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コロンビア号事故調査NASA記者会見状況 2月6日(仮訳)

NASA記者会見 2月7日 >>

NASA本部定例記者会見要旨
ジョンソン宇宙センター(JSC)定例記者会見

2003年2月6日午前1時30分(日本時間) NASA本部
2003年2月6日午前6時50分(日本時間) ジョンソン宇宙センター(JSC)

NASA本部定例記者会見要旨
  1. マイク・コステルニック宇宙飛行局次長
    昨晩から様々な新たな動きがありました。まず各現場に調査チームが配備され、司令塔もでき前代未聞の協力体制ができあがりました。
    様々な政府機関、州や地方機関から、約2,500名の協力が得られています。
    民間への影響・危険は取り除かれ、破片はテキサス州の学校などから全て回収され、通常通り開校されています。
    精力的に全ての破片を回収分類し、各基地(バークスデール, Carlswell, フォートワース)への破片の移動といった活動が、NASA のMishap Investigation Team(MIT) とJSCにあるMishap Response Team(MRT)とが連携して取り組んでいます。捜査に重要な破片については赤いタグを付け、優先して調査するように分けられ、科学者、エンジニアがこの事故の真相を突き止めるように努力しています。
    破片の捜査態勢は順調に進んでおり、これから数週間で各サイトの破片は整理されると思われます。昨晩、いくつかのチームは当初よりさらに西方のアリゾナとカリフォルニアの現場に送られました。
    残念ながら時差でその報告はまだ受けていませんが、今日の午後にはその初期の破片落下現場についての状況がわかる予定です。
    初めに推測していたより破片落下現場の範囲が大きく広がる事になりました。そしてもちろんこれらの現場での初期に落下した破片は事故の原因を究明するのに重要です。
    今朝のエンジニアによる解析作業についてはやはり左翼に重点が置かれています。現在集められている温度センサーやフライト・コントロールのデータにより、熱負荷、荷重についてのデータをマッピングし、事故発生時のタイムラインにそって整理するよう全力を尽くしています。ひとつの見方にとどまらず、様々な可能性を調べています。詳しくは午後の技術面の会見にて説明します。独立の調査委員会である Columbia Accident Investigation Board(CAIB)が全面的に調査の主導権を握って動いています。このCAIBを筆頭に、調査体制を組もうとしています。詳しくはホームページに、調査体制の設置要領(PDF 1.5MB)が載っています。

    ここ何回かの会見においては、STS-107が行った科学実験に関心が集められました。これまでのISS中心のミッションに比べて独特なミッションでしたが、同時に今回ISSで行っている一連の実験の一部でもあり、未来のISSで行われるであろう実験の一部でした。様々な疑問が出ています。一体どのくらいのデータが失われ、どのくらい回収されたのか、ISSでの実験はどの程度科学に貢献するのか、等々。本日はロス博士にこの重要なスタンドアローン・ミッションの概要(ISSでの役割も含めて)について説明してもらいます。

  2. ハワード・ロス生物物理研究局次長
    STS-107について、(1)ミッション、(2)研究データのステータス、(3)今後のステップを説明します。

    (1) ミッション:
    STS-107は実験研究中心のフライトでした。実験の内容はCombustion research (燃焼研究)、advanced materials research(先端材料研究)、基礎物理学、細胞科学、生理学(bone-loss)、基礎生物学に分かれています。また、欧州宇宙機関(ESA)、企業、学生の研究の実験装置を搭載していました。

    (2) 研究データのステータス:
    現在、研究チームが悲しみの最中にあるのであまりデータがありません。宇宙飛行士と仲が良く、何年にもわたる交流を行ってきました。実験担当研究者は追悼式にも出ています。現在、ペイロードのソース・データは事故調査チームによって凍結されていますが、飛行中にダウンリンクしたデータは無事です。
    解析は飛行から何ヶ月も何年もかかるでしょう。こうした背景からお答えできるのは、次々にレポートが入ってきている現段階で、残念ながら大まかなことしか分かっていませんが、全てのストーリーをまとめるには時間が必要です。

    飛行中の運用に関しては、実験の指揮も含めて非常に成果のあるものでした。故障があってもクルーが修理を行い、実験を加速させることができました。
    まず重要なのは、この飛行において、技術、能力、ハードウェア自体、彼らの実験遂行任務は非常に良好だったと言うことです。おかげで将来の飛行リサーチについて必要な情報が確認されたのです。今回の飛行のTopical areaは全てISSに移行可能です。

    ペイロード(搭載物)の一部について説明します。まずは、3つの燃焼実験について、ダウンリンクできた画像データとリアルタイム解析を見る限り、ユニークな結果が出ました。
    たとえば、ろうそくの炎の100分の1の弱さの炎が発見され、この結果は燃焼化学に応用し、自動車のエンジンなどに使えるかもしれません。

    次は、煤(すす)の実験です。
    毎年何千人ものアメリカ人が煤で亡くなっていますが、エンジンパフォーマンスに関連する物質です。しかし産業使用も可能です。今回は煤形成プロセスについて研究しました。
    ミシガン大学教授によると、これまで見たことのない素晴らしい結果が出ました。
    しかし、結果は一部しか地上に届いていません。回収可能かもしれませんが。

    3つ目の燃焼実験は水噴霧の消火効果実験です。
    最初はうまくいきませんでしたが、クルーが介入し予定よりずっと早く終わらせることができました。これも非常によいデータが得られました。

    次に、いくつかの実験について詳しく説明します。建物の土台の強力化、様々な産業の粉末材料の扱いをリサーチする土壌(Soil Behavior)の性質実験がそのひとつです。私が知る限りこれらの研究については50%のデータが回収されました。同様に基礎物理の液体実験では、キセノンの臨界点での反応のデータも50%回収されました。バイオテクノロジー実証実験では前立腺細胞を使い驚くほどの腫瘍の成長が見られました。その実験についてのデータもある程度は代謝量を解析することにより回収されると思われます。しかしもちろん基本的にはこれらのサンプルが地上に戻らずには完全なデータは得られません。ちなみにこの実験結果は様々な疾病に対する薬物使用の研究などに利用されます。

    次に生物実験について、人類生物学と根本的な宇宙での生物学です。残念ながらこれらは実際のサンプルやデータを地上に戻って研究することに頼るため、これらの研究で失われたデータは多大です。他の国や団体がスポンサーであった研究などももちろん載っていましたが、これらのデータ回収についてはまだ調査中です。最後に中東地域の砂漠の天候、砂の現象を記録していたイスラエルのカメラについて、最初の映像は回収されました。その内容は地球の大気中に見られる電磁現象(electrical phenomena)であるスプライトとエルブスという発光現象の原因などについてかなりのデータを集めることができました。他には地上での煙柱(smoke plumes)が起こすその地域での雲への影響などについてもデータが集められました。

    (3) 次のステップについて
    これからの動きについては4つの重要点があります。
    一番目は、STS-107のresearch communityのサポートを全力で行うことです。この災難についてのカウンセリングも行い、データの収集とまとめに協力し、共に前進できるよう努めています。
    二番目は、事故調査チームにも協力をし、データを蓄積し、地上での研究機器を含め事故原因解明に携わっています。
    三番目は、ISSでの研究の継続(時にはスペースシャトルでの研究)です。当面、プログレス補給船に頼って実験機器をISSに送ります。
    四番目は全体的な研究予定への影響の評価です。長期的、短期的に、地上と宇宙での研究をどうすべきか、これからの宇宙船打上げスケジュールについて考えていかなければならなりません。

    次回、2月6日の記者会見が、ワシントン地区での追悼式のため、JSCから午前6時30分(日本時間)の1回のみ行います。

    以上

ジョンソン宇宙センター(JSC)定例記者会見
  1. ロン・ディトモア(スペースシャトルプログラムマネージャ):
    昨日の追悼式はすばらしかった。国中の方々、メディアに方々に感謝したい。引き続き困難な日々が続くが、だんだんよくなってきました。人間的なプロセスが始められるようになりました。いろいろな人のサポートがありました。
    作業は加速しつつあります。タイムラインについては多少の進歩はありますが、過去24時間でほぼ安定してきたので、今日は新しい報告はありません。

    以前報告した32秒間の追加データについては、うまく回収できていません。もっと時間がかかります。32秒間の情報は存在するがデータの信憑性に確証がまだ持てないのです。情報が抽出できれば報告します。

    左翼の温度上昇とセンサ喪失については、熱源がどこにあったのか、現在、reverse analysisによって原因究明を試みています。フライト・コントロール・システムに関しても同様のreverse analysis中で、空力反応とジェット噴射を誘発した空気抵抗や空力負荷を割りだそうとしています。
    原因については、特定の題材に絞り込むことなくあらゆる可能性を模索しています。故障の木解析(Fault Tree Analysis: FTA)を、オービタと外部燃料タンクの両方に関して作成しています。両者が密に関連していると思うので、両分野でcomplimentary analysis を進行中(外部燃料タンク、断熱材衝突、タイル強度のテスト)です。
    今日は皆さんに見せるために断熱材を持参しました。超軽量で弾力性があり、タンクの気温を低く保つための断熱効果があります。タンク周辺の空力負荷(aerodynamic load) と気流(flow stream)の抵抗を減少させるようにデザインされています。
    このタイルはクラストがついています(大部分の断熱材がそう)。タンクの部位によっては表面が滑らかな断熱材もあります(柔らかく空力効果高い)。ごらんのように超軽量で壊れやすく、粉々になりやすいのです。

    断熱材の衝突前(左)、衝突後(右)
    断熱材の衝突前(左)、衝突後(右)

    打上げ時の写真による解析を継続しています。解像度を改善しようと努力しています。発射時の写真を持参しました。この写真には17フレームもの情報が取り込まれています。左は衝突前の写真、右は衝突後です。これらはビデオで撮影されたので残念ながら解像度が低く細かい解析には適しません。しかしふたつの写真を比べると大きな損傷は見られません。より情報を得るため解像度を上げようとしています。総体的には何も深刻な問題は見つかりませんでした。
    さらに写真などの解析について全国の一般市民から多大な協力を得ています(特にカリフォルニア、アリゾナ、ニュー・メキシコ、西テキサス)。数日前の問いかけに続き、何らかの写真や情報を持つ者は是非話を聞き、その情報をいただきたい。(ビデオや写真など) 情報提供者はNASA緊急オペレーションセンター(NASA Emergency Operations Center)(281-483-3388)に連絡してください。

    各サイトでは引き続き破片を敏速に回収しています。最初のトラック1台分の破片がバークスデール空軍基地のstaging areaに届きました。これからの数日、破片が回収されるペースは急速に高まると予想されます。今週末までには大量の破片が届く予定です。

    赤札(特に重要な破片を識別するために付けられる札)を付けられた破片はまだ回収されていません。回収されればすぐにエンジニアが分析します。当分回収された破片はバークスデールで保管されるが、最終的にはケネディ宇宙センター(KSC)に搬送されます。

    タイルについて情報を加えて言うと、スペースシャトルの飛行があるたびに、スペースシャトルの胴体下部のタイルには損傷が起こります。平均で100箇所以上のタイルが傷つきます。その内、25~35%の損傷は1インチ以上になります。しかし112~113回の飛行を行ってきた中で、それでもこれまで安全上の問題になったことはありません。比較的損傷が多かったフライトもあります。それぞれの場合、問題の究明をし、是正されてきました。そのうち11回のフライトは著しい数の1インチ以上の損傷が見られました。地上に戻ったスペースシャトルのタイルを点検するときの要因は損傷の数、1インチ以上の損傷の有無です。タイルについては常に調べられている部分です。タイルの深刻な問題について3つのレポートが出されています。これら1990年、1994年、1997年のレポートは公開されています。

    断熱材は水分を吸収しません。非常に水分に対する耐久性が高いのです。(吸収すると重さが増えるため)氷について条件がそろえば燃料タンクに付着する可能性があります。しかしこれに関してはどこにどの程度の氷がついてよいか厳しい基準があります。この基準をクリアーしているか確認するため、発射前の燃料充填の後には必ずアイスチームが外部燃料タンクの外部に付着した氷を隅々まで点検します。アイスチームはlaunch complexに戻りミッションマネージャに報告します。氷の付着が基準に合致していなければ、打上げは延期されます。発射が容認されるためにはこの氷の度合いが非常に重要です。

    デブリの衝撃解析については、20×16×6インチ、重さ2.67ポンドのデブリが当たったと思われます。この重さについては安全側にみてマージンをとって解析しているが、この断熱材を持ってみてもらえればわかります。発射82秒後の対気速度は750フィート/秒でした。スペースシャトル自体は2,300フィート/秒で加速しますがオービタと燃料タンクの間のlocal velocityは750フィート/秒程度です。我々の解析では衝突スピードを倍の1,500フィート/秒と予測しました。

    つまり、対気速度、デブリの重さともに安全側にマージンを十分とって、いろいろなケースで解析しました。ツールを使用してダメージを実際チェックもしました。エンジニア、マネジメント、チームとしてこの断熱材の衝突が飛行に支障を起こしたとはとても考えられません。

    そこで、他の原因を追及しています。我々は見落とした部分があるかどうかの調査に力を注いでいます。他に原因があるはずです。そのため故障の木解析(FTA)を進め、ありとあらゆる可能性を探っています。

    もうひとつ言いたいことは、各フィールドで、デブリ採集に当たっている方々に注意を呼びかけます。採集には十分な注意が必要です。毒性のある物質、まだ解明されていない危険が存在するかもしれません。

    火工品は見た目ではわかりにくく判断が難しいものもあります。内部は爆発する可能性があるので、扱いには細心の注意をしてください。バッテリーでも毒性が強いものがあるので注意が必要です。毒性が強いだけではなく、装置が中に入っているものがあるということなので、注意してください。

NASA news conference (65分32秒 QuickTimeファイル)
http://qs240.pair.com/sfnvideo/sts107/030205jscbriefing_qt.html

 

最終更新日:2003年 2月 6日

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