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宇宙実験調査団のピカルがCsPINs実験を大調査!
実験提案者の高橋秀幸先生とも
仲良しの物知りハカセに聞きました。
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ピカル: |
ハカセ、こんにちは!
東北大学の高橋先生のチームが行う「CsPINs」実験について、お話をうかがいに来ました。
さっそくですが、そもそも「CsPINs」ってどういう意味ですか?
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ハカセ: |
おお、ピカルよく来たな。
“CsPINs”は植物のタンパク質の名前をあらわしておる。
“Cs”は、今回の宇宙実験で使うキュウリの学名のCucumis sativus L.の頭文字から取った。
“PIN”は、高橋先生が注目しちょるタンパク質の名前じゃ。
この実験では、2種類のPINタンパク質(CsPIN1とCsPIN5)について調べるので、複数形の”s”を付けたのじゃ。
高橋先生は、この2種類のPINタンパク質が、重力の影響を受けてどのように変化して働くかを調べるために宇宙実験を行うのじゃよ。
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ピカル: |
へぇ〜、CsPINsはキュウリのタンパク質のことなのか。
それでハカセ、PINタンパク質って、どんなタンパク質なんですか?
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ハカセ: |
PINタンパク質は、植物にとって必要不可欠な、とても重要なタンパク質じゃ。
詳しく説明するまえに、植物のからだ作りについて、簡単に説明しなければならんのう。
植物は、自分自身の成長をコントロールするために、植物ホルモンと呼ばれる化学物質を作っておる。
なかでも、胚発生のほか、根、茎、葉、花の形成など、植物の一生のさまざまな過程に関わっている、「オーキシン」と呼ばれる化学物質は特に重要なんじゃ。
オーキシンはおもに若い葉っぱで作られるんじゃが、色々な場所でオーキシンが必要とされておるから、若い葉っぱから他の器官にオーキシンを移動させる必要がある。
ここで、オーキシンの運び屋として活躍するのがPINタンパク質なんじゃ。
PINタンパク質はおもに細胞膜に存在し、細胞内から細胞外へのオーキシンの移動をつかさどっておる。
ま、簡単に言うと、PINタンパク質が白バイで、オーキシンはお偉いさんの乗った高級車といったところじゃな。
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ピカル: |
え!?
白バイと高級車?
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ハカセ: |
PINタンパク質が白バイのように先導役となって、オーキシンの通る道を作っているというわけじゃからのう。
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ピカル: |
な〜るほど。
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ハカセ: |
PINタンパク質によって運ばれるオーキシンは、実は、植物のからだ作りだけでなく、植物が重力、光、水分といった環境刺激に反応するためにも必要なものなんじゃ。
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ピカル: |
環境刺激?
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ハカセ: |
動物と違って、植物は自由に動き回れんから、自分が根付いた場所でできるだけ快適に過ごすために、環境に合わせて成長するんじゃよ。
たとえば、「根が曲がる」という現象を考えてみようかの。
植物は発芽するとき、土のある方向(下方向)に根を伸ばすじゃろ。
これは当たり前のようじゃが、もし根が上方向に伸びてしまったら、土に含まれる水分や栄養を吸収できんから、植物にとってはゆゆしき問題じゃ。
実はこのとき、植物の根は重力を感知して、根を下方向に曲げているのじゃ。
この仕組みは、根の重力屈性と呼ばれておる。・・・前にも言ったかの?
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ピカル: |
ええ、確か聞いたような気がします(詳しくは、Hydro Tropiの解説ページへ)。
それで、その重力屈性に、PINタンパク質とオーキシンはどう関わっているんですか?
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ハカセ: |
さきほど、PINタンパク質がオーキシンを先導して細胞から細胞へ運んでいくと言ったのを覚えとるじゃろ?
横倒しにした根を想像してごらん。根の先端の細胞が重力を感じると、細胞の下側の細胞膜にPINタンパク質を集めて、横倒しの根の下側へ向かってオーキシンが通る道を作るんじゃ。
すると、根の下側にオーキシンが多く運ばれて、根の上下でオーキシンの濃度差が生じる。
根の場合、オーキシンが多いと細胞が伸びず、少ないとよく伸びるという性質がある。
じゃから、根の上下でオーキシンの濃度差が生じると、上下の細胞の伸び方にも違いがでて、結果として、オーキシンがより多い下側を内側として、根が下に向かって曲がるんじゃ。
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ピカル: |
ふ〜ん。
うまくできているんだなあ。
ところでハカセ、今回の宇宙実験では、PINタンパク質の働きを観察するうえで、二つのポイントがあるって聞きました。
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ハカセ: |
おお〜、そうじゃ、そうじゃ。
さすがはピカル、よう調査しよったのう。
一つはキュウリの芽生えのペグ形成、もう一つは根の水分屈性じゃ。
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ピカル: |
ペグ?
ペグって聞きなれないけど、何ですか?
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ハカセ: |
ペグとは、キュウリの芽生えが種皮から脱皮する時に、茎 (胚軸) と根の境界に作られる「とんがり」のことじゃ。
キュウリの芽生えは、発芽して根がでたのち、茎がのびる。
このとき、芽生えをよ〜く見ると、茎と根の境界にペグができておるのがわかる。
ペグで下側の種皮をおさえた状態で茎がのびるので、子葉は種皮から簡単に抜け出すことができる。
どうじゃ、うまいことできておるじゃろ?
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ピカル: |
本当ですね。
でもハカセ、ペグ形成と重力の間にはどんな関係があるんですか?
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ハカセ: |
実は、キュウリがペグを形成する位置は重力の方向によって変わるんじゃ。
ペグと重力の関係については、ことの発端から説明しようかの。
話しは1998年にさかのぼる。
その年、東北大学の高橋先生のチームが行った宇宙実験で、ペグ形成に重力が必要かどうかを解析したのじゃ。
スペースシャトル「ディスカバリー号」でキュウリの種子を打ち上げ、宇宙で発芽させたところ、ペグは茎 と根の境界の両側に一つずつ作られたんじゃ。
地上では通常一つしかできんのじゃが、宇宙ではこのように二つできよった。
この結果から考えると、キュウリの芽生えには本来、茎 と根の境界の両側にペグを形成する能力があるということじゃ。
そこで地上研究をすすめたところ、地上で発芽させた芽生えでは、重力刺激に応答して、茎と根の境界の上側のペグ形成が抑えられていることがわかったのじゃ。
上側にペグを作っても役に立たんからの。
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ピカル: |
へえ〜。
それで、ペグ形成にオーキシンはどう関わってくるんですか?
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ハカセ: |
うむ、よくぞ聞いてくれた。
地上で茎と根の境界にペグが一つしか出来ない時、茎と根の境界にはオーキシンの濃度差があり、上側に比べて下側により多くのオーキシンがあるんじゃ。
一方、ペグが2つできる時はオーキシンの濃度差がなく、上側と下側に同じように分布しておる。
すなわち、地上と宇宙でのペグ形成の違いは、茎と根の境界の上下のオーキシンの濃度差によってもたらされると言えるのじゃ。
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ピカル: |
さっきハカセが教えてくれたPINタンパク質が、オーキシンの濃度差をつくっているんですか?
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ハカセ: |
高橋先生は、キュウリの芽生えが重力に反応してペグの位置を決める時、PINタンパク質の一つである “CsPIN1”が重要な役割を果たしている、という仮説を立てておるのじゃ。
地上実験を通して、重力によって細胞内でのCsPIN1タンパク質の位置が変化する可能性が見えてきた。じゃが、実際に宇宙で実験してみないことには、重力によってオーキシンの通り道がどう変化するかは分からないのじゃ。
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ピカル: |
なるほど。
これが一つ目のポイントの、PIN1タンパク質とペグ形成の関係についてですね。
ハカセ、次に二つ目のポイントの、根の水分屈性とPINタンパク質の関係についても教えてください!
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ハカセ: |
水分屈性とは、簡単にいうと、水の多い方向へ根が曲がる仕組みのことじゃ。
地上ではしばしば、重力屈性がとても強く発現するため、水分屈性の発現を抑えてしまうことがある。
そこで、微小重力環境の宇宙で実験すれば、根は重力屈性を発現しないので、重力屈性に邪魔されずに水分屈性だけを観察できるのじゃ(詳しくは、Hydro Tropiの解説ページへ)。
植物の根が水分屈性で屈曲する時、根の細胞の両側にオーキシンの濃度勾配ができることは覚えておるかな?
高橋先生は、宇宙空間で水分勾配を感じたキュウリの根では、CsPIN5と呼ばれるPINタンパク質の存在場所が変化し、それにともなってオーキシンの通り道が変わり、水分刺激に応じたオーキシン濃度勾配が形成される、と予想しておるのじゃ。
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ピカル: |
へえ〜。
宇宙に行けば、根が水分の多い方に向かって曲がる時、CsPIN5タンパク質がどう働いているかしっかり観察できるんですね。
ハカセ、最後に今回の宇宙実験は何に役立つのか教えてください!
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ハカセ: |
そうじゃな。
この実験から得られる成果は、植物の、重力を利用したからだ作りの仕組みの解明にとどまるものではない。
宇宙環境における植物栽培の基礎的研究や、地上での植物栽培のさまざまな分野に貢献すると期待されておるんじゃ。
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ピカル: |
なるほど、よくわかりました!
宇宙実験の結果が楽しみですね。
ハカセ、今日はどうもありがとうございました。
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