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宇宙実験調査団のピカルが細胞生物学実験を大調査!
実験提案者の浅島先生とも
仲良しの物知りハカセに聞きました。
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ハカセ
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ピカル
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ピカル: |
ハカセ、さっそくですが、ドームジーン(Dome Gene)って何ですか?
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ハカセ: |
「ドーム」というのは、半球型のふくらんだ構造のことじゃ。
丸い屋根付の野球場を○○ドームって言うじゃろう?
そして「ジーン」というのは遺伝子のことじゃ。
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ピカル: |
???
ドームと遺伝子にどういう関係があるんですか?
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ハカセ: |
おっとこれは失礼。ちと説明が足りんかったな。
我々の体には様々な臓器がある。
その中に腎臓という臓器があるのは知っておるかね?
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ピカル: |
はい。
ときどきテレビにも出てきますよね。
確か、血液から老廃物(ゴミ)をこしとって、おしっこをつくる・・・
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ハカセ: |
その通り。 非常に重要な臓器の一つじゃ。 その腎臓には、余分にこしとってしまったイオンや水を再吸収する「尿細管」という管(くだ)がある(図1)。
「アフリカツメガエル」というカエルの尿細管からとった「A6細胞」という細胞を培養すると、尿細管と似た「ドーム」という構造が現れるんじゃ(詳しくはこちら)。
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図1 腎臓と尿細管の模式図
尿細管の湾曲した部分がドーム構造と類似している
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ピカル: |
それで「ドーム」・・・。
で、このドームを作る細胞、A6細胞でしたっけ・・それを使ってどの様な研究をするのですか?
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ハカセ: |
実は、地上での「模擬」微小重力シミュレーション実験、これは3次元クリノスタット(注1)という特殊な機械を使って行ったんじゃが(動画1)、その結果から、宇宙の微小重力条件下でA6細胞を培養するとドーム構造ができなくなるかも、という予測がある。
で、実際に宇宙で培養してみようと考えたんじゃ。
注1:3次元クリノスタットとは、実験サンプルをぐるぐる3次元的に回すことによって、サンプルが受ける重力の方向をさまざまに変動させる装置です。
重力がなくなるわけではありませんが、重力に対する反応が遅いサンプルの場合は、微小重力実験結果を模擬できる場合があります(イメージとしては、重力があちこちの方向に働くので、打ち消しあってゼロになる感じ)。
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動画1 3次元クリノスタット
クリックすると動画をご覧いただけます。 |
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ピカル: |
宇宙ではドームができないんですか?
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ハカセ: |
それは、実際に宇宙で実験してみないことには分からんのう。
宇宙実験では、ただ細胞の形を観察するだけではなく、より詳細に研究をするために、宇宙と地上では活性化される遺伝子に違いが生じるかどうかを、同時に調べようとしておる。
このようなドーム構造ができない、肝臓からとった「A8細胞」との比較も行うんじゃよ。
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ピカル: |
それで、「ドームジーン」なんですね・・・。
ところで、アフリカツメガエルって、どんなカエルなのですか?
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ハカセ: |
まあ、あまりなじみのない名前ではあるわな。
じゃが、発生生物学(私達の体がどの様なメカニズムで作られるのかを明らかにする学問)の研究者の間ではよく用いられているカエルなんじゃ。
ほら、これがその写真じゃ。
なかなかめんこい顔しとるわい。
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ピカル: |
なぜ、このカエルからとった細胞を宇宙実験に使うのですか?
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ハカセ: |
やはり、多くの研究者が使っているというのが、大きなポイントじゃ。
「多くの研究者が使っている」=「多くの情報が蓄積していて、研究を進めるのに有利」だからのう。
それに、我々人間を含む哺乳類の細胞を培養する場合、体温に近い温度(37℃)で培養する必要がある。
つまり、哺乳類の細胞を培養するためには、暖める装置が必要なんじゃ。
一方、アフリカツメガエルは住んでいるところの水温が20℃前後のため、宇宙ステーションの室温と同じような温度で細胞を培養することができ、余計な手間がかからなくてすむ。
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ピカル: |
なるほど〜。
エネルギーが少なくてすむエコな実験なんですね。
他にも、アフリカツメガエルの細胞を使う理由はありますか?
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ハカセ: |
ああ、まだあるぞ。
さっき、A6細胞を培養すると、腎臓の構造に似た「ドーム」を形作ると言ったが、「ドームジーン」の研究から見つかってくる遺伝子、つまり宇宙で活性化される遺伝子が、地上でも活性化されたらどうなるだろうって思わんか?
重力がないところで働く遺伝子が地上で働くと、何か面白いことがわかりそうじゃろう。
本当は、その遺伝子が働くことによって、動物そのものに何が起こるかとか、腎臓そのものに何が起こるかを知りたいんじゃが、哺乳類では、そんな実験はなかなかできん。
じゃが、アフリカツメガエルなら、細胞から、実験に使うための腎臓を作りだすことができる。
浅島先生のグループは、その技術を駆使して、宇宙実験の成果をさらに発展させたいと考えておるんじゃ。
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ピカル: |
ハカセ、ちょっと待ってください!
腎臓って、作れるのですか?
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ハカセ: |
正確にはアフリカツメガエルのオタマジャクシの腎臓なんじゃが、確かに作れる(図3A)。
この腎臓を移植することで、腎機能が損なわれたオタマジャクシ(図3B)を正常化させることにも成功しておるんじゃ(図3C)。
浅島先生たちはこの研究をさらに発展させ、人に応用したいと考えておるんじゃが、そういったことにも「ドームジーン」の研究は大きく関わってくるはずじゃ。
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図3A
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図3B
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図3C
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オタマジャクシの人工腎臓
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腎臓がなくなり、余分な水分を排出できずにふくらんだ状態
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人工腎臓(緑色の部分)を移植して、正常になった!
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ピカル: |
なるほど、臓器を作る3次元的な培養や、臓器移植への期待も持てそうですね!
それでは、最後に「ドームジーン」研究からどんなことが明らかになってくるのでしょうか?
そして、その成果がどの様に役に立っていくのでしょうか
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ハカセ: |
人類が宇宙へと活動の場を広げていくにつれて、いずれは長期間宇宙に滞在することになるじゃろう。
宇宙で子供を育てるようなこともあるかもしれん。
そのためには、遺伝子レベル、細胞形成の過程で問題が起こらないように、また起こっても治せるようにしておく必要がある。
「ドームジーン」の研究から、腎臓由来A6細胞が宇宙環境においてどの様な形となり、どの様な遺伝子を活性化するかを明らかにすることが、そういった問題を解決し、安全な宇宙での生活へとつながる第一歩になると期待されておる。
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ピカル: |
そんなに大事な実験だったんですね。
それならなおさら成功してもらわなくちゃ!
ハカセ、今日はいろいろとありがとうございました。
「きぼう」でドームジーン実験が始まる日を楽しみにしています。
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文責:
伊藤 弓弦(いとう ゆずる)
(独)産業技術総合研究所 器官発生工学研究ラボ
研究員
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