生物を使っての宇宙実験は、人間が宇宙飛行を始めるよりも前に開始されました。そのころの最大の関心は、"生物が宇宙飛行できるか?"、"宇宙環境が生物にどのような影響を与えるか?"であり、米国と当時のソ連は1960年代の初期から、各種の生物を宇宙船に載せました。その結果に基づいて米国はアポロ計画で人間の月往復を実施しました。その後、アポロ計画の延長として実施された「スカイラブ」計画では、人間の宇宙での長期滞在とその影響に焦点を当てた実験が行われました。この時点までの実験のねらいは「宇宙で生物はどんな影響をうけるか?」であり、「やってみる」実験が主体でした。
スペースシャトル・スペースラブの飛行が開始される頃になると、人間をはじめとする生物に対する宇宙環境の影響に関する知識がある程度蓄積され、仮説に基づいた実験の計画が可能になりました。スペースシャトルが飛行を開始したのが1981年でしたが、遺伝子の解析を中心とする「分子生物学」の手法が発展し始めたのもほぼ同じ時期でした。そして、分子生物学が宇宙ライフサイエンス実験に積極的に取り入れられるようになったのは90年代の後半になってからです。
宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)が宇宙実験を計画し始めたのは1979年であり、宇宙でのライフサイエンス実験が質的に変化し始める初期でしたが、実際の軌道実験が実施されたのは1992年が最初でした。それ以後に我が国が実施した実験の機会と実施されたテーマの領域およびこれまでの宇宙実験の結果の発表論文数などをミッションごとにまとめたものを以下に示します。
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我が国が実施した実験の機会と実施されたテーマ |
|
ミッション
分野
|
FMPT |
IML |
ミール |
スペースシャトル・ミール |
ニューロラブ |
STS-95 |
TR |
放射線影響 |
○
|
○
|
○
|
○
|
-
|
○
|
-
|
細胞・分子 |
○
|
○
|
-
|
○
|
○
|
-
|
○
|
発生 |
○
|
○
|
-
|
-
|
○
|
-
|
-
|
植物 |
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
○
|
-
|
生理 |
○
|
-
|
-
|
○
|
○
|
-
|
-
|
行動 |
○
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
健康管理 |
○
|
-
|
-
|
-
|
○
|
-
|
-
|
バイオテクノロジー |
○
|
○
|
-
|
○
|
-
|
-
|
-
|
|
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これまでの宇宙実験の結果の発表論文、特許数 |
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ミッション |
論文数
|
特許数
|
論文
|
口頭
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出願中
|
取得
|
FMPT |
62
|
467
|
14
|
2
|
IML-1 |
3
|
12
|
0
|
0
|
IML-2 |
26
|
113
|
3
|
0
|
TR-IA |
1
|
2
|
0
|
0
|
スペースシャトル・ミール#4 |
3
|
3
|
0
|
0
|
スペースシャトル・ミール#6 |
11
|
56
|
1
|
0
|
スペースシャトル・ミール#8 |
2
|
9
|
0
|
0
|
スペースシャトル・ミール#9 |
0
|
1
|
0
|
0
|
ミール |
5
|
26
|
0
|
0
|
STS-95 |
10
|
29
|
0
|
0
|
合計 |
123
|
718
|
18
|
2
|
|
|