国際宇宙ステーション(ISS)の第38次/第39次長期滞在クルーである若田宇宙飛行士は、野口宇宙飛行士とともに、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)で、ロシアの船外活動に関わる訓練を行いました。
ISSにおいて実施される船外活動は、米国主導とロシア主導の2種類あります。米国の船外活動においては、船外活動クルーは船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit: EMU)を着用し、「クエスト」(エアロック)から船外に出ますが、ロシアの船外活動では、オーラン宇宙服を着用し、「ピアース」(ロシアのドッキング室)が船外への出入り口となります。
水の浮力で宇宙の無重量環境を模擬する巨大なプール施設を使用する訓練に先立ち、若田、野口両宇宙飛行士は、数日間にわたり、船外活動訓練の準備を行いました。若田、野口両宇宙飛行士は、訓練全体の流れや安全に関わる説明を受け、基本的な船外活動手順や、オーラン宇宙服の機能、船外活動で使用する工具などについて、GCTCのインストラクタの指導の下、確認しました。本番の訓練に備えて、プールを使用したスキューバ技術の実習も行いました。
訓練本番では、水中訓練用のオーラン宇宙服を着用し、ISSのロシアモジュールのモックアップ(実物大の訓練施設)が沈められているプールに潜り、船外活動で想定される作業内容を実施しました。
若田、野口両宇宙飛行士は、ピアースのハッチを開けてISS船外に出る動作や、テザーで身体をISS船体につなぎながらハンドレールを伝って移動する動作、工具の運び方や使用方法など、船外活動で要求される基本的な動作について訓練を行いました。
その他に、緊急事態を想定した訓練も行い、船外活動クルーのパートナーが何らかの原因で動けなくなった場合に、ピアースまで連れ戻る方法や、ピアースでリーク(空気漏れ)が発生してエアロックとして使用できなくなった場合に、「ズヴェズダ」(ロシアのサービスモジュール)の移送区画をピアースの代替として利用するための手順についても実習しました。
若田宇宙飛行士は、船外活動訓練のほかに、ロシアモジュールとソユーズ宇宙船のシステムや運用についても訓練を行いました。ロシアモジュールについては、SUBAと呼ばれるズヴェズダのシステムの状態を監視・制御するシステムや、ドッキングシステム、火災検知消火システムについて復習しました。ソユーズ宇宙船については、機体構造や宇宙船に装備されている機器類全般に関する訓練、運動制御・航法システムについての講義とシミュレータ訓練を受けました。また、ISSで日常的に使用するロシアの衛生用品の使い方なども確認しました。ソユーズ宇宙船に関わる一部の訓練には、同時期にGCTCで訓練を行っていた金井宇宙飛行士も参加しました。
ロシア製の船外活動服を使用しての船外活動訓練は14年ぶりでしたが、ずいぶん機能が進化していることに驚きました。
ソユーズ宇宙船もそうですが、ロシアの宇宙開発技術はいつまでも変わらないようでいて実は最新のテクノロジーをスムーズに導入しています。
これからも常に最新の宇宙船技術に触れていきたいと思いました。