルのデータを回収することができた。NASAはまだその全てのデータの解読を行ったわけではなく、作業は現在進行中である。
このスライドはパネル9後方とパネル9と10の接続部にあったセンサーのデータである。オービタが大気圏に再突入した500秒後に異常な高温が発生し、その後センサーが切断、もしくは溶解したかのようにデータが途切れた。これは先程お見せしたビジュアル・データよりも翼端方向(outboard)の異常を示す。このセンサーの周辺で異常が発生したのかどうかはまだ分からない。主翼前縁部で異常を感知したのがこの種類のセンサーだけであった可能性もある。
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これはデブリの解析をもとにしている。パネル8と9の接続部に他のパネルには見られない損傷が起きている。パネル8には溶けた金属が飛散した(splattered
metal)ような跡がみられ、RCC構造部は浸食されていた。
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通常厚さが0.5インチあるTシールとRCCパネルの接続部がナイフの刃のように10セント硬貨の薄さまで侵食されており、これは長時間にわたる異常な高熱の影響と思われる。これが何を意味するかはまだわからない。
キャリアパネル(RCCと機体底辺の間のパネル)も加熱した発泡スチロールのようにへこんで(slumped)いた。
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これまでに述べたように、まず、パネル5,6,7で何らかの衝突が起きた可能性があると思われたが、新たな解析ではパネル7、8が対象になった。温度データからは、パネル9,10で温度上昇が起きたことが示唆されている。またデブリのデータから、パネル8と9の間の接続部で異常が起きたことが分かる。
先ほども述べたとおり、デブリ収集とデータ収集作業は今月末まで続く。また、ビジュアル記録のデータ解析も今月末まで続き、OEXボックスなどの解析は今後何週間も続く予定だ。以上の理由から、シナリオは今後改善されるだろう。
この間に断熱材衝突テストを行い、断熱材が主翼前縁部に当たった時に何が起きたかを理解する必要がある。つまりそれが本当に亀裂の原因となったか検証するということだ。正確な位置はまだ突き止めていないが、スライド上で見るとパネル6か、あるいは9の周辺かもしれない。とにかくこの周辺の部位だ。このようなシナリオに至るまで、だいたい5週間くらいかかる。すべてのデータを収集するまで待てば、テストは7月か8月に行うことになるだろうが、それでは間に合わない。
そこで、このようなテスト構造体(RCCパネル(5~10)を並べた供試体)を作ってみた。これはNASAや委員会の了解を得たもので、前縁部RCCテストを開始した時に最大限の検証パターンが解析可能な結果をもたらすテスト構造体である。亀裂が起きたと思われる第一候補の箇所がRCC前縁部だ。
サウスウェスト研究所(Southwest Research Institute)でのテスト結果を修正するために、他のテストも進行中だ。6週間前は、主脚格納庫のドアで衝突が起きたと考えられていたため、その部分が4月25日あたりに完成する。その時点でタイルテストを開始するが、この部分が5月中旬に完成すれば、他のテストはすべて中止し、今言った部分についてのテストを開始する。現時点では、材料を調達してこの装置の製作が進んでいる。そして、最初の衝突テストが5月後半から数週間にかけて行われるだろう。
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私からは以上だ。
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