TR-IA実験計画は平成元年度から開始され、今回の7号機をもって完了した。この計画では合計39テーマの微小重力実験が行われ、百名以上の研究者の方々に参加いただき、表2にも示されるような多くの貴重な科学技術成果の取得が成された。この点で、TR-IA小型ロケット宇宙実験計画は日本の宇宙環境利用の促進に最も大きな貢献を果たしたと考えられる。
実験技術や実験装置の要素技術等の技術開発については、共通的・基盤的なものからより高度なものへと推移し、初期の宇宙ステーション利用に向けた幾つかの科学的課題及び実験技術等の要素技術の確認を通じて、その目的をほぼ達成できたと考えている。
TR-IA計画では、極めて貴重な多くのことを学ぶことが出来た。最も重要な点は、「科学と技術の融合」こそが、宇宙環境利用の未来を創り得る唯一の方法であると結論できたことである。過去のミッションを振り返ると常にこの間の葛藤の歴史であったと言えるであろう。科学はアナログ的であり、達成すべき目標のレベルに自由度がある。一方、技術はデジタル的であるとも考えられ、要求仕様の値を満たすか否かが、成功の判断基準である。
この異種の文化とも言える両者を如何に融合するかが、よりよい成果の創出に必須であるとの信念の下、TR-IAプロジェクトでは、常に科学と技術が同一の視点から両者を議論して各作業を進めてきた。これは膨大な努力の傾注でありTR-IAでの実験の成功は、この努力の賜であると考えている。
この10年に亘る宇宙実験プロジェクトを完結できたのは、メーカ技術者、研究者及び事業団職員の絶え間ない努力の結晶であり、ここに深甚なる謝意を表すとともに、必ずや宇宙ステーション利用における有意義な成果の創出につながるものと確信している。
小型ロケット計画については、実験再開に関する研究者からの期待も大きい。今後は、“実験システム開発”のフェーズから高度な科学的成果の創出を目的とした“利用”のフェーズに移行し、国内外を問わず実験目的を達成できる安価な手段の確保を目指した検討を進めている。
なお、TR-IAの実験成果については、国際宇宙環境利用データベースの「宇宙実験結果報告」に成果報告書の全文が掲載されている。今後の研究計画や宇宙実験提案の立案に役立てて頂ければ幸いである。
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