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「きぼう」日本実験棟は、世界15ヶ国が協力して建設している国際宇宙ステーション(ISS)の実験棟の一つで、宇宙で長期間にわたって実験できる日本初の有人施設です。現在、ISSへの打上げに向けて着々と準備が進められています。
ISSは90分で地球を1周し、大気の影響を受けずに宇宙や天体、地球の観測を行うことができます。また、豊富な太陽エネルギーを活用できるなどの特徴を持っています。
さらに、ISSを取巻く宇宙空間は、重力が地球の1万分の1、大気が地上の1億分の1、太陽や銀河からの宇宙放射線が飛び交う空間で、これらの宇宙環境の特徴を活かし、「きぼう」では自然科学分野での実験・研究が行われる予定です。
こうした研究によって新たな宇宙の価値観が生まれ、教育、芸術、ビジネスの各分野における創造の場として広がりを見せていくことになるでしょう。
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船内は1気圧の空気で満たされていて、地上と同じ服装のままで微小重力環境を活かした、さまざまな実験を行うことができます。ここは「きぼう」のメインともいえる施設で、直径4.4m、長さ11.2m、重さ15.9トン、最大搭乗人数は4人です。
電力、空調、通信、ロボットアームの操作など「きぼう」を運用するためのシステムラックが11個、各種実験を行うための実験ラックが12個、合計23個のラックが、天井、床、左右の壁に収納されています。船内実験室には2つの窓があり、船外の状況を確認することができます。
写真は、2003年6月10日に撮影された、NASAケネディ宇宙センター 、宇宙ステーション整備施設(Space Station Processing Facility:SSPF)に運ばれた船内実験室です。
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実験装置などの物資を保管するところで、大きさは、直径4.4m、長さ3.9mで、重さは4.2トン、地上と同じ1気圧の空気で満たされています。このような専用の保管室を持っているのは、ISSの中でも「きぼう」だけです。
実験ラックなどを8個収納することができ、必要に応じて宇宙飛行士がラックを入れ替えます。ISSのラックは各国共通の規格で設計されており、例えば「きぼう」の実験ラックをアメリカの実験棟に移して実験を行うこともできます。
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船外実験プラットフォームでは、高真空、広大な視野といった宇宙環境を利用した天体観測、地球観測、宇宙技術開発などの実験が、実験装置を宇宙空間にじかにさらして行われます。宇宙で実験や試験を行うために必要な電力の供給や冷却機能も持っており、実験装置を10個取り付けて運用することができます。
実験装置はスペースシャトルや日本のH-2Aロケットなどで運ばれ、ロボットアームで交換されます。大きさは、幅5m、長さ5.6m、高さ4.0mで、重さは4.1トンあります。標準的な実験ペイロード(実験装置)の大きさが、約1.85、1m、0.8mですから、大規模な船外実験施設となります。ISSの中でもこれだけ大規模な実験施設を持つのは「きぼう」だけです。
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船外実験プラットフォームで使用される実験装置を保管するところで、実験装置は3個保管することができます。大きさは幅4.9m、長さ4.2m、高さ2.2m、重さ1.2トン。実験装置はロボットアームを使って移動させます。
船外パレットは「きぼう」本体から取り外しが可能で、実験が終わった装置をスペースシャトルで地上に持ち帰り、新しい実験装置を運ぶための輸送機にもなります。
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6個の関節をもつロボットの腕で、船外実験用の実験装置の交換などを行います。宇宙飛行士は船内実験室からロボッアームの操作を行います。実験装置など大きな機器の移動に使う「親アーム」と、より細かな作業を行うための「子アーム」から構成されます。
親アームは長さ9.9m、重さ785kg、最大で7トンのものを持つことができます。子アームは長さ1.5m、重さ185kg、最大で300kgのものを扱うことができ、子アームは使用時には親アームの先端に取り付けられ、使われないときは船外実験プラットフォーム上に設置されます。
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宇宙での実験で得られた成果は、さまざまな産業への応用が考えられています。例えば、情報技術の基盤となる半導体や光学素子などの新材料創製や、環境にやさしく効率的なエンジンや発電機器の開発、ゲノム情報に基づく新しい医薬品の開発、また、骨粗しょう症や筋萎縮に関する新しい医療法の開発、遠隔医療の高度化など、地上にいる我々人類の生活改善に関する、多岐にわたる貢献が期待されています。
また、「きぼう」は定期的な物資の補給が可能なので、宇宙飛行士による軌道上での機器の交換や回収、修理を行うことができます。さらに人工衛星に比べて大型の機器を搭載でき、利用可能な電力が多いといった特徴があります。
このため将来、惑星探査や大型太陽発電衛星などの実現に必要な組立ロボットの搬送や材料の補給、組立技術などの検証、実際の宇宙環境を利用した機器の機能、動作確認などの実験、軌道上の天文台、地球観測ステーションなど、大型で先端的な観測機器の実証、実験的観測などができる施設として期待されています。
さらに、人類が新たに手に入れた活動領域を、次世代人材育成や文化の創造、ビジネスチャンスとしても活用されることでしょう。
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蛋白質結晶成長装置により、地上より分子がきれいにならんだ大きなタンパク質結晶を取得し、それを調べることによりさまざまな病気の解明や、医薬品の開発などを目指します。
写真は、アルファミラーゼの結晶と電子密度図(解析中)です。
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細胞培養装置 (Cell Biology Experiment Facility:CBEF)では、動物、植物、微生物の細胞を用いて、宇宙環境での生命の基本現象を研究します。人類が宇宙で長期間滞在する時代に向けて、微小重力や放射線などの宇宙環境が、人間や動物、植物に与える影響を調べます。
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宇宙環境計測ミッション装置(SEDA-AP)は、宇宙特有のプラズマや放射線等を観測し、宇宙環境を利用した技術開発や実験に役立てます。将来の宇宙活動に必要なロボット、通信、エネルギーなどの技術開発に活かされることが期待されています。写真は、SEDA-APフライトモデルです。
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超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)は、オゾン層を破壊する成層圏中の塩素や臭素等の微量気体、およびオゾン層自体が放出する短い電波(サブミリ波)を宇宙から観測する装置です。
地球大気の新しい観測方法として期待されています。
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「きぼう」の船外実験プラットフォームに取り付けられる全天X線監視装置(MAXI)は、宇宙を大気に妨げられることなく360度にわたってX線で見張る世界最大の高視野カメラです。
銀河系の外で起こっている天体のダイナミックな活動や、銀河の分布などを調べることができ、宇宙の成り立ちや構造、その起源や進化の謎に迫ります。
写真は、可視光(左)とX線(右)でとらえたかみのけ座銀河団です。
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「きぼう」はすでに開発段階を終え、ISSへの打上げに向けて準備を進めています。「きぼう」は筑波宇宙センターからアメリカのケネディ宇宙センターに輸送され、スペースシャトルで3回に分けて宇宙へ打上げられ、ISSに取り付けられます。写真は、2003年11月5日、ケネディ宇宙センターで撮影された船内実験室です。 |
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「きぼう」がISSに取り付けられると、「きぼう」が正常に動作しているかなどの情報が地上の管制室に送られてきます。それらの情報を監視、処理しながら「きぼう」の本格運用が始まります。
「きぼう」の運用は日本の筑波宇宙センターにある「きぼう」運用管制室で行います。
ここではISS全体の運用を行う米航空宇宙局(NASA)と協力しながら、「きぼう」を地上から支援します。「きぼう」運用管制室では、全体を指揮するフライトディレクタやISSにいる宇宙飛行士と交信するキャプコムなど、多くのスタッフが3交代制で責任を持って、それぞれの役割を行います。
また実験装置は、宇宙だけではなく、地上からも研究者が操作することができます。筑波宇宙センターでは、「きぼう」から送られてくる実験データや画像を受け取り、研究者や「きぼう」の利用者が実験条件の設定や変更をリアルタイムに行いながら、実験を進めていきます。写真は、2004年3月5日、筑波宇宙センター「きぼう」日本実験棟JEM運用管制室で行われたペーパーシミュレーション訓練(PS訓練)の様子です。
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