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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳)

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2003年3月19日午前4時00分(日本時間)

記者会見要旨

ハロルド・ゲーマン委員長

本日はいつものように私が最初に話した後に、各メンバーが自分のグループの活動について報告し、質疑応答に入る。私は明日の午後にワシントンDCに向い、木曜に上院商業・科学・輸送委員会の公聴会で調査の進行状況について報告する。来週の公聴会は火曜と水曜にKSCにて実施する。内容はKSCでの活動(シャトル整備や打上げ)、そしてもちろんデブリ復元についてだ。そろそろ暫定的な提案(recommendation)が浮上してきた。これらの提案は様々な成熟段階にあるが、準備ができ次第、暫定的な提案を発表する。では最初にワレスから。

 

スティーブン・ワレス委員

自分のグループについてアップデート:サリー・ライド博士が委員会に加わった。意志決定(decision-making)問題について話したい。インタビューも1日何件か行っている。組織内のEメールのやりとりを調査する際はフェアに行おうとしている。今後の健全な技術的話し合いを長期的に阻むようなことはしたくない。
今後、私とヘス空将はワシントンでNASA高官にインタビューする予定。また、打上げに至るまでの様々なプロセス(飛行準備完了審査など)についても調査中。特に断熱材について、STS-112、STS-113、STS-107及び過去に行った断熱材事故について、徹底的に検証する予定。

また、メディアでもとりあげられているReturn to flight (飛行再開)についてはNASAと競合しているわけではない(いくつかのNASAの会議に出席している。)。本委員会は飛行再開に関して決定権を握るわけではない。同じゴールを共有しているのだ。NASAが現在発表している打上げ日は、今日まで行われている調査が全て正しくされていることを前提に話しているものであり、長期的な意味も含んでいる。NASAはSTS-112のバイポッドランプの断熱材、軌道上及びステーションでの修復能力などの課題に取り組んでいる。地上、宇宙からの観測技術にも取組み中。再突入プロファイルについても、改善の可能性について検討中だが、この部分についてはあまり多くは得られないと考えている。

 

デュアン・ディール委員

ここ1週間は各地を調査で回っている。ジョン・バリー空軍少将は公聴会の後、ワシントンDCに向かった(ため、欠席)。ステファン・ターコット空軍少将は先週KSCで、現在はダラスで、RCC製造工程を視察している。私自身はコロラドで面談を行い、その後ターコット少将とKSCで合流し、その後ニューオリンズでミシューに出向いた。

現在とこれからの焦点は、オービタに関する様々な書類に目を通し、非破壊検査等の検査過程を調査することだ。様々な実験にも立ち会っている。昨日と今日はミシューで燃料タンクのバイポッド(Bipod)の実験に立ち会った。
グループ2は、先週ミシューで実験を行った。今週は、ライト・パターソン空軍基地にて実験を行う予定。

この1週間で、30の面談を技術者、政府関係者、NASA管理者、検査監視担当者に対して行った。そのなかでも、検査監視担当者がどのように品質検査が正しく行われたかどうかを検証するのか、また、それをどのようにして承認(スタンプ)しているのかについて調査している。

NASAの調査は殆ど下請け業者に移された。面談や過程の調査を通してNASAの調査方法を検証する。外部燃料タンクは15階分の高さがあり、検査個所がたくさんある。オービタに至ってはさらに多くの検査個所がある。

起きた異常だけではなく、正常な部分も含めて調査を行っている。事故の原因ではないと特定できるものについて除いていく。まだ何も断定はできないが、スペースハブについても現在調査を行っている。

ミシューが断熱材の接着剤(GX6300)に古いものを使ったのではないかと指摘されたが、この接着剤は材料を混ぜてから有効期限が90分であり、使用する前に加熱する。有効期限が切れたものについては、これを見るとわかるように、固まってしまって使えない。もうひとつ断熱材を貼る前に使うプライマーの封止剤は有効期限は60分であり、同じような結果が出た。

断熱材を使う前に行う検査も調査した。断熱材は粘性(viscosity)実験が行われ、3フィート×3フィートのアルミ材に断熱材を吹き掛け、引っ張る力に対する耐久性を検査する。断熱材の修復工程なども視察した。

概要を簡単に説明する。まず、問題のバイポッドランプ(外部タンクのオービタとの結合部)の設計の歴史について。ET 1から13までのバイポッドランプは45度というかなり急傾斜の構造で、初期のフライトで使われた開発飛行計装ボックス(devlopmental flight instrumentation box)も断熱材で覆われていたが、このボックスはその後無くなった。タンク14から75ではカーブの角度も30度になり、進化が見られる。

タンク76から現在まで。写真は完全に断熱材に覆われた部分を示している。実はこれはSTS-112のもので、ウォレス氏の言ったようにバイポッドランプから後部角がとれてブースターの一部に当たった。というわけで、この部分がどう発展してきたかについて話す。ウォレス氏の言ったようにふたつ前のフライトでバイポッドランプの一部を失った。NASAは既に、これまで全てのタンクにあったバイポッドランプの下の材料を取り除く方向に動いている。

現在、ライトパターソン空軍基地の研究所で行われているレーダ信号実験にはふたつの目的がある。まず、飛行2日目から4日目にかけてオービタ周辺に見られた不思議な物体の解析である。レーダテストで物質の特性を知ることにより、この物体の正体が分かるかもしれない。

空軍リサーチ・ラボでは、現在28種類の物質を検査している。サーマルブランケット、タイル、封止剤、RCCなど。結果は来週のプレスブリーフィングで発表する予定だ。

何らかの物体が軌道上にあったことが事故6日後に発見されている。
シャトル飛行中、3,180回の空軍によるレーダ観測が行われたが、これは連続的に行われたものではない。

(次のフリップ)
これは現在調査しているものの一部である。特に宇宙ゴミとの関連性があるとは思っていない。スペース・ハブを見ると、布で覆われているのがわかる。黒く見える部分は、この布を固定するためのリングであり、これらについては打上げ前に引っ張りテストを行っている。これらが外れた可能性もある。

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調査を行っていく上で慎重にバランスの取れたプロセスを取ろうとしている。今のところ全て順調に推移しているといえる。

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これはKSCでよくみかける安全性プログラムのポスターである。宇宙飛行士とその家族の写真を掲載したりして、個人にアピールしようとしているのがわかる。

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インタビューなどに基づいた、事故を想起させるものだ。

(次のフリップ)
(シャトル事故原因解明のプロセスに関して)意見や批判がある場合、それをいつでも、誰でも意思表示することができる。これらのカードを使用することで簡潔にそれが可能になる。

不調が報告された場合、その担当者は罰されるのではなく褒賞が与えられる。しかし、以前は、その職員には作業を中断させたことを理由に一週間浜辺で休暇(week at the beach)が与えられるプログラムがあった。この褒賞制度は有給ではなかった。他には技術者がNASAの長官と食事をできる制度(L-M Director's Spot Award)、成績評価制度(performance recognition)で$2,500を報酬とした例もある。ロッキードおよびNASAの出版物で評価を受けた、NASA宇宙飛行士が優秀な技術者および職員に「シルバースヌーピー賞」を報酬として与える制度の他、recurring賞制度がある。
上記の報酬制度以外にも、現在私が持っている申告書はNASA施設のいたる所に設置されている。この申告書はNASA本部の安全レポートシステム(NASA Safety Reporting System)に直接送られる。この申告書は匿名で出せるようになっている。

NASAがどのような手法を用いてリスク調査をしているのかを検証している。どのようにして、いつ、なぜ、そしてどの範囲で断熱材の損傷、欠損がリスクとして認識されないようになったのかを調べている。

 

ジェームス・ハロック委員

スタンフォード大学物理学部のダグラス・オシャロフ(ノーベル賞物理学者)が調査に加わった。スコット・ハバード氏は、サウスウェスト・リサーチで断熱材の実験の準備に加わった。実験は2週間後に始まる。この際、今まで実験を行ってきた1インチ×1インチ×1インチ及び1インチ×1インチ×3インチよりも大きい物体を使用した実験を行うことを計画している。コロンビアの従兄タンクである外部燃料タンク(ET-120)に対して、X線などによる非破壊検査を行いバイポッド周辺でどのようなことが起こっているか確認し、その後一部を切り取り、隙間、亀裂等についての検査を明日1時間程度行う。その結果を見てコロンビア号に搭載されていたタンクの姉妹タンクであるET-94を使った実験を行う。

私自身は、隕石や宇宙ゴミによるオービタの損傷についても調査を行っている。オービタに搭載されていた加速度計のデータをもとに衝突があったか調べている。現在データの半分を調査し終えたが、現時点では何も情報は無い。

オービタ帰還予定日の前日におきた太陽フレアについての調査は、随時太陽の活動を監視しているボルダー(コロラド州)の宇宙環境センターとHansen空軍基地の協力を得た。再突入前日に起こったフレアの影響については事故後に地球に到達しているため要因とは考え難い。オービタが軌道を離れるときに発生した衝撃波について影響の可能性が懸念されたが、(太陽フレアは)太陽の周縁でおきたため、影響は少ないと考えられるが、引き続き調査を行う必要がある。

コロンビア号の写真
コロンビア号の写真

最初のスライドをお願いしたい。このスライドはカートランド空軍基地で撮影されたコロンビア号の写真で、現在見ているのはサンタ・クルーズ大学によって画像処理された写真である。これ以上画質の向上は望めないだろう。画像処理の手法に関する詳細は後で説明する。
写真を検証した結果、RCC製主翼前縁部の素材の欠損そしてショック・ショック・インターアクション(shock-shock interaction)のようなものが確認できる。なぜショック・ショック・インターアクション(shock shock interaction)がおきているのかは不明である。
下の図は初めスペースシャトルの尾部と推測された。しかし画像処理後、炎だという推測もあったがデブリの写真だと現段階では推測している。断定はできない。

シェイラ・ウィドナールはスペースシャトルと空気力学の関連を調べている。スペースシャトルの翼の外部と内部における空気力学的影響について検証している。

次はロジャー・テトラウトの担当している作業に関して説明する。彼が現在検証をおこなっているのは左車輪格納庫についてである。

左車輪格納庫の破片の復元
左車輪格納庫の破片の復元

興味深いのは、高温ガスの流れの痕跡であるスプレー・パターンの向きが変わっているということが判明したところである。シャトルの車輪格納庫のドアは外側(翼縁側)に向かって開くので、蝶番とは反対側にスプレー・パターンが向かうはずである。これは、ドアが閉まっていたことと、格納庫内に有る程度の圧力と熱が発生していたことを意味する。

ここではアップロックの角が一部熔けていることがわかる。この部分は6-4チタニウムである(アルミニウム6%、バナジウム4%、90%チタニウム)。これは3000度(華氏)に達すると溶け始めるため車輪格納庫の中は、3000度に達したということがわかる。これがどの時点で起きたのかはわからないが、噴射煙が双方向から吹き出たことを考えると、ドアはまだその位置にあったことがわかる。またドアの奥はとてつもない高温に覆われていたことがわかる。どの金属がアップロックにメッキされていたのかはまだわかっていない。クロミニウムかもしれない。それがわかれば、破損がどこで始まったかも推定できるようになるだろう。また、これが左車輪格納庫からのものであったかについては、右車輪格納庫のドア及びアップロック4つが見つかったことから左のものであると言えるだろう。
調査によって様々な情報が明らかになりつつあるので、非常に忙しい一週間だった。

 

最終更新日:2005年 1月13日

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