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コロンビア号事故調査委員会(CAIB)公式記者会見(仮訳)

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2003年3月12日午前4時00分(日本時間)

記者会見要旨

ハロルド・ゲーマン委員長

今日は3名の委員会メンバーが一緒にいる。それぞれの副委員会(sub-board)を代表する者たちで、左からオペレーション部門を調査中のケネス・ヘス、設備やメンテナンス問題を調査中のジョン・バリー、エンジニアリングおよび技術的問題を解析中のシェイラ・ウィドナール博士だ。私が最初のコメントをし、その後、彼らがそれぞれのグループを代表してコメント、それから質疑応答に移る。この会見は毎週やっていることだが、新しい情報は随時公開することにしている。対話中心で行いたいので、積極的に質問をして欲しい。

今週は有意義な週だったと言える。事故原因究明作業は論理的に進みつつある。つまり、オービタ解体時にどういう力が加わっていたか明らかになりつつある。残念ながら迅速に事故原因が究明されつつあるとは言えないが。また、オービタがダメージを受けた箇所についても徐々に明確になりつつある。調査や解析結果が出るたびに、真実がより明確になってきているが、それについては後で3名から説明があるだろう。

私たちは今も、以前お話しした6つの手法を中心に調査を進めている。すなわち空気力学的解析、熱解析、デブリ剥離のビデオ映像・写真解析、タイムラインの絞り込み、デブリの回収・割り付け・解析、そしてフライト中にオービタに対して為された全ての操作に関する文書の調査である。これらの6つの分野を元に謎を解明したいと思う。既に多くの作業がこの分野で為された。

今週、委員会は様々な詳細シナリオの検証を行った。オービタ解体に至ったシナリオの解明ということではなく、あるシナリオを却下あるいは採用するためにどんなテストが必要かを検討したということだ。この作業にかなりの時間をかけたが、まだ答えに至っていないので報告はここまでにしておく。

また、公聴会は非常に有益だったので今後も続けたい。次回の公聴会はJSCで月曜の午後と火曜の午前中にそれぞれ3~4時間ずつ行う予定で、事故原因調査について話す。温度解析や空気力学解析の専門家を呼び、図やムービーやビデオなどを使って説明をしてもらう。温度解析や空気力学解析に関して大学院レベルの話をするので、聞き終わった頃には調査の進み具合が分かるだろう。

デブリの分析も今週から積極的に始めた。様々な分析(金属の分析、熱試験など)をこれから行うが、同時に、デブリの状態を保持し、損失がないよう気が遣われている。この調査は、私たち(CAIB)が、NASA、NTSBなどの協力者たちと行っている。

先週発表したCAIBの新メンバーについて。サリー・ライド博士は先週から活発に調査に加わっている。ダグラス・オシャロフ博士は今週から加わる予定だ。ジョン・ログストン博士は来週から合流することになっている。

現在の調査状況について事実と数字をいくつか示す。

昨夜の時点でKSCに合計28,286のデブリが収集された。その内25,404の破片が識別された。その25,404の内、1,038が図に示されている(ハンガーにレイアウトされている)部分である。ご存知の通り、私たちはオービタの下部に興味があり(主脚、主脚格納庫ドア、タイル、エレボンなど)、レイアウトは2次元的に上下逆になっている。その他のデブリは記録し、保管されている。

現在回収されたデブリの総重量は39,300ポンド(全体の約18%~19%)である。毎日4,000人以上がデブリの回収作業に加わっている。先週は5,300人集まった日もあった。毎日12機の飛行機が空中から調査を行い、現在200強の物体がトリト・ベンドやニコドーシャス湖等の水中で観測されている。SSME(Space Shuttle Main Engine:スペースシャトルメインエンジン)が見つかることを期待している。尚、ハンガーにレイアウトされているデブリのうち、左翼部のものは233個である。

 

ケネス・ヘス委員

グループ2はスペースシャトルの打上げまでの過程、訓練、ペイロードそしてオペレーションの検証を担当している。先週申し上げたと思うが、私たちのグループは段階ごとに調査に取りかかっている。現在、調査のフェーズ 1の3分の2あたりに達したところだ。フェーズ 1はスペースシャトル打上げまでの過程を理解することが目的だ。

先週、訓練と認定(training and certification)、NASAから押収した記録、ペイロード関連資料の調査を行った。特に不自然な点は見当たらなかった。オペレーションの項目では、グループ1と共にDoDに事故に関する映像を要求し、またNASA技術者のE-mailのやりとりを検証した。

押収したミッション・コントロール・チームの記録の調査と、宇宙飛行士室との会見を始めた。ミッション・マネージメントの項目ではNASAの組織体制の検証を始め、打上げまでの過程やスペースシャトルが地球の軌道を周回している時に出された指示や判断について検証した。またMMT(Mission Management Team、ミッション管理チーム)の調査も始めた。

先週私はカートランド空軍基地を訪問した。ここは研究施設であり、またスター・ファイアー(Star Fire optical range)のある場所だ。ここで話題になった主翼前縁部の損傷が確認できる写真が撮られた。カートランド空軍基地を訪問した理由は、どのような技術で写真の補正が行われているかを調べるためだ。またどのような措置が国防省によってとられたかを確認したかったためでもある。現在、写真、空気力学、プラズマの専門家たちによって写真の検証が行われている。

私たちのグループには、ふたりの新しいメンバーが追加された。サリーライド博士(元宇宙飛行士)は飛行準備審査会(Fright Readiness Review: FRR)、打上認定過程(Launch Certification Processes)そして彼女の専門分野の検証を担当することになる。トレーシー・ディリンジャー博士はヒューマン・ファクター(Human Factors)や組織心理学(organizational psycologist)の専門家だ、マクドナルド博士の独立調査会(Independent Assessment)ではヒューマン・ファクターグループ(Human Factors Group)を担当していた。

近々、統合シミュレーション訓練(Integrated Simulation Training)を視察する。この訓練は宇宙飛行士と地上チームのための訓練だ。現在活動中のトレーニング過程に関しては、このシミュレーション訓練の視察が最後になるだろう。

来週には安全部門(Safety Organizations)とその過程を検証し、調査に取りかかるためのアウト・ラインを作成する。また数人のメンバーがワシントンD.CのNASA本部で面談調査をする予定である。

技術的な面のみならず、組織の体制を検証することがこの調査の重要な鍵となるだろう。先週マクドナルド博士は「正確な情報が手に入れば、管理する側の決断も適切になる体制である」と話した。組織体制の調査を行うことでマクドナルド博士の発言の意味を理解できるだろう。グループ1、2と協力して事故の解明作業に挑むつもりだ。近々フェーズ1を終了する見込みである。フェーズ2は、ヒューマン・ファクターの過程(Human Factors Process)の調査になる。

 

ジョン・バリー委員

デュアン・ディールが今KSCにおり、今夜ステファン・ターコットもKSCに向かう。来週の火曜日にはRCCパネルのベンダーを調査する。そしてケネス・ヘスのグループとD.C.で面談を予定している。私たちのグループが担当している分野はメンテナンス、設備、マネージメント、そして人間工学の考慮すべき事項である。いくつかのサブグループが調査に赴いている。各サブグループには2、3人のキーとなる調査員が含まれている。

いくつかメンテナンスの新しい情報を伝える。その後に設備の情報に移る。故障の木解析(FTA)は良いペースで進んでいる。この故障の木解析(FTA)は来週にはある程度の結果を委員会に提出できるだろう。SSME(Space Shuttle Main Engine:スペースシャトルメインエンジン)、SRB(Solid Rocket Booster:固体ロケットブースター)、そして固体ロケットモーターについては数週間で結果が出せると思う。確定したスケジュールはないが、よいペースで進んでいる。外部タンクの調査には14のグループが活動中で、故障の木解析(FTA)はまだ3,200ブロック残っているため時間がかかるだろう。

つぎに設備に関するスライドをいくつか紹介する。

バイポッド
外部燃料タンクのオービタとの結合部
バイポッドの断熱フォーム取り付け前の状態
バイポッドの断熱フォーム取り付け前の状態

これはバイポッド(Bipod)(注:外部燃料タンクのオービタとの前方結合部)だ。現在、断熱材(foam)を調査している。コロンビア号に使われたET-93(外部タンク)の組立工程を調査中で、固体ロケットブースタの取付け、取外し、再取付けが行われた結果、断熱材に係わる報告書が作られたが、これは異常ではない(not unusual)。

(次のスライドに移る)
これが断熱材の下にあるものだ。3種類のアブレータ(ablative material)がある。ここに示しているのはバイコルクであり、クライオポンピング(cryopumping)の問題と関係してくる。


クライオポンピングとは液体窒素(射点に設置された時に閉じ込められたガス、あるいは打上げ時に外部タンクへ燃料が移される際に閉じ込められたガスが冷却され液体化したもの)が急激に膨張(気化)し、これが起きると断熱材や、アブレーター、そして耐熱防御システム結合部を破壊することである。

(バイポッドの)アブレータは、該当場所に必要なものなのかどうかの疑問がある。空力的にも最適化することを考えて、現在NASAでは、これらのアブレータを外した設計を考えている。そしてバイポッドにも改修が行われると思う。(スライドを)見て分かると思うが、このバイポッドはかなりの傾斜がつけられている。完全性を保つために、航空力学的にも満たされた形への改修と、結合部の改修が目指されている。

RCC
RCCパネル
アトランティス号のパネル
アトランティス号のRCCパネル
パネルのサーモグラフィー
アトランティス号のRCCパネル(CTスキャン)
アトランティス号のRCCパネル
(サーモグラフィー)
ディスカバリー号のパネル側断面
ディスカバリー号のRCCパネル側断面

RCCパネルの最新情報を伝える。これは完成されたRCCパネルの図だ。見てわかるようにカーボン・カーボンの上部と下部にシリコンコーティングが施されている。この約4分の1インチコーティングが実際にRCCパネルを保護している。

(次のスライド)
もうひとつ調査中なのがRCCパネルのピンホールの問題で、これは酸化により表面下に隙間が生じることだ。(写真はアトランティス号のパネル)。

次のスライドはアトランティス号でみつかった異常だ。これはCTスキャンでみた写真で、表面及び下層にも問題があることがわかる。

次のスライド、これはまた別な視点で、サーモグラフィー(Thermography)と呼ばれるものだ。サーモグラフィーは表面上の一瞬の熱が冷却された時に表面下に何があるか調べることができる。これは先ほどと同じパネルで、エリア3、4及び5で隙間ができているのがわかる。

NASAは非破壊検査を行う予定で、このパネルを実験材料として使用中だ。

別のスライドはディスカバリーから見つかった、もうひとつのRCCパネルの側断面からのものの一部だ。表面に炭素シリコン炭化物(Carbon Silicon Carbide)が見え、その下にきれいな亀裂のようなものがその下にあり、その下には隙間が見られる。外観検査でも、叩き試験(tap test)をすると貫通するかもしれないし、しないかもしれない。

飛行2日目のデブリについては、ライト・パターソン空軍基地で解析されている。タイル、RCCパネルの覆い、氷、色の違い、機体のプレートなどの数々のアイテムについてレーダデータと比較を行っており、2日目に船体から剥離して飛んだものの見当がつくことを目指している。

もうひとつ、特色をあげるとすれば、上昇時の問題が興味深い。
打上げ時に風力を測定するのだが、風船を飛ばして横風がどこか把握する。横風がわかれば、ソフトウェア上でオービタの打上げ時のパラメータを設定できる。問題は、打上げ62秒後にパラメータ内だったが、大きな値が見られたこと。興味深いのは、今まで見られた最大のものふたつは両方ともコロンビアからのもので、いずれも39度の軌道傾斜角に投入し、両方とも軽量(light weight)タンクを装着していた点だ。オービタ左側に余分なストレスがかかっていなかったか調査中だ。

繰り返すが、充分にパラメータの範囲内ではあったが、オービタへの過渡期負荷を追跡した結果、この調査の中でもうひとつの可能性がでてきたということだ。

 

シェイラ・ウィドナール委員

グループ3の活動について報告する。現在、ハロック委員長が戻り、オービタ故障の木解析に取り組んでいる。スコット・ハバードとロジャー・テトラウトは現在、KSCでデブリの化学解析及び材料解析を行うことを検討中だ。
また、今週後半にはノーベル賞受賞者であるスタンフォード大の物理学者ダグラス・オシャロフ氏もグループに迎え入れるつもりだ。

先週、KSCでデブリを見てフライト中に起きたダメージを調査した。空気力学者として私は、温度、オービタにかかった動的圧力に特に注目した。また、多くの科学界・エンジニアリング界の方々のデータ提供にも感謝する。中でも気象レーダーシステムに関する情報をあげる。アメリカではレーダーを使った気象観測がさかんに行われているが、これはNational Center for Atmospheric Research及びリンカーン研究所(Lincoln Laboratory)に勤めていた気象予報士が提供してくれたものだ。今後、データベースの中から有益な情報があるか作業を行っていく。この調査はまだ進行中なのでまだ結果報告はできない。

また、先週、MITの同僚と有益なブレーンストーミングを行った。特に熱環境及び高温にさらされた場合のアルミニウム特性について話した。アルミニウムは酸化被覆(oxide coating)がなければ非常に反応性が高く、高温と高速のガス流にさらされると、アルミ成分が気化し、燃焼する可能性がある。

私たちのグループは他にも様々なシナリオを検討中だ。翼の縁に注目したシナリオもある。フライトデータを元に風洞を使用しフライト状況を再現したところ、左翼の下で空気力学的バランスの不均衡がみられた。NASAは一連の風洞テストを行い、翼縁にどれほどのダメージが与えられると事故のような不均衡が起きるのかを調査している。その結果、翼縁のタイルが1枚剥がれたからといって事故のような結果にならないことが判明した。今後もこの風洞テストを続けていく。

また、翼縁付近に当たった断熱材のダメージ度合についても調査中だ。それについて4秒程度のエンドレスビデオをお見せする。断熱材が翼に当たっている様子を見て欲しい。あの白いのがそれだ。断熱材がオービタの下部に当たり、粉砕している。私たちはこの件について非常に興味を持っている。

 

ハロルド・ゲーマン委員長

今のビデオについて、アマチュア的な見解をすると、デブリがひとつしかないように見えるが、違う画像を見ると、実際は複数ある。もうひとつ、デブリの当たった場所について、翼縁RCCパネルの下半分、翼の裏側(前縁部の裏側)、RCCパネルの6、7、8番あたりに衝突したと思われる。残念ながらその部分の写真はない。また、この衝突の結果、タイルの損失も見られなかった。興味を引く証拠ではあるが、事実と一致しない箇所もある。

 

最終更新日:2003年 3月18日

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