JAXA宇宙飛行士活動レポート 2011年8月
最終更新日:2011年9月22日
JAXA宇宙飛行士の2011年8月の活動状況についてご紹介します。
ISS長期滞在中の古川宇宙飛行士の活動については、JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在ページをご覧ください。
星出宇宙宇宙飛行士のロシアでのISS長期滞在に向けた訓練
国際宇宙ステーション(ISS)の第32次/第33次長期滞在クルーである星出宇宙飛行士は、ロシアのガガーリン宇宙飛行士訓練センター(Gagarin Cosmonaut Training Center: GCTC)にて、ISS長期滞在に向けた訓練を行いました。
星出宇宙飛行士は、ロシアセグメントでの減圧や火災発生を想定した対応訓練のほか、ロシアの船外活動を支援する作業についての訓練、ソユーズ宇宙船打上げ時と帰還時に身体にかかる加重を遠心加速器を使用して体験する耐G訓練などを行いました。また、星出宇宙飛行士専用に作られた打上げ・帰還時に着用するソコル与圧服を着用してのフィットチェックおよび真空チャンバ内でのリークテスト、ロシア宇宙食の試食などを行いました。
- 星出彰彦宇宙飛行士
- JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在
油井、大西、金井宇宙飛行士、宇宙子どもワークショップキャラバンとコズミックカレッジに参加
ワークショップに参加する(左から)大西、油井、金井宇宙飛行士(出典:JAXA)
コズミックカレッジにて、高校生からの質問に答える(左から)金井、大西、油井宇宙飛行士(出典:JAXA)
油井、大西、金井宇宙飛行士は、8月7日、宮城県仙台市の東北大学にて、仙台七夕祭りに合わせて開催された「宇宙子どもワークショップキャラバン in 仙台たなばた」に参加し、ワークショップに参加した小中学生や高校生との交流イベントを行いました。
仙台からつくばに移動した8月9日には、筑波宇宙センター(TKSC)で開催中の「コズミックカレッジ・サマーサイエンスキャンプ」に参加しました。
全国各地から選ばれた24名の高校生を対象に、8月8日から10日までTKSCで開催された同キャンプの中日にあたる9日、JAXA職員による講義の途中でサプライズ企画として3人が登場し、自己紹介に続いて参加者と質疑応答を行いました。この宇宙飛行士登場に先駆け、3人の紹介ビデオを視聴していた参加者からは驚きの声が溢れ、会場は大いに盛り上がり、その後のモチベーションも大変高まったキャンプとなりました。
8月中旬に3人は米国に戻り、NASAジョンソン宇宙センター(JSC)での訓練を再開しました。3人は語学訓練やT-38ジェット練習機での飛行訓練のほか、船外活動ツールを確認する訓練などを行いました。大西宇宙飛行士は、10月に参加する予定のNASA極限環境ミッション運用(NASA Extreme Environment Mission Operations: NEEMO)訓練に備えて、自動体外式除細動器(AED)の使用方法や心肺蘇生法(CPR)、非常用酸素ボンベの取り扱いについて事前訓練を行いました。NEEMO訓練は、米国フロリダ州沖合の海底約20mに設置されている米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration: NOAA)の「アクエリアス」と呼ばれる閉鎖施設内で生活を行い、リーダーシップやチームワーク、自己管理などの能力を向上させることを目的とした訓練です。これまでに、JAXA宇宙飛行士では、若田、古川両宇宙飛行士がこの訓練を受けています。今回のNEEMO15ミッションでは、将来の小惑星探査に向けた技術評価試験が主な目的になります。NEEMO15ミッションについてはこちら(英語)を、アクエリアスについてはこちら(英語)をご参照下さい。
野口宇宙飛行士がAPECユース・サイエンス・フェスティバルで講演
講演を行う野口宇宙飛行士(出典:JAXA)
野口宇宙飛行士は、8月21日、タイで開催された「第4回APEC(アジア太平洋経済協力)ユース・サイエンス・フェスティバル」のオープニングセレモニーに、ゲストスピーカーとして出席し、国際宇宙ステーション(ISS)での活動について講演を行いました。
オープニングセレモニーの様子(出典:JAXA)
第4回APECユース・サイエンス・フェスティバルでは、「自然から技術まで」をテーマに、APEC参加国のうち16の国・地域の生徒が集って、科学者との交流や科学技術関係の活動が行われ、そのオープニングセレモニーには、タイの科学技術大臣、著名な科学者、各国の生徒・教師などが出席しました。オープニングセレモニーで、野口宇宙飛行士は、映像を交えながら、「きぼう」日本実験棟での実験、ロボットアームの操作やISSでの生活などを紹介しました。また、宇宙飛行士になろうと決意したきっかけや、宇宙で危険な状況に直面した場合の対応などについて紹介し、将来、タイの宇宙飛行士が誕生することに期待を寄せました。講演の後には、各国・地域から参加した生徒たちとの交流の機会を持ち、記念写真に応じました。
また、タイのテレビ局、APEC事務局のインタビューを受け、宇宙飛行士のトレーニングや将来の宇宙開発の展望などについて答えました。さらに、APECの生徒代表からのインタビューにも応じ、「あきらめずに努力を続けていけば、必ず実現する時がくる」など、生徒たちにメッセージを送りました。
有人宇宙開発への貢献が称えられ、若田宇宙飛行士がメダルを受賞
ミハイル・ベールイ駐日ロシア大使(中央)からメダルを授与された秋山氏(左)と若田宇宙飛行士(右)(出典:JAXA)
若田宇宙飛行士は、日本人として初めて宇宙を飛行した秋山豊寛氏とともに、ロシアから有人宇宙開発への貢献が称えられ、東京都港区のロシア大使館にて、ミハイル・ベールイ駐日ロシア大使からメダルが授与されました。
このメダルは、今年4月に、ユーリ・ガガーリン宇宙飛行士による人類初の有人宇宙飛行から50周年を迎えたロシアが、有人宇宙開発に貢献した63名の外国人宇宙飛行士に対して、その国際的功績を称えるために贈ったものです。日本人としては、秋山氏と若田、野口両宇宙飛行士が受賞者に選ばれ、4月にモスクワのクレムリン宮殿にて行われた式典では、野口宇宙飛行士が、ロシアのメドベージェフ大統領から直接メダルを授与されています。
若田宇宙飛行士は、メダルの受賞について、「大変光栄に思う。メダルは私ひとりの力で戴いたものではなく、有人宇宙開発に携わる日本の関係者の方々の功績が称賛されたのであって、私たちを支えてくださった皆さんに感謝を申し上げたい」と喜びと感謝の気持ちを語りました。
古川宇宙飛行士の交信イベントにおいて、野口宇宙飛行士がCAPCOMを担当
CAPCOMを担当する野口宇宙飛行士(奥からふたり目)(出典:JAXA/NASA)
8月1日、古川宇宙飛行士が滞在する国際宇宙ステーション(ISS)と、筑波宇宙センター、宮城県大和町の東京エレクトロン宮城株式会社の3地点を繋いで行われた交信イベントにおいて、野口宇宙飛行士がNASAジョンソン宇宙センター(JSC)のミッション・コントロール・センター(Mission Control Center: MCC)にて、ISSと地上間のコミュニケーションの窓口となるCAPCOM(Capsule Communicator)を担当し、古川宇宙飛行士の交信イベントを支援しました。
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今回のレポートから、宇宙飛行士の声だけではなく、宇宙飛行士を支える現場の声もお届けしていきます。現場の声第1弾は、2011年7月にISS搭乗宇宙飛行士に認定された油井、大西、金井宇宙飛行士の訓練を約2年間にわたり支えてきた若松武史主査の一言です。
有人宇宙環境利用ミッション本部 有人宇宙技術部 宇宙飛行士グループ 若松武史主査(出典:JAXA)
油井さん、大西さん、金井さんの基礎訓練のサポートを担当させていただいた若松と申します。
3人が、語学の壁やさまざまな訓練で苦しみ、その度に努力をして乗り越えていく姿を間近で見ていただけに、無事宇宙飛行士に認定されたときには、自分のことのようにうれしく思いました。
3人から毎月提出されていた訓練レポートを改めて見返してみると、訓練開始当初に比べ、その内容や表現に徐々に変化が見られ、また最近は「3人の顔つきが変わってきた」と周りの方からも言われるので、3人はこの2年間で、着実に宇宙飛行士になる準備をしてきたんだなと改めて実感しています。
宇宙飛行士認定の記者会見をしたその日、私はヒューストンの事務所にいたのですが、3人の執務室にかかっている表札を「ASTRONAUT CANDIDATE(宇宙飛行士候補者)」から「ASTRONAUT(宇宙飛行士)」にかえたときは、何とも言えない感動を覚えました(とは言っても、この表札をかえたことには誰にも気づいてもらえなかったのですが(笑))。