5A.1フライトではシャトルのペイロードベイに、イタリアが製作した多目的補給モジュール(MPLM:Multi-Purpose
Logistics Module)と、船外機器輸送キャリア(ICC:Integrated Cargo Carrier)を搭載します。
MPLM内には機器を収容した7台のラックを搭載し、軌道上でデスティニーへ搬入します。このうちの1台、人体研究(HRF:Human Research
Facility)ラックはISSに初めて搭載される国際標準実験ラック(ISPR:International Standard Payload Rack)で、NASDAや他の国々の実験装置が組み込まれています。MPLM内には、以上の7台のラックに加え、補給品保管ラック(RSR:Resupply
Stowage Rack)や補給品保管プラットフォーム(RSP:Resupply Stowage Platform)など合計14台のラックに補給物資などを搭載して打ち上げる予定です。
船外機器輸送キャリア(ICC:Integrated Cargo Carrier)はシャトルのペイロードベイ(貨物室)に積み荷を固定するための荷台ですが、これにはデスティニー上部結合機構(LCA:Lab
Cradle Assembly)、配線トレイ(RU:Rigid Umbilical)、冷媒流量制御装置(PFCS:Pump and Flow Control
Subassembly)、船外保管プラットフォーム(ESP:External Stowage Platform)などの機器が取り付けられて打ち上げられます。
またシャトルのミッドデッキには、ISS滞在クルーの交代に必要な装備およびMPLMの起動と入室のための装置や、クルーの健康管理を行うための搭乗員健康管理システム(CHeCS)の機器や、EarthKAMなどの実験機器が搭載されます。
MPLMはイタリア宇宙機関(ASI)が開発した、与圧補給品をISSへ運ぶモジュールで、3機が開発されており、それぞれ、「レオナルド」、「ラファエロ」、「ドナテロ」という愛称が付けられています。今回飛行するのは、1号機の「レオナルド」です。
MPLMはシャトルのペイロードベイ(貨物室)に乗せて打ち上げられ、シャトルのロボットアームでISSのユニティの下側の共通結合機構(CBM:Common
Berthing Mechanism)に結合して、クルーがラックや物品の搬入搬出を行います。作業終了後は、CBMによる結合を解除して、再びシャトルのペイロードベイ(貨物室)に積み込み地球へ持ち帰ります。
これまでシャトルとISS間の物資の移動は、シャトルとISSとのドッキングポートであった与圧結合アダプター(PMA:Pressurized
Mating Adapter)を経由していましたが、PMAの出入り口(ハッチ)は内径が約60cmしかないので、移動できる物資のサイズはかなり制限されていました。MPLMのCBMハッチは縦横約130cmあるので、大型の機器やラックなどの搬入ができるようになるほか、搬入作業を迅速に行うことができるようになります。 MPLM内には、最大16台のラックを搭載でき、このうち、最大5台のラックには電力を供給することができるので、冷凍冷蔵庫ラックなども電力を供給しながら打ち上げることができます。また、ラックで囲まれた中央の空間にも補給品などを積むコンテナを最大4個搭載することができます。
MPLMの諸元 全長 | : | 約6.6m |
外部直径 | : | 約4.5m | 容積 | : | 76.4m3 |
打上げ時重量 | : | 9,072kg(最大5tの貨物を搭載) | CBMハッチ開口部 | : | 1.3m×1.3m(他の与圧モジュールと同じ) |
多目的補給モジュール(MPLM)レオナルド |
ISSにMPLMを取り付けた状態 |
- 国際標準実験ラック(ISPR)
中性子モニタ装置: BBND (Bonner Ball Neutron Detector) | 5A.1フライトでは、初めてISSに搭載する国際標準実験ラック(ISPR)である有人研究(HRF:
Human Research Facility)ラックがデスティニー内に搬入され、起動されます。この有人研究(HRF)ラックには、NASDAの実験装置を始めとして、以下のように国際的な実験装置が搭載されます。
- 中性子モニタ装置: BBND (Bonner Ball Neutron
Detector) NASDA開発
- 船内荷電粒子環境計測装置: DOSMAP* (Dosimetric Mapping) ドイツDLR開発
- 人体模型による臓器線量計測:
Phantom Torso** NASA JSC開発
- 重力変化による脊髄の刺激に対する反応に与える影響:
H-Reflex (Effects
of Altered Gravity on Spinal Cord Excitability)*** カナダ開発
ペイロードベイに設置するために準備中の船外機器輸送キャリア(ICC) | 船外機器輸送キャリア(ICC)は、スペースシャトルで機器を輸送する際に使用する荷台で、これまでに2A.1、
2A.2a、 2A.2bの、3回 のISS組立飛行で使用されています。ICCには、最大で2,718kgの荷物を搭載することができます。 ICCにはデスティニー上部結合機構(LCA:Lab
Cradle Assembly)、配線トレイ(RU:Rigid Umbilical)、冷媒流量制御装置(PFCS:Pump and Flow Control
Subassembly)、船外保管プラットフォーム(ESP:External Stowage Platform)などの機器が取り付けられます。
| ICC搭載機器のイメージ画
Real Video [ 50sec] 28K 56K |
| |
- デスティニー上部結合機構(LCA:
Lab Cradle Assembly)
デスティニー上部結合機構(LCA)は、U.S.Lab(デスティニー)の上面に取り付けられる結合機構です。LCAは、このデスティニー上面のキールピンに取り付けられます。LCAは、4月に予定されている6Aフライトで、ISS用のロボットアーム(SSRMS)を乗せたキャリアLDA(Launch
Deployment Assembly)を固定し、SSRMSの展開・起動作業時に使用される予定です。また、8AフライトでLCAには、S0トラスが取り付けられ、以後はISSの主トラス構造とデスティニーの固定部分として永久的に使われることになっています。LCAは主トラス構造とISSとの唯一の結合箇所となります。
- 配線トレイ(RU:
Rigid Umbilical)
配線トレイ(RU)は、デスティニー内のSSRMS関連のシステム機器とデスティニー外部に設置されるSSRMSとの間で、電力、通信、ビデオデータを伝送するための配線トレイであり、デスティニーの下面に取り付けられます。
- 船外保管プラットフォーム(ESP:
External Stowage Platform)
船外保管プラットフォーム(ESP)は、初期段階のISSの故障に備え、主要な船外機器の予備品(ORU)を保管するプラットフォームです。ESPは、デスティニーの左舷後方に固定されます。
ESPには、2個の船外機器を保管することができます。5A.1ではPFCS(Pump and Flow Control Subassembly)を保管することになっています。また、6Aフライトで打上げられるDCSU(Direct
Current Switching Unit)もここに保管される予定です。なお、保管されるこれらのORUには、ユニティからヒータ電力が供給されます。
- 冷媒流量制御装置(PFCS:
Pump and Flow Control Subassembly)
冷媒流量制御装置(PFCS)は冷却用アンモニアの流量をコントロールする装置です。今回はP6トラスの冷却システムで使われているPFCSが故障した際に備えた予備の交換部品とし輸送されます。
| 各搭載機器の設置場所
Real Video [ 56sec] 28K 56K |
|