ISSは今回のミッションの結果、自立した運用ができるようになりました。これでISS建設計画はこれまでのフェーズIIを終了し、今後の組立作業はフェーズIIIとして実施されることになります。 ISSが自立運用できるためには次の2つの機能が必要であり、それぞれの機能はSTS-104(今回)とSTS-100(前回)のミッションでISSに付加されました。
- 今回のミッションで付加された機能:ISSからの船外活動実施機能
| 国際宇宙ステーション(ISS)にエアロック(愛称:クエスト)が取り付けられ、スペースシャトルの支援を受けることなく、ISSから直接船外活動をすることができるようになりました。 |
- 前回のミッションで付加された機能:ロボットアームによるISS船外の機材を取り扱う機能
| ロボットアーム「カナダアーム2」が取り付けられ、スペースシャトルのロボットアームを使わなくても、ISS外部の機材を扱うことができるようになりました。 |
STS-104ミッションでは船外活動を3回実施しました。ISSとアトランティス号のロボットアームを使用し、船外活動の支援を受け、次のような作業をおこないました。
- エアロック「クエスト」をユニティ・モジュールの右舷に取り付ける。
- クエストの外壁に、高圧ガスタンクを4基(酸素タンクと窒素タンクを各2基)取り付ける。
3回目の船外活動は新しく取り付けたエアロック「クエスト」を使用してISSから実施しました。この船外活動の準備中に実施した「エクササイズ・プレブリーズ」は、ISSで実施する船外活動の準備を短時間で済ませるために新しく開発された方法であり、今回初めて試行しました。 エアロックを取り付けたことにより、ISSの重量は約130トンとなり、スペースシャトルとほぼ同じ重量になりました。
飛行の概略は以下のとおりです。(明示のない時間は米国中部夏時間です。) 詳細はステータスレポートをご覧下さい。
打上げと帰還日時
打上げ日時 |
2001年7月12日午前5時4分(米国東部夏時間)(打上げ地時刻)
(日本時間7月12日午後6時4分) |
帰還日時 |
2001年7月24日午後11時39分(米国東部夏時間)(帰還地時刻)
(日本時間7月25日午後0時39分) |
ミッション期間 |
12日18時間35分 |
作業がたて込んだためISSと結合しての作業期間を1日延長し、また帰還予定地であるケネディ宇宙センターの悪天候のため着陸を1日延期したため、ミッション期間は予定よりも2日間長くなりました。
ISSとのドッキングおよびアンドッキング日時
ドッキング日時 |
7月13日午後10時8分(日本時間7月14日 午後0時8分) |
アンドッキング日時 |
7月21日午後11時54分(日本時間7月22日午後1時54分) |
ドッキング期間 |
8日1時間46分 |
船外活動(EVA)
この飛行では計3回の船外活動が行われました。ISS組立としてはISSから実施したものも含め、通算24回の船外活動を実施したことになります。
第1回船外活動(飛行4日目) |
開始時刻 |
7月14日午後10時10分(日本時間7月15日午後0時10分) |
終了時刻 |
7月15日午前4時9分(日本時間7月15日午後6時9分) |
作業時間 |
5時間59分 |
作業者 |
マイケル・ガーンハート、ジェイムズ・ライリー |
主要作業内容 |
この日の作業はISSのロボットアーム「カナダアーム2」を使用して、エアロック「クエスト」をISSに取り付けることが主目的でした。船外活動はその作業を側面から支援することを主たる任務とし、次の様な作業をおこないました。
a.クエストの共通結合機構(CBM)のカバーの除去
b.高圧ガスタンク取付け用バーのクエストへの取付け
c.打ち上げ時に使っていたクエストへのヒータ電力供給配線の取外し
d.ユニティ・モジュールのCBMの点検
e.クエストをユニティのCBMに接続する際の、精密な位置決め支援(音声で取り付けを支援)
f.クエストへのヒータ電力供給配線をユニティとの間に接続
g.次の船外活動で実施する高圧ガスタンク取付け作業の足場の準備
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第2回船外活動(飛行7日目) |
開始時刻 |
7月17日午後10時4分(日本時間7月18日午後0時4分) |
終了時刻 |
7月18日午前4時33分(日本時間7月18日午後6時33分) |
作業時間 |
6時間29分 |
作業者 |
マイケル・ガーンハート、ジェイムズ・ライリー |
主要作業内容 |
この日の作業はクエストの外壁に高圧ガスタンクを取り付けることであり、ISSのロボットアーム「カナダアーム2」によりアトランティス号の貨物室から移動した高圧ガスタンクに船外活動クルーが手を添えて、カナダアーム2との共同作業による取付け作業をおこないました。当初は2基のタンク(酸素と窒素タンク各1基)の取付けを予定していましたが、時間に余裕ができたので3基目(酸素タンク)の取付けもおこないました。
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第3回船外活動(飛行10日目) |
開始時刻 |
7月20日午後11時35分(日本時間7月21日午後1時35分) |
終了時刻 |
7月21日午前3時37分(日本時間7月21日午後5時37分) |
作業時間 |
4時間2分 |
作業者 |
マイケル・ガーンハート、ジェイムズ・ライリー |
主要作業内容 |
この日の船外活動はISSに取り付けたばかりのエアロック「クエスト」から実施しました。これはISSをベースとする初めての船外活動であり、次のような作業をおこないました。
a.高圧ガスタンク(窒素タンク)1基の取付け
b.ロシアの宇宙服との通信用配線の敷設
c.高圧ガスタンクの把持部への断熱カバーの取り付け
d.太陽電池パドルの回転支持機構の点検
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船内活動
2001年3月にISSの第1次長期滞在クルーと交代した第2次長期滞在クルー3名と5名のアトランティス号のクルーは概略次のような作業を行いました。
- 宇宙服などの点検
- エアロック「クエスト」や高圧ガスタンクを取り付けるためのISSのロボットアーム「カナダアーム2」の操作
- 船外活動クルーを移動させたり作業用の足場を提供したりするためのスペースシャトルのロボットアームの操作
- ユニティと結合しているクエストのIVハッチを、クエストの中央付近のクルーロックの入り口に移設。(これにより、クルーロックのみを真空にすることで船外に出ることができるようになりました。)
- クエストの起動作業およびこの作業に関連して発生した不具合などの対応
- アトランティス号からISSへの補給品の搬入
- ISSで不要となった物品のアトランティス号への搬入
- TVとのインタビューなどの広報活動
- リブースト(軌道高度を上昇させる軌道制御)
リブーストとは軌道高度を上昇させるための軌道制御のことです。ISSは、空気抵抗で高度が日々下がります。そこで、その次の便が到着するまでの高度低下を見込んで、シャトルをISSから分離する前に、スペースシャトルのスラスタによりISSの軌道高度を上昇させる軌道制御を実施しています。STS-104ではリブーストを次のように実施しました。
実施日(米国中部夏時間) | 上昇高度 |
飛行 5日目(7月15日) | 2.2マイル(約3.5km) | 飛行
7日目(7月18日) | 2.3マイル(約3.7km) | 飛行 8日目(7月19日) | 5.0マイル(約8.0km) |
STS-104の期間中にいくつかの不具合がありました。 ただしどの不具合も対策が講じられ、解消しています。
エアロック「クエスト」起動中の不具合
- 能動熱制御系(ATCS)をクエストに接続するための冷却水配管を接続する作業中に、配管から約0.5リットルの水漏れが発生。この水漏れによる冷却水の圧力低下を感知して、デスティニー側のATCSがダウンしました。
- ユニティとクエスト間のモジュール間換気バルブの(船内での)空気漏れが見つかりました。
- 取り付けたばかりの高圧酸素ガスタンクからの酸素が、バルブの設定ミスのためにエアロックに流れませんでした。
- クエストのクルーロックと装備ロック間のバルブ周辺から空気漏れが見つかりました。
その他 - ISSの管制制御用コンピュータ(C&C MDM)に一時的なハードディスク障害が発生。
- 宇宙服(EMU3)のバッテリから液漏れが発生。(宇宙服が汚染されたため、ISSに搬入せずに持ち帰りました。)
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