宇宙連詩

最終候補に残った作品

第11詩の公募で、最終候補に残った他の方々の作品です。ご応募ありがとうございました。




遺跡を掘り返す 十二単の女人
白い指先には キーボードの破片があって
先史の生活を あれこれ紐解き
どこでため息をつくのか
とてつもない時の 繰り返し

美田ひろみ

さばき手からのメッセージ:作者は壮大なユーモアのセンスをお持ちですね、きっと


fading graying photos scattered now
on tables in darkened, vacant university halls
show pinpoint white stars
scattered during ancient weeks and years
across a darkened universe

Fumiko Haneda(NASA aerospace engineer, age 27, USA)

いま 暗くなりがらんとした大学のホールの
テーブルのうえに散らばった 灰色の色あせた写真に
白い星たちがピンポイントで浮かび上がる
かつて何週間も何年も 暗い宇宙をよぎって
散らばっていたあの星たちが

フミコ・ハネダ(NASA宇宙航空エンジニア、27歳、アメリカ)

さばき手からのメッセージ:宇宙から写真へと、星ははるかな空間を旅して来たのですね、別々のものを指して二度使われている「散らばった」という形容詞が効果的です


大地をこねて 縄文のひとが炎に投げ込んだ
わたしの指につままれたカケラは今
ちらちらと反射して
角砂糖1個分の暗号を残している
地球が太陽になったり 火星が地球になったりして

木戸多美子

さばき手からのメッセージ:発想は面白いだけに、語法に注意を払えばなおよかったと思います


The flower's fragrance
angels fly to deep Heaven-
and the soul as well?
One day will lie on snow flake
melting on the face of child...

Ecaterina Zazu Neagoe
(Free-lancer, Member of Romanian Society of Haiku from Bucharest and Constantza, Member of World Haiku Association, Japan, Romania)

おお花の香り
天使たちが 天国の奥地へと羽ばたく──
そして魂も?
いつの日か粉雪のうえに舞い降り
子どもの顔のうえで溶けて……

エカテリーナ・ザズ・ネアゴエ
(フリーライター、ルーマニア俳句会ブカレスト・コンスタンツァ支部会員、
世界俳句協会日本メンバー、ルーマニア)

さばき手からのメッセージ:行分け俳句のノリでしょうか、行から行への渡りがじつにすてきです


稲刈りの季節には
ばあちゃんのばあちゃんのそのまたばあちゃんたちが口ずさんだ
収穫の唄が響く この大地は
涙も唾も雪さえも糧にして
孕む女のように 形を変える

滝沢ゆき子(主婦、43歳)

さばき手からのメッセージ:これもいい作品です、とくに「孕む女のように 形を変える」という表現が秀逸


45粒の小さなカプセル
透きとおって 手の平らで あめ色になった
まりのように 弾む
とろりと溶けて 私の血管を きれいにしてる
♪春の小川はサラサラ行くよ♪ なんてね

楽天ばあば(66歳)

さばき手からのメッセージ:カプセル錠剤が「てのひらで」「まりのように弾む」とは、それだけで病気が逃げていきそうですね


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