2015年4月18日(土)、平成27年度科学技術週間にあわせて、筑波宇宙センター(TKSC)の特別公開が行われました。有人宇宙技術関連の展示を中心にご紹介します。
有人宇宙技術関連のイベントとしては、今年ISS長期滞在に挑む油井亀美也宇宙飛行士のミッション紹介パネル展示、映像放映、大西卓哉宇宙飛行士による講演、松浦真弓フライトディレクターによる宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)に関する講演、実験ショー、「きぼう」日本実験棟で行われている様々な実験や有人宇宙技術の紹介コーナーなどがあり、大勢の観客で盛り上がりました。
他にも普段入ることのできない、宇宙飛行士訓練施設や、「きぼう」運用管制室、「こうのとり」運用管制室の公開が行われました。
今回の特別公開には、10,000名を超える多くの皆様にご来場いただきました。
大西卓哉宇宙飛行士と話そう
最初に今年ISS長期滞在ミッションを開始する油井亀美也宇宙飛行士からのメッセージビデオが流れ、大西宇宙飛行士へエールを送りました。
大西宇宙飛行士は、学生時代に鳥人間コンテストに出たことや、旅客機の副操縦士を行っていたことなど自己紹介の後、宇宙飛行士としての様々な訓練や、ソユーズ宇宙船でISSへ行って帰るまでの流れについて紹介しました。
ソユーズ宇宙船の狭い船内の様子や、ソユーズ宇宙船の打上げからISSに到着するまでの流れ、帰還時のパラシュートを開いたときの衝撃の大きさや、着地の衝撃を和らげるためソユーズ宇宙船に備え付けられている工夫などを説明しました。
講演会場とサテライト会場(視聴覚室)にたくさんの人が集まりました。
質問コーナの一部を要約してご紹介します。
Q:宇宙へ行ったら一番何をしたいですか
A:地球を見てみたいです。地球が良く見えるキューポラ(観測窓)があり、そこに入ると出てこれなくなるという意味で星出宇宙飛行士はブラックホールと呼んでいるほどで、ISSから見る地球は美しいと聞きます。
Q:今、どんな訓練をしていますか
A:1年半くらい前にミッションにアサインされて以来、米国とロシアを行ったり来たりしながら、ISS長期滞在に向けた訓練を行っています。
訓練内容は勉強がほとんどであり、ロシアでは特にソユーズ宇宙船の構造や運用方法、故障した際の修理方法を学んでいます。
Q:ISSではどのような実験をされるのでしょうか
A:生命科学実験や、物質・物理科学実験など地上では重力の影響により隠されてしまう現象を観測するような実験を行います。
Q:夜ちゃんと眠れるんですか
A:先輩宇宙飛行士に聞くと、睡眠時間は短くても大丈夫という意見が多いです。地上では立っているだけで筋肉に力を入れていますが宇宙では浮いているだけなので肉体的な疲労が少ないのだと思います。よって、宇宙では睡眠時間が短くなる人がほとんどです。
また、ISSは90分で地球を一周しているので、昼と夜が頻繁に入れ替わります。よってISSでは日が出てから沈むまでが1日ではなく、協定世界時(UTC)を基準として生活しています。
Q:ISSの次に行きたい星はどこですか
A:火星に行ってみたいです。まだ人間は火星に行ったことが無いからです。
個人的な考えですが、人間というものは、もっと遠くや高い所を目指して自分たちの生活や社会を良くしていこうとする生き物だと思っています。
Q:なぜ宇宙飛行士を目指そうと思ったのですか
A:映画が好きでスターウォーズから宇宙に興味を持ち、様々な本を読むようになりました。大学生のときに見たアポロ13号で、ロケットの打上げを涙を流しながら見送るシーンを見て、宇宙飛行士は多くの人の希望を背負って宇宙へ行くんだということに凄くあこがれました。それが宇宙飛行士を目指した切っ掛けになっています。
Q:宇宙食は美味しいですか
A:自分が宇宙で食べる予定の宇宙食はだいたい選んであります。たくさんの宇宙食から試食して選ぶことができるので、自分が好みの味を選びました。だから、宇宙食は美味しいです。
Q:宇宙飛行士で一番重要なことは何ですか
A:私は、慌てないことが最も重要だと思います。宇宙では予期せぬことが起きます。そのときに慌てずに事態に対処できることが宇宙飛行士にとって重要なことだと思います。訓練も緊急対応訓練がほとんどです。
Q:宇宙に行くことは怖くないですか
A:元々楽観的な性格ですが、実際にその時になってみないと想像がつかないところはあります。打上げ直前のカウントダウンが始まった時に初めてそういう感覚がわいてくるのではないかと思います。
宇宙飛行士としての日々の訓練をこなしていくことが怖いという気持ちを乗り越える力になると思います。
職員講演「こうのとり」運用管制官の仕事
松浦真弓フライトディレクターが宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の運用管制官の仕事について講演を行いました。ISSに到達するまでの軌道変更方法、世界中の運用管制センターが協力していること、地上の管制要員とISSの宇宙飛行士との連携作業などについて話され、大勢のスタッフのチームワークが重要なことを強調していました。