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4章 宇宙でいきる (2)

Q47 地上では、乗り物酔いや船酔いがあるが、船酔いをしない人は宇宙船でも酔わないのだろうか?
船では元気な人が... 宇宙ではどうなるか?

A47 船酔いとは症状の違う、「宇宙酔い」になることがある。船酔いをしない人でも、宇宙酔いになるケースは多いようだ。

 船酔いと宇宙酔いの原因やその症状には、違いがある。

 船酔いは、船の動きに身をまかせること、すなわち、船の揺れによって加わる前後左右上下の加速度によって起きる。宇宙酔いは、重力がなくなることによって、脳に入ってくる自分の体の位置や動きの情報が今までとは異なり、脳の中が混乱して起きるという説が有力視されている。

 船酔いはだんだん気分が悪くなり、嘔吐(おうと)したくなることが多いのだが、宇宙酔いは前兆もなく突然、嘔吐するという特徴がある。

 船酔いも宇宙酔いも、そのメカニズムには未だに不明な点が多いのだが、あらかじめ船酔いに耐える訓練をした宇宙飛行士でも、宇宙酔いになることが多いため、この二つは全く別のものなのかもしれない。宇宙酔いの症状は、ふつう宇宙に出て3日目あたりにはおさまってくるようだ。


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Q48 無重力で受精したカエルの卵は、正常に発生できるのだろうか(おたまじゃくしになるだろうか)?
A48 正常に発生が進み、おたまじゃくしになる。

 下の図は、カエルの発生のようすを示したものである。カエルやイモリなど両生類の卵は、地上で受精すると、重力の影響で皆同じ向きに並ぶことがわかっている。


カエルの発生過程


 生物の発生と重力とのかかわりについては、無重力での発生の研究によって解明されつつある。

 両生類の卵は、卵黄が植物極側にかたよって存在しており、受精してしばらくすると、卵黄が多い側が重いため、重力のもとでは皆、同じ向きに並ぶ。これを無重力におくと、受精後もそれぞれの卵は勝手な方向を向いてしまうが、卵黄が均等に混ざってしまうことはない。卵黄や他の細胞成分の分布(極性)は重力による影響をほとんど受けていないのだ。

 発生の過程では、原腸胚(げんちょうはい)の時期にやや植物極よりに原口(げんこう)が形成されるなどの違いが認められたが、神経胚の形成やその後の過程は、地上の場合と同じで、無重力でも正常に発生が進むのだ。

 このことは1992年にスペースシャトルで行われた宇宙ガエルの実験でNASAのスーザという研究者が初めて証明した。


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Q49 下の図は、ニワトリの発生のようすを示したものである。

 ニワトリの受精卵は、無重力でも正常に発生できるのだろうか(ヒヨコになるだろうか)?

地上 宇宙(無重力)
発生中



ふ化





A49 ニワトリの場合、無重力では初期の胚の生存率が低く、正常に発生しない。

 ニワトリの卵は卵黄が非常に多く、卵割(らんかつ)は上部のみで行われ、胚盤(はいばん)を形成する。また、胚盤や卵黄がある黄身の部分は、卵白や卵殻(らんかく)でおおわれている。卵殻は卵を保護するだけでなく、酸素やそこに含まれるカルシウムなどの成分を胚に供給しており、これが胚膜(はいまく)の血管系などの形成に不可欠であることが知られている。

 地上の重力のもとでは、黄身の部分が卵白に浮かんだ状態になり、胚盤が殻に接するように存在するが、無重力では、胚盤のある黄身の部分が卵の中心に移動してしまい、殻から分離するカルシウムなどの成分が供給不足になってしまう。発生の初期には、このことが致命的な影響を与えるようだ。

 地上で親鳥がするように、宇宙でも卵を温めながら定期的に動かさないと、ヒナがふ化する率が低下してしまう。このことは、毛利宇宙飛行士が行った実験を通じて、昭和大学の須田教授が明らかにした。


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Q50 動物が子孫を残すときにとる行動パターンは、種によって決まっている。メダカの場合、産卵のとき雄が雌の近くで回転をし、背びれと尻びれで雌を抱く。

 メダカは、宇宙でこのような一連の産卵行動ができ、稚魚は誕生するのだろうか?

A50 ある種のメダカでは、産卵行動は可能である。また、受精卵も正常に発生を続け、稚魚が誕生する。

 無重力では、ふつう魚はそれぞれ勝手な方向を向いてしまう。また、平衡感覚が混乱するため、ぐるぐると回転して泳いでしまう。このような状況では、産卵行動など不可能だと思われていた。

 そこで、1994年のスペースシャトル「コロンビア号」に向井宇宙飛行士とともに宇宙へ行ったメダカには、飛行機の放物線飛行テスト(第2章のA8を参照)で無重力にしても回転を行わなかった、無重力に強い種のメダカが採用された。

 一般に、魚には光に背を向ける性質や水流の方向に頭を向ける性質があるため、向きをそろえることは可能だ。実験には、これらの性質もかねそなえたメダカが選ばれた。

 メダカは宇宙用水槽の中で、地上と同じ産卵行動を行い、受精卵ができた。さらに、受精卵は正常に発生を続け、稚魚が誕生したのだ。

 この実験から、将来宇宙で魚類を養殖する計画などに、期待をもたらす結果が得られたと言えるであろう。

光に背を向ける魚の性質 宇宙での正常な産卵
提供;東京大学 井尻憲一さん


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Q51 宇宙へ連れて行ったメダカは、地上に戻ったとき正常に泳げるのだろうか?

A51 最初は、水槽の底に沈んでしまうが、時間が経つと、ふつうに泳げるようになる。

 メダカは、地上にいる場合は、浮き袋に空気をためて体を浮かせている。この水中での状態は、体重と浮力がほぼつり合った、無重力に近い状態であるが、完全な無重力ではない。耳石は重力の方向に働いており、それを利用して浮き袋やヒレの動きなどを調節して姿勢を維持しているのだ。

 地上生まれのメダカを無重力の宇宙に連れて行くと、多くは前転や後転といった回転をしてしまう。これは重力の情報がなくなり、姿勢を維持できなくなったためである。Q50の無重力に強い種のメダカは、視覚が優れているという理由のためか、姿勢を維持できた。回転するメダカも、時間が経つと次第に慣れ、ふつうに泳げるようになった。

沈んでしまったメダカ
提供;東京大学 井尻憲一さん
 しかし、宇宙生まれのメダカは、最初から宇宙でふつうに泳ぐことができた。

 スペースシャトルで宇宙から地上に戻ったとき、地上生まれのメダカは、水槽の底に沈んでしまった。無重力では、浮き袋の調節をする必要がないため、地上と違うバランスを身につけてしまったと考えられる。この場合も、時間が経つとしだいに慣れるが、正常に泳げるようになるまでに、4日以上かかった。

 おもしろいことに、宇宙生まれのメダカの稚魚は、地上でもすぐにふつうに泳ぎ出した。


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Q52 地上では、植物の茎は上に、根は下に伸びるが、無重力の宇宙では、どの方向に伸びるのだろうか?
A52 無重力では、茎や根は勝手な方向に伸びる。植物は重力センサーによって、重力を感じ取っており、これが正常に機能しなくなるからである。

 種子から発芽した芽ばえは、土の中で、茎を地上に(上に)、根を地中に(下に)伸ばしていく。このような性質は「重力屈性(じゅうりょくくっせい)」と呼ばれている。

 無重力の宇宙では、植物の重力センサーが正常に機能しなくなるため、茎や根は勝手な方向に伸びてしまうのである。

 重力を感じとるセンサーは、根の根冠(こんかん)の部分や、茎の維管束鞘(いかんそくしょう)の部分などにある平衡細胞である。

 この細胞にはデンプンを含む平衡石が入っており、これが沈むことで重力の方向を感じ取っている。この平衡石の沈降が引き金となって、植物ホルモンやカルシウムイオンなど、各種の因子が働き、重力屈性がおこると考えられているが、そのメカニズムには、未だに不明な点が多い。

無重力で根の伸びるようす。根は好き勝手な方向に伸びている。
出典; Naturwissenschaften 73, 435-437 (1986)
© Springer-Verlag 1986
D. Volkmann and H. M. Behrens
P. Junk

 植物の重力に対する反応を解明するために、宇宙実験は重要な役割を果たしているのである。また、宇宙での植物栽培を成功させ、収穫できるようになれば、長期間の宇宙旅行や宇宙滞在の実現へのステップとなるだろう。


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Q53 無重力で、勝手な方向に伸びようとする茎や根を、決まった方向に伸ばすには、どうすればよいのだろうか?
A53 一定方向から、光を当てればよいだろう。

 植物には重力屈性の他に、茎は光の方向に、根は光と反対の方向に伸びる性質もある。このような性質は光屈性(屈光性)と呼ばれており、これを利用すれば、植物を決まった方向に伸ばすことができる。

重力屈性のしくみ
 植物の成長・屈曲には、オーキシンという植物ホルモンが関係している。適度な濃度のオーキシンを与えると、植物の成長は促進されるが、高濃度のオーキシンを与えると、成長は抑制されるのである。

 成長に適度なオーキシンの濃度は、植物の部位によっても異なり、茎の成長が促進される濃度のオーキシンを根に与えると、根の成長は抑制される。根にとっては高すぎる濃度だからである。

 オーキシンには光と反対の方向に移動する性質がある。茎の場合、オーキシンが光の反対側に移動すると、そこが適度なオーキシン濃度となって成長が促進され、茎は光の方向に屈曲すると考えられている。

 反対に、根の場合、オーキシンが移動すると高すぎる濃度になってしまい、光の反対側の成長が阻害される。その結果、根は光と反対の方向に屈曲すると考えられている。

 重力屈性も同様に説明することができる。オーキシンは重力の方向(下に)に移動する。したがって、根・茎を水平にした場合、茎は上に屈曲し、根は下に屈曲するのである。


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最終更新日:2000年 3月 10日

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