宇宙飛行士候補者は、低圧環境における生理的問題の理解と体験、および対処方法の修得を目的として、筑波宇宙センターの宇宙飛行士養成棟にある低圧環境適応訓練設備で、低圧環境適応訓練を行いました。
低圧環境適応訓練設備は、減圧室、データ取得システム、圧力調整設備、空気調和設備、運転制御設備などから構成され、減圧室では最大6名が最低0.2気圧までの低圧環境を体験することができます。
また、この訓練は航空機による無重量体感訓練を行う前に必要な訓練です。
訓練内容は、地上と同じ1気圧から高度35,000ft(約10km)相当の気圧(約0.24気圧)まで減圧し1気圧にもどすというパターンを実施しました。候補者は、途中で酸素マスクを外して低酸素症や低圧下での夜間視力の変化を体験したり、緊急用酸素吸入訓練や急減圧対処訓練などを行いました。
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運転制御設備 |
低圧環境適応訓練を終了した宇宙飛行士候補者は、米国テキサス州の ヒューストンでKC-135Aジェット機を用いて無重量体感訓練を行いました。
この訓練は、無重量環境を体感し、空間認識および身体動作の変化、物理現象について理解するとともに、今年2月に行った船外活動訓練での水の浮力を利用した無重量環境との違いを認識することを目的として行いました。
宇宙飛行士候補者は、40回にわたるパラボリックフライト(放物線を描く飛行)で無重量環境での移動や体のコントロール、互いに押し合うなどして作用・反作用の体感、その他様々な運動を行い、無重量環境を体感しました。また、ボールや駒などの物の無重量環境での挙動を観察しました。
航空機を使用した無重量体感訓練では、放物線運動を行うように航空機を操縦してエンジンパワーを落として重力にまかせた飛行を行い、機内に一定時間無重量環境を作り出します。
できるだけ長い無重量状態をつくるために飛行機がパラボリックフライトに入る直前で最大速度に加速して急激に機首を上げ、エンジンパワーを落とします。そして放物線運動を行い、安全に回復できるように機首下げ角が35~40度を超える前にエンジンパワーを上げ、機首を上げて通常飛行に戻します。これを40回繰り返します。
KC-135Aジェット機では、1回のパラボリックフライトでおよそ25秒間の無重量状態が得られます。
この訓練では、重力の変化に酔って嘔吐してしまうことがあるので、この機体はVomit
Comet(嘔吐彗星)とも呼ばれています。
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KC-135Aジェット機 |
無重量体感訓練中の古川候補者 |