スペースシャトルでのラット実験サンプルシェア研究テーマ選定結果
|
|
宇宙フライトにより萎縮した骨における新規骨芽細胞抑制蛋白質オステオアクチビンの解析
提案者:安井夏生
所属機関:徳島大学 医学部 整形外科学講座
研究目的
膜結合型蛋白質オステオアクチビンの無重力による骨萎縮での役割を解明します。
研究方法・内容
生物は地球上で暮らすかぎり無意識に重力の影響を受けています。特別に運動などをしていない状態でも骨や筋肉には常に力学的負荷がかかっており、このことが骨や筋肉の強度を保つ上で役立っています。さらに骨や筋肉には力学的負荷に応じて、それに対抗できるだけの強度が自然に維持される仕組みが備わっています。
宇宙遊泳から帰還した飛行士の骨や筋肉には強い萎縮がみられることは良く知られています。スペースシャトルの狭い空間では運動不足もありますが、同じ狭い空間でも地球上の重力環境では筋萎縮や骨萎縮はおきないことから無重力という環境が骨や筋肉の萎縮をきたすものと考えられています。
骨や筋肉の細胞は重力という力学的負荷を感じる仕組みをもっていることになります。我々は細胞がどのようにして力学的負荷を感じとり、その信号を核まで伝え遺伝子発現に結びつけるかという研究を続けています。すでに筋肉については無重力環境で4つの新規遺伝子の発現が増強していることをつきとめました。今回の研究では、骨や軟骨の遺伝子発現が無重力環境でどう変化するかを調べます。
現在までにラットの尾部懸垂モデルを用いた免荷実験でオステオアクチビンとよばれる膜結合型糖タンパクの遺伝子発現が増幅されることを見い出しました。宇宙遊泳を行ったラットの骨でもオステオアクチビンの遺伝子発現が増強している可能性が高く、もしそうであれば無重力環境により過剰産生されたオステオアクチビンが骨芽細胞の骨マトリックスへの接着を阻害することにより骨萎縮が進行するのではないかと考えています(図参照)。
期待される成果
オステオアクチビンは骨における機械的ストレスのセンサーとして局所的な骨形成を制御している可能性が高く、この分子の構造と機能を解明することにより骨粗鬆症や変形性関節症など多くの骨・関節疾患の治療法の開発につながる成果が得られるものと期待します。また今年は骨と関節の年
(Bone and Joint Decade) の3年目にあたり、この分野の研究のさらなる進歩が期待されます。
最終更新日:2002年 2月 14日
|