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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳)

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2003年4月9日午前3時00分(日本時間)

記者会見要旨

ハロルド・ゲーマン委員長

今週は委員会として、スペースシャトルのメインエンジンに関する解析について初めてNASAの故障の木解析(FTA)を完了した。土曜日にブリーフィングがあり、委員会は管理上のコメントをいくつかつけて、完了に同意した。FTAのシステムはNASAのシステムであり、委員会のシステムではないが、NASA側の調査は我々の同意がないと完了できない。もうひとつ、NASAの事故調査チームでの処理次第でもうすぐ終了しそうなFTAがある。今週後半にふたつ目のFTAが完了するかもしれない。

また、どういった方法で、どのようにデブリの捜索を終了するかという事についてのブリーフィングを受けた。地上の主要なデブリ捜索地域は76%終了している。つまり、主要区域の76%の地域を人が歩いて捜索をしたということだ。5,000から5,500の人が毎日捜索をしている。コロンビアの乾燥重量の32%が回収されており、正確な破片の数はわからないが、だいたい50,000個強の破片が回収されている。この地上からの捜索に加え、空中からの捜索などその他の方法での進展があるわけだが、湖や貯水池などを捜索する水中捜索も、基本的には100%終了している。サイドスキャンソナーなどで捜索した、2,900あまりの物体が発見されているが、オービタのデブリは水中ではひとつしか見つからなかった。

メインエンジンの部品
メインエンジンの部品

ルイジアナでの捜索は基本的には終了しており、主にメインエンジンの部品がいくつかみつかっている。委員会の要請を受けて、捜索隊はテキサスのインターステート(州間高速道路)45号線(I-45)以西の捜索を行っており、もちろんこれは初期の剥離の件に関連するものだ。以前から捜索は行っており、別に委員会が新たな区域を設定したわけではないが、もう少し精力的にしてほしいというお願いをした。I-45以西でRCCパネル(強化カーボン・カーボンパネル)とタイルの破片を発見しているが、この区域は主要なデブリ・フィールドではなかった所だ。最も西方で見つかった破片についてはウィドナール委員から説明がある。

委員会はデブリ捜索に人材を提供してくれた各機関に感謝している。90以上の機関が協力してくれ、素晴らしい活動をおさめている。ご存知の通り2週間前にヘリコプターと2人の命を亡くし、委員会としては非常に敏感になっているが、デブリの捜索は続けていく。特に西側の地域。協力している何千もの人に感謝しつつ、更なる成果を期待している。

もっともデブリがあると思われる地域の捜索の100%の完了に基づいて、チームのデブリ回収の段階的な終了の計画に基本的に合意しているが、他の地域の捜索をして、何かみつかれば更に捜索を続ける。

ひとつコメントしたいのは調査に貢献しているもうひとつのグループについてである。それはプレスの事で、みなさんのリサーチやコメントも自分たちの委員会の活動に役立っている。


デュアン・ディール委員

最新情報をお伝えする。ジョン・バリー空軍少将は、現在、人的要因と管理(management and human factors)に焦点に置き、全ての要素を取りまとめている。ステファン・ターコット空軍少将は、現在ワシントンDCで面談を行っており、来週KSCで続けて面談を行う予定だ。そしてミシューでは、ET120(外部タンク#120)の切開をちょうど終えたところだ。明日ミシューに行き、追って最新情報を伝える。

今後コロンビアに搭載されていたET93と同じ工程で製造されたET94(姉妹タンク)の切開を行っていく。

3つの下位集団(subgroup)があり、ハンティングトン・ビーチ(ボーイング社)で聞き込み調査を行っている。ハンティングトン・ビーチ からJSCに参考資料を送っている。

多くの資料(例えば射点での氷についての検査資料が81ページにもわたる)に目を通し、原因追及の為に何を焦点にするか、誰に専門的なアドバイスを聞くべきか等を理解するために目を通している。大量の電子データについての調査も行い、誰がなにを行ったか明確にしていく。そして、任された仕事をきちんと行っているかどうかについても確認している。様々な人(専門家、契約社員、政府の人々等)と面談を行っている。

現在実施中の様々なテストもモニターしている。ミシューでここ2、3週間に行われたテストに関しては、これから写真を紹介する。ライトパターソン空軍基地での(飛行2日目の)未確認物体に係る試験も継続している。

現在までに30の物質でテストを行った。まだはっきりとは分からないが、多くのことが分かってきている。引き続き今週、3, 4個のタイルを装着したキャリアパネル(内部構造体含む)、全てもしくは一部のRCC パネル、そしてTシールのテストも行っており、来週これらの結果を伝えられるだろう。

品質が今回の調査の鍵となる。多くの調査は契約社員に委託された。しかしながら我々が面談を行った結果、新しい調査やテスト手順が必要であることが分かった。NASA作業の根幹は契約によることから契約と業者の両方について調査を行う必要がある。

<スライド>

バイポッドランプ
バイポッドランプ

これは、コロンビア号のバイポッドランプである。記者会見で示すのは3回目である。+Yと-Yについては、この後の説明に関わってくるので、注目してほしい。

バイポッドランプ製造過程
バイポッドランプ製造過程

<次のスライド>
今度は、4~5日かけて再現したバイポッドランプの製造過程をまとめた45秒程度のビデオをみせる。ここでは切開のプロセスを見て欲しい。
この場面は、外部タンクに幾層も接着剤をスプレーしているところだ。更に立体的に形を整えている場面である。この段階では、道具を用いて手で行う作業と、レーザーを使用する作業とがある。この過程は普通4~5日を要する。

バイポッド断熱材の異常
バイポッド断熱材の異常

<次のスライド>
ここでは、(過去のフライトにおいて)既に知られているバイポッド断熱材の異常を表わしている。「既に知られている」ということを強調したい理由は、多くの人が異常はSTS-107のケースを含めても5つだと言っているからだ。我々はそのようなことを聞いているのではない。我々は、外部タンク離脱のビデオの中で、バイポッドが確認できるもののみに興味がある。夜間の打上げのためバイポッドが映像で確認できないこともあるし、STS-107のようにタンクが(機体の)反対側に回転してバイポッド断熱材が見えなくなってしまうこともある。だから、過去60回の飛行のうちなぜ5つと言われているのか、よくわからない。とりあえず現段階では、調査に使用できそうな映像を探し出しているところだ。

バイポッドランプ切開
バイポッドランプ切開

<次のスライド>
これはET-120ランプの切開を写したものである。バイポッド断熱材を4分割にした。

+Y側のバイポッド -Y側のバイポッド
+Y側のバイポッド
-Y側のバイポッド
バイポッドランプに見られる空隙

<次のスライド>
これは+Y(向かって右)バイポッドを切開したものである。ここには43の空隙(Void)が確認された。昨日の公聴会に出席した方は、クライオポンピングについて、つまりこのような場所に空隙があると何が起きるか聞かれただろう。
-Y(向かって左)に関しては、83の欠陥が確認された。ここでは、層の間にできた隙間や線が見える。

粘着テープ
粘着テープ

<次のスライド>
ひとつ非常に気になったのが、このバイポッド断熱材の中に粘着テープの貼られていた部分が確認されたことだ。このため、昨日の公聴会で、テープが貼られた場合の影響について質問を行った。これはダクトテープと呼ばれるもので、これを2分割したものが貼ってあった。

RCCパネルのピンホール
RCCパネルのピンホール

<次のスライド>
これは、強化カーボン・カーボン(RCC)である。今朝の公聴会でも詳しい話が出ている。まだ不明な点が多いが、引き続き調査を続けていく。

RCCパネルのピンホール
RCCパネルのピンホール

<次のスライド>
強化カーボン・カーボンのピンホールについて示している。
ピンホールは、1992年、12回の飛行後にコロンビア号(OV-102)で発見された。
ピンホールは全てのオービタで発見された。

ピンホールは、飛行経験が多いほど比例して多くなっていった。
(時間の経過とともに各パネルに最大で20~40個確認されている)。

ピンホールの原因と考えられるもの:
射点構造物の下塗り塗装から排出された亜鉛によるもの
再突入の際に起きる亜鉛、シリコンおよび酸素の結合によるもの

射点
射点

<次のスライド>(スライド:Launch Pad - Potential Zinc Source)
射点で亜鉛が付着した可能性がある。
左翼は整備塔を向いている。

オービタの環境露出
オービタの環境露出

<次のスライド>(スライド:Orbiter Environmental Exposure)
オービタの環境露出
機体組立棟(vertical assembly)から打上げ台までの露出時間が、コロンビア号は明らかに他のオービタと違っている。コロンビア号は他と比べてより長い時間の露出時間が計測されている。(フライト毎の平均で約1週間長い。)

過去の報告の見直し
過去の報告の見直し

<次のスライド>(スライド:Past Reports Review)
過去の報告の見直し
過去の報告書の焦点と提案の見直しについて。どのようにインフラストラクチャー(infrastructure:基盤設備)に投資され、5年計画が射点の老朽化を引き起こしたかについて見直している。品質プログラム(quality program)はすでに説明した。安全プログラム(safety program)では、作業員に関する面をみている。サリー・ライド委員のグループは技術面をみている。整備・管理(maintenance)もすでにみた。規約(contracts)はレーマンがみている。セキュリティは2001年のASAP(Aerospace Safety Advisory Panel:宇宙安全諮問委員会)ではじめてあらわれた。


サリー・ライド委員

グループ2の主な作業内容について説明をする。今週ケネス・ヘスとスティーブン・ワレスは私が担当する分野の面談をおこなっている。近々、CAIBに作業の進行状況および調査の結果を提出する予定だ。STS-107の訓練(地上クルーそして宇宙飛行士の訓練)の報告書をまとめている最中だが、調査の結果事故原因に繋がる要素は見当たらなかった。グループ1と共同でSTS-107のペイロードに関する報告書もまとめている最中であるが、これも調査の結果事故原因に繋がる要素は見当たらなかった。現在私たちは、ふたつの分野(断熱材衝突の分類と意思決定)に注目している。STS-107をはじめ、断熱材が問題となった過去のミッション(STS-112、STS-113)の調査に取り掛かっている。先週ケネス・ヘスによる断熱材に関する面談がおこなわれた。またSTS-107打上げ時のデブリ衝突による損傷に関する議論、解析、判断の調査をおこなっている。我々の作業は主に技術者レベル、請負業者レベル、プログラム・レベル、管理職レベルでのインタビューをおこない事故原因を解明することだ。補足のために議事録、ブリーフィングチャートやE-メールの情報も用いている。今までの情報から、いつ何がどのように起こったか判りはじめてきた。また、判断過程について文化(過去にあったあるフライトで問題があったにもかかわらず、以降問題視されなくなった)がどの程度関与しているかについても検討している。今後、コミュニケーションに係るプロセスについてはグループ4(ジョン・ログストン氏率いる予算、組織、労働力に係るグループ)に作業を移行することでより大きな視野から検討して頂く。


シェイラ・ウィドナール委員

グループ3(テクノロジーグループ)の活動の報告を行う。このグループは工学技術専門領域、物質、構造、空気力学、そして化学分析により事故(の原因)を理解していく。

スコット・ハバードは断熱材衝突のダメージの問題を調べている。サウスウェスト研究所(Southwest Research Institute)で行われるRCCパネルとタイルの両方の実験を調査している。実験では断熱材を射出する銃を使用して行っている。

ロジャー・テトラウトはデブリの落下地点、デブリによる損傷、そしてデブリ分析を担当している。

ジェームス・ハロックは様々なことを行っている。主にNASAが実施中のFTA(fault tree analysis:故障の木解析)の結果を調べている。センサーの調査もおこなっている。センサーからはいくつかのことが推測できる。センサーの配線焼失による真実が得られる。そしてOVE(おそらくOEXレコーダを指していると思われる。)の復元による断片データの調査にも加わっている。この結論を伝えるのはまだ早い。

私は再突入の空気熱力学に焦点を置いている。私の個人的な見解は、これは空力的な荷重(force)現象ではなく、空力的な加熱事象であると考えている。しかしながら、早期の空力(force)は判断ツールとなる。なんらかのダメージによる空力変化がある場合に、機体表面が加熱によってどのような変化があったのかが調べられる。

(スライド)
信号喪失、あるいはコントロール不能と我々が呼んでいる時点までは、長時間にわたって機体は正常なコントロール状態にあった。たとえ損傷を受け外見上に変化がみられたとしても機体は正常な軌跡を描くことができた。そして異常数値を示している(名目よりも下回った)空気力学的なデータに注目している。

異常なロールとヨー方向に慣性力が働いていた。主要イベントと発生地点を照らし合わせている。異常はカリフォルニア沖から始まった。スライドには青と黒により大気風によるデータを図示した。ロール慣性力の増加は揚力によるものだろう。

この分析が正確に行われる事が大切だということを申し上げておきたい。新しい情報が入るたびに分析のやり直しを行っており、黒線と青線の違いはNASAでこの分析を行っているグループが今は大気圏上層部の風のデータを保持しているため、そのデータの影響を含んでオリジナルの分析を修正したところ、違いがあらわれたものだ。というわけで、異常な空気力学的な力を出来るだけ正確な角度にゼロ出力しているような状態で、分析の繊細さについて述べれば、機体のロール慣性力が逆転するようなケースでは、(正確な)分析は出来なくなるので、この揺らぎの深読みはしないように。ただの分析上のブレイクダウンであるだけなので。

おもしろいのはロール慣性力の動きで、このロール慣性力の逆転は非常に興味深い。色々な空力学的シナリオがあるが、ロール慣性力の逆転を説明するものはない。ヨー慣性力の増加が左翼抵抗の増加からくる事はなんとなく理解しているが、ロール慣性力の増加は左側の揚力の増加からしか生じることはないので、現時点では理解が出来ない。

ロール慣性力が始まる時間については、これまでに(ビデオで)観察されたデブリとの関連については、別にデブリ14番に特別な意味はない。そして、この写真はその瞬間の機体が何を表しているかを推測させるものだが、自分の意見では、機体の外部形状が何かを表しており、これが自分が今追求している線だ。

左側の温度分布
左側の温度センサーの異常な上昇
左側の温度センサーの異常な上昇
RCCパネルを取り除いた場合の空力加熱の検証
RCCパネルを取り除いた場合の空力加熱の検証

次のスライドでは基本的にはOVEからのデータはあるが、それから結論を導くためにお見せするのではなく、典型的なOVEから取られたデータとそれがNASAが行ってきた他のテストとどのように関連があるかを示すためにお見せするものだ。

これはその中でも特に興味深いもので、左側の軌道制御システム(Orbital Maneuvering System:OMS)ポッドの温度センサーの(異常な上昇を示す)もので、その次のスライドはそれがどんなものかを示すもの。これは比較的平均的な飛行のデータで、このデータからこのような事が起こり、最初にマイナスからプラスに移行するのはそれほど珍しくなく、動いているフローの構造かもしれない。 次のスライドはNASAが行った風洞試験との関連でそれがどうなるかを考えたもの。NASAは個々のRCCパネルをひとつずつ取り除いたモデルで、空力と熱伝導を測定する、非常に総合的な試験を行っている。おもしろいのは、これがNASAが行った9番のRCCパネルを取り除いたテストの結果と関連があるようにみえることだ。再度言うが、これも精密な分析ではなく行っているテストとデータとの関連を示す一例として出しているだけである。しかし、モデルに塗布されているのは熱に敏感な塗料であり、黄色は高温部分で、この部分とアームスポットの前方部との関連づけを始められる。何度も言うがここでも色々な事象の説明をつけるためにしなければならない分析の一例にすぎない。

事故のシナリオとして浮上してきたRCCパネル全体の疑問について我々が非常に興味を持っているのは間違いない。

RCCパネルから剥離したデブリの位置
剥離したRCCパネルのデブリの位置

次のスライドは剥離したRCCパネルのデブリの位置が記されている。注目している点は、左翼のRCCパネルのデブリが右翼のRCCパネルのデブリより早い段階で剥がれ落ちていることだ。先ほどハロルド・ゲーマン議長が話したように我々はI-45より西で発見されるデブリに非常に興味を持っている。現在捜索の範囲が広げられ、特にI-45付近が重点的に捜査されている、この地帯で発見されるデブリは事故原因解明に繋がる可能性が非常に高いと私は考えている。現段階でもっとも西で発見されているデブリは、左翼の前縁部上側RCCパネル8か9の後方に装着されているタイルだ。今朝まで黒色タイルだと思われていたが、黒く変色した白いタイルである可能性が浮上してきた。

最終更新日:2003年 4月10日

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