国際宇宙ステーション(ISS)の第48次/第49次長期滞在クルーである大西宇宙飛行士は、9月前半はNASAジョンソン宇宙センター(JSC)で訓練を行い、9月後半はドイツ ケルンにある欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士訓練センター(EAC)にて訓練を行いました。
JSCでは、宇宙実験訓練や医学データ取得、緊急対処訓練の他に船外活動(EVA)訓練を行いました。
船外活動ユニット(EMU)の中は約0.3気圧の酸素で満たされています。1気圧の空気で満たされているISS船内からEMUを装着して、0.3気圧まで減圧するためには、事前にエクササイズ装置を使って体内の窒素を抜くような運動をしたり、ゆっくり時間をかけるなど、減圧症のリスクを減らす工夫をします。今回は万が一減圧症の症状が出た場合の対処について訓練を行いました。
減圧症の治療は一般的に患者をチャンバー(小さな加圧空間)に入れ、高気圧・高濃度の酸素で体内に発生した窒素の気泡を消し、ゆっくり時間をかけて1気圧にまで戻していくというものです。ISSでは、酸素は貴重なのでEMU自体をチャンバーとして利用することにしています。そのためのEMUの設定方法について学びました。
大西宇宙飛行士は、12月に打上げ予定の第46次/第47次長期滞在クルーのバックアップクルー(交代要員)でもあり、第46次/第47次長期滞在クルーが何らかの事情で飛行出来なくなってしまった場合に、そのクルーの代わりに飛行してミッションを遂行することになります。
今回ESAでは、ESA関連の実験訓練と、「コロンバス」(欧州実験棟)のスペシャリスト訓練が目的でした。
ESA関連の実験のひとつとしてENERGY(エナジー)という実験の基礎データ取得を行いました。
この実験は、宇宙飛行士のエネルギー代謝が、地上と宇宙とでどのように変化するかを調べ、将来の宇宙ミッションでより効率的なエネルギー補給、宇宙食の選定、宇宙飛行士の健康維持、ひいてはミッションの成功に繋げようというものです。
大西宇宙飛行士は、宇宙食を食べ、体に入るエネルギーと消費するエネルギーの測定を行いました。
他にも、欧州実験棟(コロンバス)のメンテナンスや不具合対処訓練を行いました。