11月5日、秋葉原UDXカンファレンスで開催された“国際宇宙ステーション「きぼう」利用成果シンポジウム(第4回)~宇宙と地上の暮らしに役立つ「宇宙医学」~”に、向井宇宙飛行士が参加しました。現在、JAXAの宇宙医学研究センター長を務める向井宇宙飛行士は、長年にわたって宇宙医学の研究に携わっています。
シンポジウムの第一部「宇宙医学の現状と成果」の中で、向井宇宙飛行士は、「宇宙実験室の面白さ」と題した講演を行いました。講演の冒頭で、宇宙環境の特徴や地上との違いを説明した後、宇宙で起きる筋萎縮や骨量減少といった研究対象を紹介しました。こういった症状は、高齢者に多くみられる病気と症状が似ており、「宇宙医学は、本来、狭い意味で言うと宇宙に行く人のための研究であるが、老齢化社会に貢献できる」と向井宇宙飛行士は述べ、宇宙医学で研究した成果が、地上での生活にも役立てられる可能性があることを語りました。また、現在、JAXAが国際宇宙ステーション(ISS)を利用して行っている医学研究や、これまでに得た成果を社会に還元するための取り組みなどについても紹介しました。講演の最後に、「宇宙医学は究極の予防医学であり、宇宙と地上の両方の暮らしに役立てることを目指している」と、研究の意義を述べ宇宙医学の紹介を締めくくりました。
第二部の「宇宙医学のこれから」では、「宇宙医学の魅力と成果の活用」をテーマにしたパネルディスカッションにパネラーとして参加しました。パネルディスカッションは、会場にいる一般の参加者から寄せられた質問に順々に答えながら宇宙医学を紹介していく形で進行され、骨粗鬆症や放射線管理に関する質問などが会場から寄せられました。JAXAが民間の食品メーカーと協力して開発している宇宙日本食に関して、日本食は塩分が多い傾向にあるため、骨への影響を危惧(※)して低塩にする工夫が考えられていることなど、研究に携わる現場ならではの話が多く語られました。