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宇宙実験サクッと解説:シナジー編


宇宙実験調査団のピカルがSynergy実験を大調査!
実験提案者の寺田先生とも仲良しの物知りハカセに聞きました。

物知りハカセ

ピカル

ピカル:

ハカセ、こんにちは。実は、宇宙飛行士になりたいって言ってる友達がいるんですよ。でも、宇宙には行ったことがないからちょっと不安だって言ってました。宇宙に行くと身体にいろいろな変化があるんですよね。

ハカセ:

素敵な夢じゃな。そうじゃなあ、重力がないということはヒトの身体に様々な影響を与えるな。例えば、地上のように重力に対抗して身体を支える必要がないから、宇宙にずっといると筋肉が落ちてしまうんじゃよ。

ピカル:

そういえば、先日宇宙から帰ってきたばかりの宇宙飛行士が、宇宙船から出た直後、座ったり寝たりしてじっとしているのをテレビで見ました。

ハカセ:

宇宙環境に体が慣れてしまうと、重力のある地上で立ち上がった時にふらついたりして危険だから安静にしておくんじゃ。立ち上がれても、思うように動けなかったりする宇宙飛行士も多いようじゃな。筋肉だけでなく心臓や血管の機能も落ちてしまうしのう。

ピカル:

宇宙ステーションで宇宙飛行士が自転車をこいだり走ったりしている映像を見たことがあるけど、そんな運動やトレーニングをしていても防げないんですか?

ハカセ:

確かに、筋肉や心肺機能を維持できるように宇宙でも鍛えておくのは大切なことじゃ。自転車やランニングマシーンの他にも、ゴムを使った筋力トレーニングなどが考案されておる。しかし、そんな対策をしていても完全には予防できていないことがわかったんじゃ。

ピカル:

えーっ、それは困りましたね。何か方法はないのかな。

ハカセ:

決定的な対策は今のところないんじゃな。なにせ、ヒトが立ち上がって歩いたり走ったりするためには、筋肉の量や強さだけでなく、一つ一つの筋肉の働きを上手に統合する神経の働きが重要になってくるからのう。

ピカル:

普段僕たちは、何気なく立ったり歩いたりしているけれど、実は複雑な体の働きの集大成っていうことなんですね。

ハカセ:

歩くには、脚の様々な筋肉を使うじゃろう。例えば、ふくらはぎ側の筋肉とすね側の筋肉が交互に伸び縮みして脚が動く。この筋肉同士の制御をしているのが脳で、脳からの指令が神経を通して筋肉に伝達されることはピカルも知っておるじゃろう。この神経制御と筋肉の活動がうまくバランスをとっているから我々は歩くことができるんじゃ。

ピカル:

なるほど、言われてみると確かにそうですね。歩くという動作をそんなに深く考えたことなかった・・・。

ハカセ:

それだけじゃないぞ。筋肉に栄養を送っているのは血液じゃろう。この血液の流れは、筋肉の萎縮だけでなく体の病気にも大きく影響しておる。さらに、ヒトの体はほぼ左右対称にできておるが、最も大きな臓器である肝臓は右側にかたよっておる。この右側のずれを脳で調節して、左右均等になるようにバランスを保っているんじゃよ。

ピカル:

僕たちの身体は、筋肉だけでなくいろいろな臓器や神経の働きが上手に組み合わさって制御されているってことなんですね。チームワークが大切っていうことなんだなあ。

ハカセ:

その通りじゃ。そこで宇宙飛行士の話に戻ると、もしかしたらそのチームワークが宇宙の環境にさらされることにより、うまく働かなくなってしまう可能性もあるんじゃないかと、寺田先生は考えておるんじゃ。

ピカル:

えっ、そんなことも宇宙で影響を受けてしまうんですか?

ハカセ:

まだわからんがのう。でも、その可能性もあるということじゃ。宇宙では歩く必要がないので、筋肉や骨だけでなくそれを制御している神経の働きや血液の流れにも影響があるはずじゃろ。それに、内臓の重さも感じないので脳での左右均等のバランス制御にも変化がある可能性も考えられるな。だから、これらの様々な影響によって、宇宙から帰ってきてすぐには歩くという動作がうまくいかないかもしれないと寺田先生は考えたんじゃな。

ピカル:

もし宇宙飛行でそんな影響を受けてしまうとすると、将来、月や火星への旅行が実現した時には、長期間の滞在で宇宙環境に慣れてしまうと、地球に帰ってきてすぐには通常の生活に戻れないかもしれないですね。大変だ。何か対策を考えなくちゃ。

ハカセ:

ふぉふぉふぉ、ピカルはずいぶん気が早いのう。寺田先生は、宇宙に慣れてしまった体が、どのように地球の環境に再び適応していくのかも観察する計画じゃ。この回復過程が解明されると、宇宙飛行士が宇宙から帰ってきたときにうまく体を動かせるように、国際宇宙ステーションでのトレーニング方法を改良したり、地球に帰ってきてから行うリハビリトレーニングのメニューをもっと効率よくしたりすることができるじゃろう。また、同じような問題はお年寄りや長期間寝たきりの患者さんでも生じているので、その方たちへのリハビリトレーニングへも応用できることも期待されておるんじゃよ。

ピカル:

面白いですね。僕も宇宙飛行してみたくなりました。

ハカセ:

そうか、では宇宙飛行士を目指して、学校の勉強ももっと頑張らないとな。

ピカル:

そうですね!でもそれは後で頑張るとして、まずはスポーツで身体を鍛えてきまーす。ハカセ、今日はどうもありがとうございました!


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