半導体の結晶成長実験を行います。
シリコン(Si)は最も広く用いられている半導体ですが、今回対象とするのはシリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)が半々に混ざった混晶半導体Si0.5Ge0.5です(図5)。
JAXAが開発した新しい結晶成長方法(TLZ法)は、前述のように2成分以上の原子が均一に混ざった結晶を製造するのに最適な方法です。
温度勾配炉(GHF)を使用して、温度1100〜1200℃、温度勾配10℃/cm程度に加熱して原料の一部を溶かして帯状の融液帯を形成し、その融液帯を移動させて結晶成長を行います。
温度勾配炉の仕組みについてはこちらをご参照ください。
これまでの地上実験において、直径2mm程度の小さい結晶では熱対流の影響がさほど大きくないため、TLZ法の適用により均一組成のSi0.5Ge0.5が製造できることを確認しています(図6)。
一方、現在の半導体素子(注)は大きな円盤状の試料(ウエハー)を基にして製造されるため、TLZ法の試料を製造ラインに組み込み、量産体制を構築するためには、直径の大きな大口径円柱状試料が必要です。
(注)素子:電子回路を構成するコンデンサー(電気をためるもの)やトランジスタ(電気信号を増幅するもの)などのパーツのことです。
また、結晶の大口径化とともに直径方向の組成均一性も達成しなければなりません。
これまでの研究により、結晶中の直径方向の組成不均一性は温度勾配の影響が大きいことが分かっています。
しかし、融液中の温度勾配や濃度勾配は地上では対流を発生させてしまい、TLZ法の有効性を実証することができなくなります。
そこで、ISS「きぼう」内の微小重力環境を利用し、対流の発生を抑制したうえで、今回の実験を行います。
本実験では、TLZ法の結晶成長の原理を確認するとともに、この直径方向の温度勾配の影響を評価し、大口径・均一組成の結晶を製造するための基礎的データを取得します。
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図6 直径2mmのSi0.5Ge0.5結晶の長さ方向濃度分布
長さ10mm以上にわたってSi0.5Ge0.5の均一組成の結晶を実現しました。
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