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宇宙実験調査団のピカルがイネ芽生え実験を大調査!
実験提案者の若林先生とも
仲良しの物知りハカセに聞きました。
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ピカル: |
ハカセ、こんにちは。 さっそくですが、Ferulate実験は植物の細胞壁を調べるのが目的だって聞きました。 植物の細胞壁って、これまでの宇宙実験で何度も取り上げられていますよね。
Cell WallとResist Wall、それにSpace Seedとか。 もうやり尽くした感じがしますけど、どうしてまた細胞壁の実験をするんですか。
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ハカセ: |
ほほう、しょっぱなから飛ばすのう。
今回また細胞壁の実験をするのには、ちゃんとしたワケがあるのじゃ。
ここでピカルに質問じゃが、さっきおぬしが言っておった3つの実験にはある共通点がある。
わかるかのう。
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ピカル: |
植物の細胞壁に着目しているってことでしょ?
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ハカセ: |
植物は植物でもシロイヌナズナ、双子葉植物のシロイヌナズナを実験材料に使っておるという点じゃ。
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ピカル: |
あ、そうか!
確かに、どの実験でもぺんぺん草を使っていましたね。
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ハカセ: |
ま、正確に言うとぺんぺん草ではなくて、ぺんぺん草の仲間じゃが・・・。
研究者がこぞってシロイヌナズナを使うのはなぜかと言えば、遺伝情報がすべて解明されているとか、ライフサイクルが短いとか、実験材料として多くの利点があるからじゃ。
ただ、だからといって双子葉植物のシロイヌナズナだけを使っておると、単子葉植物の細胞壁の研究は取り残されてしまう。
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ピカル: |
ハカセ、ちょっと待ってください。
ということは、双子葉植物の細胞壁と単子葉植物の細胞壁では、構造に違いがあるってことですか。
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ハカセ: |
その通り。
ピカルも知っておると思うが、細胞壁というのは細胞の周りを取り囲んでいる丈夫な構造体のことじゃ。
細胞壁を強くすることで、植物は自分の体の重みを支え、重力に逆らって伸びることができる。
双子葉植物も単子葉植物も、細胞壁の主な構成要素がセルロースであるという点では一致しておるが、その補強材となる物質は異なっておる。
「セルロース」が鉄骨だとすると、「補強材となる物質」は言わばセメントで、細胞壁を強くするうえで重要な役割を果たしておる。
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ピカル: |
へえ〜、鉄骨とセメントか。
それでハカセ、双子葉植物と単子葉植物の細胞壁を補強しているのは、それぞれどんな物質なんですか。
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ハカセ: |
うむ。
シロイヌナズナなどの双子葉植物の細胞壁では、セルロースの間をキシログルカンと呼ばれる物質がつないでおる。
これに対して、単子葉植物であるイネ科植物の細胞壁中では、β−グルカンやアラビノキシランといった物質が補強材の役割を担っておるのじゃ。下の図で赤と緑で示しているものじゃな。
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ピカル: |
へえ〜、全然違う物質なんですね。
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ハカセ: |
Ferulate実験では、アラビノキシランと、アラビノキシランに結合している「フェルラ酸」という物質に注目しておる。
図で青く示されている物質じゃな。
フェルラ酸は2つ結合すると「ジフェルラ酸」という物質になる。フェルラ酸の結合、専門用語で「架橋」というんじゃが、それによって、アラビノキシラン分子の間がしっかりくっつき、セルロースとセルロースの間も強くつながると考えられておるんじゃ。
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ピカル: |
架橋によって、細胞壁の強度を増しているということですね。
ハカセ、宇宙では重力がないから、細胞壁が薄くなるって昔聞いたような気がするんですけど、これらの物質に何か変化があるということですか?
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ハカセ: |
まさに、そうではないかと若林先生たちは考えておる。
単子葉植物であるイネの細胞壁が薄くなることは、1998年の宇宙実験で確認されておる。この実験には若林先生も参加しておったんじゃがの。
今回の宇宙実験では、さらに細かく、アラビノキシランやフェルラ酸の量、それを制御するさまざまな酵素の働きにも注目するんじゃ。
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ピカル: |
なるほど、単子葉植物の細胞壁の強さの変化、そしてその原因を分子レベルできっちり調べようってことなんですね。
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ハカセ: |
その通りじゃ。
細胞壁は細胞壁でも、Ferulate実験と先の3つの実験とでは大きな違いがあることがわかったじゃろ?
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ピカル: |
はい、よくわかりました!
ところでハカセ、単子葉植物にもいろいろあると思いますけど、今回は何を使うんですか?
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ハカセ: |
おお、言っておらんかったかの?
おいしいお米になるコシヒカリじゃ。
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ピカル: |
うわ〜、コシヒカリのごはん大好きです!
・・・ということは、お米になるまで育てるんですか?
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ハカセ: |
うむ、残念ながら、今回は真っ暗闇でコシヒカリを育てるんで、大きくはならないんじゃ。
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ピカル: |
えっ、どうして暗闇で育てるんですか?
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ハカセ: |
実はな、これまでの研究から、植物の芽生えに光をあてると、細胞壁が硬くなることがわかっておる。
この時、イネ科植物では、フェルラ酸による架橋構造が増えるんじゃ。
今回の実験では、重力のあるなしによる違いをきちんと調べるために、できるだけ光の影響は除いておきたい。
そういうわけで、真っ暗闇での実験と相成ったわけじゃ。
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ピカル: |
そうですか、残念ですけど、おいしい宇宙のお米を食べるのはあきらめます。
ハカセ、最後の質問ですが、この実験から将来どんな展開が期待できそうですか?
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ハカセ: |
よくぞ聞いてくれた。
単子葉イネ科植物には、コムギやトウモロコシ、オートムギなど、食糧生産に欠かすことのできない重要な植物が含まれておる。
これらの植物が、重力に抗して自分の体を支えるメカニズムが解明されれば、地上での品種改良はもちろんのこと、宇宙での食料生産のための基礎的データが得られると期待されておるのじゃ。
人間が宇宙で暮らし、食料を生産するなんてことは、SF映画のように思うかもしれんが、もしかしたらそう遠くない未来に、ピカル念願の宇宙米コシヒカリやら宇宙小麦やらができるかもしれんぞ。
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ピカル: |
うわあ、楽しみだなあ!
宇宙農業のことを考えたら、なんだかワクワクしてきました。
ハカセ、今日はどうもありがとうございました。
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