1. 低線量被ばくの遺伝子への影響
宇宙飛行して、低線量(50mSv程度)の被ばくを受けた細胞は地上の細胞に比べ、宇宙放射線によって突然変異が起こる可能性が高くなることがわかりました。また、この実験手法では、宇宙滞在中の細胞への宇宙放射線による被ばくが蓄積されて(総被ばく線量として)影響を受けると推測できました。
2. 低線量被ばくにより、細胞レベルで高線量被ばくへの抵抗力獲得の可能性
宇宙飛行して地上に回収した細胞と、宇宙飛行しないで地上で保管していた細胞の両方に、宇宙で被ばくした線量の数十倍の高線量のX線を短時間照射し、LOH解析法で調べた結果、宇宙飛行した細胞は飛行していない細胞に比べて突然変異が起こる確率が半分程度に低下しました。これらのことから、50mSv程度の低線量の宇宙放射線被ばくでは、細胞が適応応答(低線量の被ばくによって放射線への抵抗力がつくこと)を獲得する可能性が示されました。
3. 放射線影響に対する重力の影響
宇宙飛行した細胞のうち、無重力下で培養した細胞は、人工重力(1G)下で培養した細胞の55%程度まで生存率が低下し、さらに突然変異が起こる確率が60%に低下しました。これらの結果は、地上では放射線により突然変異を起こしても生き延びる細胞が無重力では死んでしまうことを示しています。
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