それについては主に3つのことが挙げられる。まず、機体の保守・点検作業(OMM)をパームデールからフロリダに移行する決断、それからエンジニアリング部をハンティントンビーチからテキサスとフロリダに移行すること、それから3つめが今言った民営化レポートだ。 OMMを行うのにふさわしい場所については、以前から論議があった。90年代に2、3の調査、97年頃にNASA内部での調査が行われ、98年に監察官(Inspector
General) のオフィスによって行われた調査もある。これらの調査は全て、最もコストパフォーマンスが良く、長期的にオービタのメンテナンスを行う技術的キャパシティのある場所を探すために行われた。 90年代終わりに行った調査レポートによれば、場所の適性はフライト回数に依存するということだった。例えば年間6回以上のフライトを行う場合は、フロリダで整備を行うための設備がなかった。既存の3つのオービタ整備設備OPFをフル回転させてもフライト回数に追いつくのが精一杯で、設備の1つをメンテナンスに宛てることができなかったからだ。また、同調査によれば年6回以下のフライト回数の場合はフロリダが候補になった。当時は年8回のフライトを予想したので、コロンビアの整備をパームデールの設備で整備を行うことにした。だが、予想フライト回数が変われば場所を再検討するようにということだった。 コロンビアの整備が終了すると、その後の予想フライト回数は6回以下に減ったことがわかった。事実、その後のフライト回数は2年で4回、1年は6~7回に増えたが、今後は5回位になりそうだ。6に増えることもあるかもしれない。このフライト回数ならばフロリダの施設がふさわしく、新たな施設を用意することもないと判断した。事実、新たな施設の建造費が法外だったのでそれは正しい判断だった。 また、労働人員についても考慮が必要だった。パームデール施設の場合、大勢の労働力を雇い、整備が完成すれば解雇するというやり方をとっていたが、長期的に見ると、人を雇っては解雇するという方法では技術力やマネージメント・スケジュール・プランニングに関する知識が失われると判断した。オービタのような複雑な乗物のオーバーホールの場合、これは非常に重要な要素だ。 また、ほとんどの技術専門家がKSCに移行している事態になっていたので、フロリダには安定した労働力があった。こういうことから、人員の入れ替えの激しいパームデール(つまり雇用と解雇を繰り返し、技術力を失う可能性もある)と、KSC側のオービタに関する知識豊富な安定した労働力を天秤にかけると、長期的に考えてもフロリダがオービタの整備に適すると判断したわけだ。 またフロリダは技術面、安全面だけでなく、コスト面でも適していた。既にインフラがそろっていたからだ。というわけで、安全面コスト面でフロリダが非常に捨てがたかったので、私がフロリダ移行を推した。先月のOV103整備に関しても、スケジュール面、技術面、コスト面で全て順調だ。フロリダでの活動には非常に満足している。また、フロリダ施設の調査については実は90年代初頭にも行っているので最初ではない。次にハンティントンビーチへの移行について話そう。 ハンティングトン・ビーチからのエンジニア設備の移動は、もとはユナイテッド・スペース・アライアンス社(USA)の発案だった。 より顧客に近く、東海岸と西海岸を結ぶために、エンジニア設計センターと、ヒューストンとフロリダに位置するオペレーション・センターの相関性をもとに、NASAに提案された。長期的には、効率性も上がり、コスト削減も可能であると思われた。ユナイテッド・スペース・アライアンス社は元請業者で、ボーイングはその下請け業者である。ボーイングはエンジニア設備の統合という難題を引き受けてくれた。 当初はこの移動について多くの懸念が見られた。まず移動に必要とされた手順は、重要(必要)な技術の識別、新しい社員の研修企画、認定書(certification)作成だった。移動後、適切な技術と専門知識が備わるように手配された。 ラス・ターナーUSA最高責任者とマイク・モット・ボーイング社本部長とは、定期的に会議を重ね、この移動の数多くの課題について話し合った。USAとボーイング社の高官、影響を受けるプロジェクト事務局(システム緩和局とオービタ事務局)は、具体的に移動に加わる社員の名前や、必要とされる専門知識について毎週詳しく話し合った。 最終的には前からいた社員は24%となり、残りは全員新しく雇った。しかし、新しく雇ったといっても、10年から15年のシャトルに関する経験を持つ人材ばかりを集めた。各技術グループに必要な専門家が足りているかなども審議された。足りない(out
of family)と見なされた場合は、NASAの技術スタッフが、支援して管理するシステムをとった。最初は大いに懸念されていたが、NASA、USA、ボーイング社の総合協力によって、飛行ミッションの実施率も維持し、必要な技術と専門家も補うことができた。 |