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  List: マーキュリー時代の宇宙服 / ジェミニ時代の宇宙服 / アポロ時代の宇宙服 / オレンジスーツ / 船外活動宇宙服 / 宇宙服アセンブリ / 宇宙服の生地 14層 / 生命維持装置 / プリブリーズ / 船外活動中はどうやって宇宙空間を移動するの? / まだまだ、ある船外活動ツール/ 将来の宇宙服
 
 
 
この時代の宇宙服は、航空機パイロットの与圧服をベースにアルミ等を加え、宇宙服の強度と超高低温に耐える能力を高めました。  写真は、1962年にマーキュリー宇宙服を着用したジョン・グレン宇宙飛行士です。1962年2月20日に宇宙飛行を行い、アメリカ人として初めて地球周回軌道を飛行しました。それから36年後、再び1998年STS-95ミッションで宇宙に飛行した時は77歳でした。
 
 
 
この時代は船外活動するようになり、動きやすいように改良され、宇宙服と宇宙船がホースでつながっていて、宇宙船から空気が送られるようになっていました。 実際に船外活動をすると、体温が上がり、疲労が激しく、ひどい湿気でヘルメットは内側から曇ってしまい、空気では宇宙服をうまく冷却できないことがわかりました。 写真は、左から、チャールズ・コンラッド宇宙飛行士、リチャード・ゴードン宇宙飛行士です。1966年、ジェミニ11号の打上げ前に、射点19のホワイトルーム(White Room)で撮影されたものです。
 
 
 
アポロ時代になると月の表面を自由に動けるように改良されました。手袋の指先をゴムにしたり、空気・水・電気などを入れる携帯型のライフサポート・バックパックも開発されました。 宇宙服とバックパックの総重量は地上では82kgでしたが、月面では重力が少ないため、14kgにしかなりませんでした。また、この時代の宇宙服は空冷ではなく、ナイロンの下着メッシュが水を使って宇宙飛行士の体を冷やすというもので、ちょうど車のラジエータでエンジンを冷やすのと同じ仕組みになっていました。 写真は、1969年7月20日、人類史上初の月面歩行を成し遂げた記念すべき宇宙飛行アポロ11号、ニール・アームストロングによって撮影されたエドウィン・E・オルドリンの月面での船外活動の様子です。
 
 
 
スペースシャトルのクルーがシャトルに乗り込むときに着用します。1986年のチャレンジャー事故の後、クルーの緊急避難用システムが必要と判断したNASAは、打上げと帰還時に着用するオレンジスーツ(与圧服)を開発し、チャレンジャー事故後初めてのフライトとなる、1988年のSTS-26で、LES(Launch and Entry Suit)がデビューしました。 その後、クルーのストレスや疲労を軽減するために、LESよりも軽く、かさばらず、シンプルな作りのACES(Advanced Crew Escape Suit)を開発し、1994年のSTS-68で初飛行しました。 オレンジスーツの重さはパラシュートを含め、約43kgとなっています。 写真は、2004年9月24日に撮影された、NASAジョンソン宇宙センターで、CCT実物大訓練設備で緊急脱出訓練を行う前に、オレンジスーツ(与圧服)を着用する野口聡一宇宙飛行士です
 
 
スペースシャトルや国際宇宙ステーション(ISS)の外に出て宇宙空間で作業することを船外活動(Extravehicular Activity: EVA)と言い、宇宙飛行士が宇宙空間で作業する場合には、真空や高温、低温といった過酷な環境から宇宙飛行士を守るために、宇宙服を着用しなければなりません。 この宇宙服のことをNASAでは船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)と呼んでいます。 EMUは宇宙服アセンブリ(Space Suite Assembly: SSA)と生命維持システム(Life Support System: LSS)のふたつの部分から構成され、宇宙飛行士に安全な呼吸環境を提供すると共に、体温の保持、有害な紫外線、宇宙線や微小な宇宙塵から体を守る役割を果します。重さは約120kgあります。 EMUは約7時間のEVAが可能なように作られていますが、酸素の消費量には個人差があるため、実際にはもう少し長時間の作業が行われることがあります。 写真は、STS-114クルー、野口聡一宇宙飛行士が船外活動服のフィット・チェックをしている様子です。右隣は、アシストしているアンドリュー・トーマス宇宙飛行士です。いろんな動きで具合を確かめ、微調整と試着を繰り返し、最終的にベストフィットの宇宙服に仕上げていきます。
 
 
 
宇宙服アセンブリは、搭乗員の胴体、四肢、頭部を包み込む人間の形をした圧力容器のことです。各パーツを組み合わせて構成されるので、パーツ毎に種類がとりそろえられ、その組合せによりほとんどの人のサイズに合うようになっています。
 
 
 
宇宙服の生地は、冷却下着の3層及び気密を保つ2層、宇宙環境からの保護を目的とした9層の全部で14層の生地で構成されています。 気密層(4,5層目)は、内圧による酸素の漏れと服の膨らみを防ぐためポリウレタンでコートしたナイロンによるブラッダー(気密維持層)になっており、さらに気密性を完全にするためとブラッダーの摩擦防止のため、このナイロンブラッダーの上をダクロン製のカバーレストレイント(拘束層)が被っています。 保護層(6〜14層目)は断熱と耐宇宙線機能を有する多重層で構成されています。一番内側はネオプレン(R)ゴムでコーティングしたナイロン層で、そのすぐ上は7層のアルミ蒸着マイラー(R)から構成されます。 最外層は断熱効果と微小隕石対策のためゴアテックス(R)とノーメックス(R)の混紡、その裏地はケブラー(R)から構成されています 。
 
 
 
生命維持システム(Life Support System: LSS)は、宇宙服の内部気圧と温度をコントロールし、呼吸用の酸素や電力を供給する他、通信機能を提供するシステムで、宇宙服の背中に取り付けられています。万一故障などで酸素が供給できなくなった場合に備えて、バックアップ用の二次酸素タンクも装備してあります。 生命維持システムを構成する主な機器は、
・主生命維持システム(Primary Life Support System: PLSS)
・水酸化リチウム(LiOH)カートリッジ、または再生利用が可能なISS用のMETOXと呼ばれるキャニスター
・バッテリ ・表示制御モジュール(Display and Control Module: DCM)
・ 二次酸素パック(Secondary Oxygen Pack: SOP)
などです。  写真は、2002年4月13日に撮影された、STS-110クルー、リー・モーリン宇宙飛行士(手前)とジェリー・ロス宇宙飛行士が生命維持装置を付けて船外活動を行う様子です。この日、7時間半に及ぶ船外活動で、S0(S-ゼロ)トラスをISSのデスティニ−に固定しました。これによってISS増設の中心部がしっかりと恒久的に固定されました。
 
 
 
船外活動(EVA)は単に宇宙服を着て、宇宙空間に出て仕事をして戻ってくるといった気軽なものではなく、何時間もかけて周到な準備をしなければなりません。特にプリブリーズと呼ばれる作業はとても重要です。 宇宙服内部の気圧を、スペースシャトルや国際宇宙ステーション(ISS)内と同じ1気圧にして船外に出ると、気圧差で宇宙服が膨れ上がってしまい、腕や手の指が曲がらなくなり作業ができなくなります。 そのため、現在の宇宙服は約0.27気圧の圧力で使用するよう設計されています。しかし、宇宙服内の圧力を約0.27気圧に下げる過程で減圧症を生じる可能性があります。 私達が呼吸する大気中には窒素が含まれていますが、周囲の圧力を急激に低下させると、体内組織にとけ込んでいた窒素が微小な気泡となり毛細血管を詰まらせます。すると、減圧症を引き起こすのです。 プリブリーズは、この減圧症を防ぐために実施される手順です。船外活動開始前までに体内にとけ込んでいる窒素成分を体外へ追い出すもので、プリブリーズの手順は、船外活動をスペースシャトルから行う場合と、ISSから行う場合とでは若干異なります。 写真は、船外活動を前にプリブリーズを行うSTS-113クルー、マイケル・ロペズ-アレグリア宇宙飛行士と、アシストしているドナルド・ペティット宇宙飛行士です。
 
 
 
EVA中の飛行士が誤ってスペースシャトルやISSから離れていかないよう安全を確保するためにさまざまな機器があります。代表的な機器をいくつかあげてみます。
・スライドワイヤ
スペースシャトル(オービタ)のペイロードベイ(貨物室)の両外側や、国際宇宙ステーション(ISS)の外壁に取り付けられています。各スライドワイヤにはふたつのスライダがあり、ここにセイフティ・テザーの端のフックを取り付け、クルーは広い範囲を行動することができます。

・セイフティ・テザー
クルーをスライドワイヤに繋ぎ止めておくための伸縮式のワイヤ・ケーブルで、腰の固定具に取り付けて使用します。

・ハンドレール
クルーが移動する時につかむ手すりのことで、スペースシャトルでは、ペイロードベイの両側や前方と後方の隔壁に取り付けられています。 また、ISSでも、多数のハンドレールが使用され、新しいEVA工具と併用することで、身体の固定や、小型の機器の固定などにも使われます。

・テザー
ベルト状のロープで、手首テザーはEVA機器を使用中や移動中に失わないために利用し、腰部テザーはEVA中のクルーを宇宙船に繋ぎ止めておく(セイフティ・テザーにつなぐ)ために使用したり、他のクルーと繋ぎあわせたりするのに使います。

・ポータブル・フット・レストレイント(PFR)
EVAクルーの足を固定するための足場として使用されます。 PFRを固定するソケットに差し込むことでいろいろな場所に足場を移動することができます。

・関節付きポータブル・フット・レストレイント(APFR)
PFRに可動式の関節部を付けたもので、APFRに足を固定した宇宙飛行士が、ヨー方向、ロール方向の2軸の角度を調整レバーで変更することができます。これによって、作業時の無理な姿勢を減らして、作業がしやすくなります。

・PFR取り付け装置(PAD)
スペースシャトルのロボットアーム(RMS)の先端にPFRを取り付け、移動可能な足場とするために使われます。足場の位置は、RMSの先端に乗ったEVAクルーが、船内のRMSを操作するクルーに音声で移動を指示することで行います。PADを使うことにより、PFRを固定するソケットの取り付け場所を気にすることなく、作業の自由度を広げることが出来ます。

・宇宙飛行士身体固定用テザー(BRT)
宇宙服側にBRTの一端をとりつけ、他端をハンドレールに固定することにより、両手を自由に作業に使えるようにするための工具で、ISSの組み立てに備えて開発された機器です。 また、クルーの両手を自由にした状態で機器をBRTで把持したまま移動することもできます。また、BRTの中央部は柔軟に曲げられるフレキシブル構造になっています。

・セルフレスキュー用推進装置(SAFER)
EVA中の宇宙飛行士が誤って宇宙空間に放り出されたりした場合に、自ら飛行して宇宙船に帰還できるようにするための小型の推進装置で、宇宙服の背中の生命維持装置下部に取り付けられています。  スペースシャトルでEVAを行う場合は、飛ばされたEVAクルーをスペースシャトルで追跡して救助することができますが、スペースシャトルがISSとドッキングしている時や、スペースシャトルがいないときにISS上でEVAを実施しているような場合には簡単には救助することが出来なくなります。  このような場合に備えてISSでEVAを行うクルーはSAFERを必ず装着することになっています。写真は、2002年10月に撮影されたSTS-112クルー、デイヴィッド・ウルフ宇宙飛行士が、SAFERを装着し、国際宇宙ステーションS1トラスの端下側への外部カメラ取り付け作業をしている様子です。
 
 
 
・ミニ・ワークステーション(Mini-Workstation: MWS)
宇宙服の胸に取り付けて使用し、EVA工具を固定したり、作業場所で伸縮式のテザーによって自分の身体やEVA工具を繋ぎ止めたりするのに使用されます。

・EVAカフ・チェックリスト
EVA作業の手順や宇宙服の不具合対応などを記した簡単な手順書で、宇宙服の袖口(カフ)にはめて使用します。

・手首ミラー
ヘルメット装着時には自分の胸部は見えないため、胸に装着している表示制御モジュールの表示等をこのミラーに反射させて読みとるために使用します。

・ピストル型パワー・ツール(Pistol Grip Tool: PGT)  
バッテリ駆動方式の電動工具で、ネジ/ボルトの締め付け、緩め作業に使用します。作業で使うためのトルクや回転数を何通りも設定できるようになっています。  S0(エスゼロ)トラス近くでのSTS-112クルー、デイヴィッド・ウルフ宇宙飛行士の船外活動で、写真左上「クエスト」(エアロック)方向から船外に出てトラスへ移動中の様子です。  写真は、レックス・ウォルハイム宇宙飛行士がSTS-110ミッション3回目の船外活動を行っている様子です。6時間27分の船外活動で、国際宇宙ステーション(ISS)のロボットアームの配線接続を変更したり、宇宙初の台車の固定ボルトを外すなどの作業をおこないました。
 
 
 
NASAは、数十年後の惑星探査に向けてH-スーツ、I-スーツ、D-スーツという3種類の宇宙服を開発しています。写真は、2004年11月に行われたアメリカアリゾナ州砂漠で行われたジョンソン宇宙センターとグレンリサーチセンターの科学者たち主導のThe Desert Research and Technology Studies (RATS) teamによるマーク-IIIスーツデモンストレーション実験の様子です。  H-スーツはハイブリッド宇宙服で、硬い部品と柔らかい部品で構成されています。硬い部品には胴体の上部と下部が、やわらかい部品には布の肘や膝が含まれます。肩、上腕、ウェスト、ヒップ上部、ヒップ中央部、上脚、くるぶしの部分にベアリングが入っています。また上半身の裏側のハッチから体を入れるようになっていることから、後部エントリー型スーツとも言います。重さは59kgです。  I-スーツは、基本的にはソフトスーツですが、肩、上腕、ヒップ上部、上脚の部分にベアリングが入り、肩や腕や脚を回すことができます。これは軽く、小さくたため、安い費用で、オーダーメイドができます。  D-スーツは、軽量ソフトスーツで、重量は12kgしかありません。ベアリングは上腕に使われています。このソフトスーツは、ベアリングの多いH-スーツ、I-スーツよりもずっと軽く、宇宙飛行士は、特に胴体下部では小さな動きもできます。  未来の宇宙服はこうした3種類のスーツの最も優れた点を取り入れ、課題を反映させる予定です。