近年、熱帯林を始めとする森林の減少や、フロン放出によるオゾンの減少など、人間活動に起因する地球環境の変化が問題となっています。また、現代社会は地震や火山噴火、エルニーニョなどの自然現象によって、常にその脅威にさらされています。地球環境を保全し、自然と調和した社会を築くためには、地球環境破壊、地球環境変化の実態を把握し、そこで起こっている現象のメカニズムを解明する必要があります。さらには、得られた結果を用いて全球モデルを作成し、そのモデルを用いた気候変動シミュレーションを実施することにより変動を予測し、役立てていくことが必要です。このためには、広域かつ高頻度での全球レベルでの地球観測が重要であり、宇宙からの地球観測は最も有効な手段のひとつです。
宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)では、以下の地球観測衛星を打ち上げてきました。
- 静止気象衛星(GMSシリーズ:1977年から)
- 海洋観測衛星1、1b号(MOS-1、1b:1987、1990年)
- 地球資源衛星(JERS-1:1992年)
- 地球観測プラットホーム技術衛星(ADEOS:1996年)
- 熱帯降雨観測衛星(TRMM:1997年)
ここで採用されている観測システムや観測センサには数々の高度な技術要素があります。これらの要素技術は、実用衛星に搭載する前に適切な実証機会を確保し、機能・性能を確認することが大切です。
また、実験プラットフォームを利用することにより、通常の人工衛星では実現が難しい低軌道高度からの長期観測、高い軌道傾斜から広い緯度範囲をカバーする観測、有人支援により機器の交換・保守が軌道上で可能などの利点があります。それゆえ、これらの特徴を生かした実験プラットフォームの利用検討が進められています。
上に示した熱帯降雨観測衛星には5つの観測機器を搭載しており、地球全体に降る雨の約2/3以上を占める熱帯および亜熱帯地域の降雨観測を行うことを目的としています。TRMMの観測データは気候変動研究にとって非常に貴重なデータとなるものであり、気候システムの理解、エルニーニョなどの異常気象の解明、更に災害防止のための洪水予報などに貢献するものです。
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