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宇宙船内は空気、温度、湿度も地上と同じだし、気圧も1気圧だ。違うのは、重力がないということだけ。この違いは、どんな影響を及ぼすだろうか? Q24 無重力の宇宙船内では、液体の水も空中に浮く。このとき、水の形は必ず「球」になる。これは「球」という形のどのような特徴によるものだろうか?
A24 「球」は同じ体積で表面積がもっとも小さい形だから。 無重力で空中に浮いている水を考えてみよう。 内部の水の分子は、まわりを同じ水の分子で囲まれている。そのため、水分子の間に働く引力によって、安定した状態を保つことができる。しかし、表面の水の分子は、そうはいかない。空気と接しているため、不安定な状態にある。 ![]() 水としては、不安定な表面の面積は、なるべく小さくしたい。そこで、水に限らず液体の表面には"表面積をなるべく小さくしようとする力"が働く。この力を「表面張力」とよぶ。「球」は同じ体積で表面積がもっとも小さい形なのだ。空中に浮いた水は、「表面張力」の影響で、表面積をなるべく小さくしようとして、「球」になるのだ。 Q25 図1のように、水と空気が半分ずつ入ったガラスのびんを、宇宙船内にもちこんだ。無重力では、水の形は(1)~(6)のどれに最も近いだろうか? また、水のかわりに水銀だったら(図2)、水銀の形は(1)~(6)のどれに最も近いだろうか?
図1の水とガラスが接した部分に注目してほしい。水がガラスの壁を登っている! これはガラスが水でぬれやすいためだ。水はガラスの壁全体をぬらそうとするが、重力があると、水自体に重さがあるので、壁をわずかに登る程度で終わってしまう。 しかし、無重力では水に重さがないから、ガラスの壁全体が水でぬれ、空気は壁からはなれて一つの不安定な球状の泡になる。泡が球状になるのは「表面張力」の影響だ。 一方、ガラスは水銀でぬれにくいから、壁面は水銀でぬれず、水銀は大きな球となってびんの中に浮かぶ。水銀が球状になるのも、「表面張力」の影響だ。 このように、無重力で液体のふるまいを考えるときには、「表面張力」とともに、物質の「ぬれやすさ」が大きな意味をもってくるのだ。 ![]() A26 水はストローのついた密閉容器に入れてあり、ストローをくわえ容器を押して水を飲む。
また、船内では、水は空中に出ると、すぐ水球になる。細い管から静かに出せば、比較的大きい水球となって空中に浮かんでいる。ところが、細い管から勢いよく噴き出すと、たくさんの小さい水球となって空中に飛び散る。こうなったら大変だ。船内の装置に水が入り込み、故障の原因になるからだ。 このような理由で、宇宙船内では、水はすべて容器にとじこめてある。飲むときも、ストローを使う。ジュースやコーヒーも、粉末が容器に入れてあり、水や湯を加えて飲むのである。 ![]() 宇宙船内で水を飲む向井宇宙飛行士。 水は容器に入れてあり、飲むときは、ストローを使う。 Q27 下の写真は、宇宙でも飲めるように開発された炭酸飲料だ。無重力で炭酸飲料を飲むのは、水やジュースやコーヒーを飲むのと違って、大変なことなのだ。なぜだろうか?
A27 炭酸飲料は、缶を開けた瞬間に、生じた泡がどんどん大きくなり、中身が吹き出してしまうため。 圧力が高いほど、気体は液体に溶けやすい。このことを利用したのが炭酸飲料。二酸化炭素を高い圧力で液体に溶かし、缶やビンにつめてある。炭酸飲料の口を開けると、さかんに泡が出るのは、圧力が下がり、溶けきれなくなった二酸化炭素が泡となって発生するためだ。 地上では、泡は浮力で上昇し、液面から出てしまうから、それほど大きくなれない。しかし、無重力では、泡は炭酸飲料中にとどまったまま、どんどん大きくなる。その結果、泡のまわりの炭酸飲料がはじき飛ばされ、激しく吹き出すことになる。 開発された缶は、特殊なスチール製。飲み口には、飲み物の流れを調節する装置や液もれを防ぐ安全ロックがついていて、レバーを押したときだけ、飲み口から炭酸飲料が出てくるしくみになっている。 Q28 下の写真は、宇宙船内で食事をしているときのものである。無重力なのに、食べ物は浮かばないのだろうか?
A28 食べ物に適度な水分があれば、容器やスプーンにくっつき、空中に浮かない。 最近の宇宙食は、乾燥食品に水を加えてもとにもどしたり、調理済みのものを温めて食べるタイプが主流である。食べ物に水分があるし、食べ物自体にも粘りけがあるので、少しぐらい動かしても空中には浮かないのだ。
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最終更新日:2000年 3月 9日
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