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コロンビア号事故に関する米議会公聴会2月12日(仮訳)

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日 時
2003年2月12日午後11時30分~2月13日午前3時00分(日本時間)
場 所
米国上院Russel会館
出席者
マケイン上院商業科学輸送委員会委員長
 
ボーラート下院科学委員会委員長
 
ボーリングス上院商業科学輸送委員会ランキング(最高位)メンバー
 
ローラバッカー下院航空宇宙小委員会委員長
 
他、上院商業科学運輸委員会委員、下院科学委員会委員、下院航空宇宙小委員会委員

公聴会要旨

ジョン・マケイン上院議員(議長)

オキーフNASA長官の陳述の後、各委員会員は質疑応答に4分間与えられる。質問は上院議員、下院議員、交互に行う。

2月1日にアメリカは大きな悲劇に見舞われた。強い協力体制の元、全力で事故の究明がなされている。失われた7つの勇敢な英雄たちは私たちの心に永遠に生き続けるだろう。彼らはこの国のためだけではなく、世界のために、宇宙開発、科学の進歩に多大な貢献をした。自分たちの夢、そして人類の夢のために、身を捧げ、命を犠牲にしたのだ。宇宙開発の未来に向けて、我々は責任を持って、間違いを正し、前進しなければならない。

今日はコロンビア号の事故要因、調査状況、そしてこのような事故が二度と起こらないための対策について話し合いたいと思う。このような合同聴聞会はこれからも度々行われる。今回のコロンビア号の件に限らず、事故によってもちあがった宇宙開発そのものの問題点などについても討議していきたい。その一部として、有人・無人ミッションそれぞれの役割、シャトル・プログラムの必要性・コスト、ISS、NASAのマネジメント体制について話し合っていく予定である。有人宇宙探検は続くべきだと思うが、それと同時に、慎重な討議と計画をもとにすべきである。他にも、行政官がシャトル・プログラムの安全を確保するため、適切な対策を行ってきたのか、必要な資金が与えられていたのかなど、我々自身も含めて、シャトル・プログラムの安全性について何か問題があったのかを調査していく。

NASAとオキーフ長官の多大な努力を称賛する。NASAはこの国を含め、全世界の宇宙開発に対しての夢を背負っており、今まで見事にその期待に応えてきた。今回の事故調査に関しても、皆、チャレンジャー号事故調査委員会(Rogers Commission)に比べ、公開されている情報の膨大な量に感心している。

私たちは、できる限りを尽くして、この悲劇の真相を突き止めるよう、失われた宇宙飛行士たちのご家族、全NASA関係者、国民に約束する。

今日この聴聞会に、オキーフNASA長官が来てくれたことに感謝する。

 

ボーラート下院議員

まずは今回の事故の犠牲者、コロンビア号クルーに敬意を表明したい。私たちは日々最大限の努力を尽くしながら事故原因解明の調査を続けている。この調査を成功させるためにNASA、ホワイトハウス、議会、全ての協力を求めたい。ゲーマン氏の調査委員会にも原因解明のために必要な協力をお願いしたい。委員会は外圧を排除し、さらなる知識、技術、経験豊富な人員増員することも必要だと思う。

今まで回答のなかった二つのポリシーに関わる疑問がある。一つは今後継続されるシャトル飛行の真のリスクはなんであるか?二つ目は今後シャトル計画が継続されればそれから得るものは本当にあるのか?このシャトル計画に力を入れる事は、他のNASAの計画に力を入れるのと比べてどの位の成果が得られるのか?これらの質問は今回の事故原因が解明されるまでははっきりしないだろう。

今回の会見は状況報告である。質問に対してもNASA長官は“まだわからない”という回答でも構わない。現在調査は進行中で、我々も多くの回答を得ていない。

 

ホーリングス上院議員

シャーウッド・ボーラート議長、ハロルド・ゲーマン氏の、証拠が集まるまでは結論を急ぎたくないという考え方は分かった。朝刊でハロルド・ゲーマン氏が信憑性のある物的証拠、データ等をもとに事故の原因を結論したいと述べたと書いてある。しかし私は現時点でもうすでに信憑性のある物的証拠、データ等は回収されていると思う。私には、何が起こったかあやふやにしている感じが受けられる。長年に渡り、NASAはシャトルの耐熱タイルに問題があると指摘されてきた。コロンビアの初飛行の際にはタイルが全て剥がれ落ちたことは我々も知っている。1994年スタンフォードとカーネギー・メロンの合同実験によるリスク・マネージメント調査では、タイルの欠損がリスクの85%をしめることが判明した。1997年この実験はNational Academy of Sciencesで再検証され同じ結果が出た。2000年の3月ジョンソン宇宙センターで行われた実験では強化カーボン・カーボン(RCC)製主翼前縁部の安全性が問題として浮き彫りになった。1月16日コロンビア打上げから81秒後、デブリがシャトルオービターを直撃した映像を入手した。左翼に縦30インチ、幅7インチ、2インチ深い傷がつけられた。着陸18分前左翼の4つのセンサーが故障した。通信が途絶える8分前クリング氏が左翼部分の温度データの欠落を確認している。これらの証拠から、事故の原因は明らかに打上げ時に壊れた左翼部分にあると思われる。チャレンジャーの事故と同様今回の事故の原因はもう分かっているのではないか?

 

ジョン・マケイン上院議員(議長)

ありがとうございます、ホ-リングス上院議員。では、続いてNASAのオキ-フ長官と同席している副長官のフレッド・グレゴリーさん 、宇宙飛行局局長のウィリアムさん席についてください。全ての情報を議会そしてアメリカ国民に公開していただいていることに大変感謝します。

 

ショーン・オキ-フ長官

議会のみなさんおはようございます。上院商業科学運輸委員会そして、下院宇宙航空小委員会の前で、ここにコロンビアのクルーとシャトルの喪失についての推定について証言できることを感謝します。
事故から11日目になる今朝、クル-たちの家族そして、アメリカ国民たちは、深い悲しみの中にいます。現在、そして今後同じ事が起きないようにシャトルとクル-の喪失の原因追及が行われています。そして、今後の人類にとって宇宙飛行がより安全になるよう研究を続けています。
ここ45年間のNASAの活動は、議会の多大な援助のもとにあります。NASAのチャ-タ-は、議会から与えられたものであるし、宇宙、地球、太陽系、そして宇宙探査の発展に役立っています。今まで議会はNASAを援助してきましたし、NASAの発展に多大な役割を果たしてきました。

今朝は、とても厳しい質問を受けることになると思いますが、当然だと思っています。しかしながら自問自答することは、よりいっそう厳しいものであります。

しかしながら、事故原因に関しては、どの様な結論に至ったとしても、見落としがあったとは考えられません。安全には、通常から特に気を付けています。
一例として、昨年2インチより小さな亀裂が金属性のライナ-(整流板)から発見されたとき、問題が解決するまでは飛行を行いませんでした。亀裂の発見がどれだけ、重要であったかを表すために、亀裂を発見したデビットという社員を表彰しました。

それから1年の間、安全性を重視してきました。私は、安全チェックを行う者たちが、彼らの仕事の重要性を承知していることを確信しています。

今週は、アメリカ全土のNASAセンタ-とフィ-ルドで働く者と、そしてとても協力的な全国20箇所以上の州政府から2000人以上の人たちが重要なデ-タの分析と回復作業に携わっています。彼らの仕事ぶりを誇りに思っています。

先週ブッシュ大統領も査察され、NASAの人々は激励されました。これからもアメリカの宇宙計画は継続する予定です。

今日は事故当日からNASAが取った数々の行動を報告したい。全ての調査チームや人員は独立した立場を取りながら調査を続けていることをお知らせしたい。17年前のチャレンジャー号の悲劇から得られた経験をもとに、今回のような事故を起こさないために最大限の努力をして数々のシミュレーションを続けてきたが、事故は起きてしまいました。

コロンビア号に異常が見つかったとき、私は着地予定地のKSCで待機していました。
08:59AM(EST) コロンビア号クルーとの通信が途絶えた
09:16AM 着陸予定時刻カウンターがゼロを表示したがコロンビア号はそこにいなかった
09:29AM 私はコントロールセンターに向かいコンテンジェンシープランへの移行を表明した
その後ホワイトハウスにて事故の報告が大統領や、イスラエルの政府などに伝えられた。
まずテロリズムの疑問があがったが状況からテロの可能性は低いと考えた。
10:00AM頃 NASAに必要な人員が集結しだした
10:30AM頃 FEMA(Federal Emergency Management Agency)の協力のもとに、デブリやクルー捜索がはじまった。
その後、事故調査委員会(Columbia Accident Investigation Board: CAIB)を召集しました。
11:30AM頃 KSCでクルーの家族との面談。我々が与えられる最大限のサポートと今後のために安全面向上を彼らに誓いました。
01:15PM テレビを通して全国に、この悲劇に対しての悔やみとCAIBが設立されることを伝えました。CAIBは同日午後5時に、MIT(Mishap Investigation Team)の会見中、正式に設立されました。
06:00PM Department of Homeland Security、Federal Emergency Management Agency(FEMA) 、国防省、 FBI、 連邦航空局(Federal Aviation Administration)と事故状況について、電話会議を行いました。
06:40PM 国家運輸安全委員会(National transportation safety board)が、MITの一部として調査に加わるため、バークスデール空軍基地へ移動。のちCAIBとの協力体制を持ちました。

2月2日、事故後30時間経過、CAIBのゲーマン委員長が最初の会議をバークスデール空軍基地にて行いました。同じ日、毎日2回の会見を行う体制が組まれました。

CAIBの委員は航空事故調査に関する長年の経験と知識を持つものを中心に選ばれました。この国で起きた大きな航空事故の調査指揮官、または調査員を努めてきた者ばかりです。全員の経験を合わせれば、約50の航空事故の経験と知識をもっていることになります。世界でもトップレベルの専門家ばかりであります。

CAIBがNASAから完全に独立した調査委員会であることを我々は保証します。元々大統領の許可を得たチャーターによって設立された委員会だが、変更の必要があれば、それに応じて体制を変えていく。2月3日より、ロバート・カブInspector GeneralはCAIBと行動し、その調査状況について、議会と大統領に報告しています。CAIBはNASAに事故原因について故障の木解析(Fault Tree Analysis: FTA)を行うよう指示しました。

日曜(2月2日)、MITはテキサスとルイジアナの破片回収チームと行動をともにしました。テキサスは800人の州兵を出動させました。協力要請の数時間後にすぐ対応してくださったリック・ペリー州知事に感謝しています。

火曜(2月4日)、NASA関係者200人がテキサス、ルイジアナ、アリゾナ、カルフォルニアにて破片回収作業を行いました。FEMA、環境保護局、FBI、国防省、運輸省、US Forest Service、テキサス・ルイジアナ州兵軍などから2000人以上の人が破片回収作業に取り組みました。

水曜(2月5日)、宇宙飛行士たちの遺体はドーバー空軍基地に移され、フレッド・グレゴリーNASA副長官が追悼式を行いました。

一週間を通して破片回収作業は順調に進み、現在12,000の破片が回収されました。何百平方マイルにも渡り、天候や地形に左右されながら依然として作業は続いています。幸い破片の落下によってけがをした者はいません。これからも安全を重視し続けます。

ほとんど毎日、大統領と副大統領に、調査状況について報告しています。

昨日(2月11日)、現在回収された破片がKSCに輸送されてきました。

先週土曜(2月8日)、テキサス・ルイジアナの破片回収チームを訪問しました。絶え間なく働いている、特にボランティアの方々には本当に感謝しています。

スペースシャトルの状況について少し説明します。
ディスカバリー号は現在点検とアップ・グレードが行われています、この作業は2004年4月に終わる予定です。
アトランティス号はすでに組み立てを終え、現在ケネディ宇宙センターに保管されています。この機体はSTS-114ミッションに使われる予定でした。
エンデバー号はSTS-115ミッションに使われる予定でした。当初の予定では、STS-114ミッションは国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングされる予定でした。私はこのミッションのコマンダーであるアイリーン・コリンズと金曜日に会い、ミッションはコロンビア事故の原因判明までホールド状態になるという事を伝えました。
現時点ではシャトル飛行の再開のめどはまだついていません。シャトル飛行の再開はコロンビア号事故調査委員会に委ねられています。
コロンビア号はNASAの最初のオービターでした。28回のミッションをこなし2001年2月には18ヶ月に及ぶオーバホールを終えました。STS-107ミッションはオーバホール後のコロンビア号にとって2回目のフライトでありました。

ISSのクルーにも今回の事故のことはすぐに伝えられ、彼らは自分のミッションを続けながら悲劇にあった同胞に敬意を表明しました。事故の翌日に、ロシアはISSに向けた無人補給機の打上げに成功したことを発表しました。この補給物資が到着したおかげで現在ISSにいるクルーは今年の6月までは必要な物資が揃っています。物資補給などの計画予定は予定通りロシア側が行います。次回の打上げ予定は6月です。限られたISSの広さを考慮に入れ、現在はロシア側とどのような物資を届けるのかを相談中です。ソユーズの打上げは4月に行います。これらのチームの目的は(1) ISS計画の継続、(2) ISSの建設、(3) ISSの利用です。ISSのクルーには事故報告もちゃんと行う予定です。ISSに関係している国々の代表とも会談し、今後も計画を継続していく意向を伝えました。現在、ISSは安定しており、1年間はシャトルの物資補給が無くても問題はありません。4月以降の最大の関心は水の補給であり、プログレスにより補給フライトの追加を考えています。どのような処置が取られようと、現在ISSにいるクルーには、全てを受け入れる体制であることを伝えてきました。

去年11月に立案された2003年の宇宙輸送計画があります。この計画はすでに予算が認可されています。この計画には三つの重要な要素があります。シャトル、orbital space plane、と打上げ技術向上(Space Launch Initiative: SLI)です。このプランはシャトルの安全性と計画の継続性を保証するものです。Orbital space planeはクルー交代にも対応できるように設計され、ISSとドッキングできるよう設計する予定です。次世代のシャトル開発や打上げ技術向上なども計画に含まれます。

大統領が2002年11月に提出した2003年度予算教書にはISSの予算増加が盛り込まれています。ISSでの実験はアメリカ合衆国にとって重要です。実験の進行をなるべくスムーズに行う為に予算の増加が必要です。
私たちNASAにとって宇宙飛行とは研究、探検、発見であり、そして感動です。STS-107のクルーたちは宇宙という特殊な空間、環境で、我々人類にとって非常に大切な研究を行いました。コロンビア号のクルーたちは癌、農作物の収穫率の上昇、燃焼、地震に強い建物の建設、そしてダスト・ストームが天気に与える影響といった研究を行いました。彼らはこの研究に対し誇りを持っていました。
コロンビアのクルーと同様にISSのクルーもまた重要な研究を行っています。彼らはすでに60以上の実験をこなしてきました。生理学、遺伝学、植物生物学、地球観測、物理学、細胞生物学などの分野の研究がISSで行われました。ISSで行われた実験を基に科学者たちは新しい知識や方法を発見しました。薬物テスト、病原菌の構造、抗生物質の改良、地球の天候の変化、植生そして作物に関しての改良などが実験から得られた成果です。
現在NASAはISSを重要視しています。私たちの目的は明確です。第一にクルーたちを危険にさらさないこと、第二はISSを無人にさせないこと、そして第三に安全なシャトルの運行を再開すること。これらを実現させる為にはクルーを無事に地球に帰還させることが大事です。

ジョンソン宇宙センター(JSC)での追悼式典で大統領が述べたように、「我々の探求心、追求心に理由を付けることはできない。生まれもって人の心に刻み込まれたものなのだ。我々は神の創造の一部であり、その創造の全てを理解しようとする。そしてもっとも優秀な者たちを冒険に送り出し、無事に戻ることを祈るのだ。彼らは人類の平和大使として旅立ち、人類は彼らに恩義を感じる。」大統領の言葉は私たちの地球を守り、理解し、宇宙を探検し、新たな生命を探し、そして未来の子供たちに夢を与えるNASAの力を見事に表していると思います。

私たちは、全力で事故調査とISSクルーの安全性の確保を行いつつも、火星探査ローバー、宇宙望遠鏡などのプロジェクトを進行させる予定です。

私たちにとって96%から99%ではよい点数とは言えません。常に100%が要求されています。有人ミッションになると、私たちの基準の高さは尋常ではありません。しかし、いま私たちがするべきことは、問題を突き止め、直し、安全を確保し、プロジェクトを再開することです。優秀な調査委員会のもと、事故の原因は解明され、宇宙開発は続きます。

長官の仕事の一部として、働いている者たちにNASAが行っていること、何をすることが可能かを思い起こさせる役目があります。そして、これはとても重要です。
そして、STS-107のクル-を失ったことを、大変悲しく思っています。彼らはNASAのファミリ-として、とても献身的、謙虚、そしてプロフェッショナルでありました。 クル-全員と全米中でSTS-107を支援していた者たちをとても誇りに思います。

本日2月12日は、リンカ-ン大統領の誕生日でもあります。先週、全く異なった用途で発言された言葉が頭をよぎりました。「犠牲者たちが最後に全身全霊を捧げた大儀へ、我々自身が身を捧げることです。」

今回の事故から学ぶことがたくさんありました。今回の失敗をNASAの新しいスタ-トと考え、未来の世代に役立つことを願っています。

最後に、16日間のSTS-107ミッションでは、安全性を疑わせる様な兆候はありませんでした。 本日、私が証言を始めてから経過した時間と、ミッションチ-ムが温度の上昇、そしてアクシデントに気づいた時間の経過と同じくらいです。

2、3秒ポ-ズしましょう(Let's pause for a few second)。これが、偉大なるクルーと最後に連絡が途絶え、またコロンビアと信号が途絶えてから経過した時間です。

STS-107のクルーに賛美がありますように。


参考:STS- 107 Accident Investigation Ground Track and Events Summary(PDF 1546KB)

 

最終更新日:2003年 2月18日

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